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スーパーの店員の水野さん  作者: 開墾路花壇
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15 彩穂、ストーカー!水野さんを尾行 


彩穂、ストーカー!水野さんを尾行 


 八月二十六日 日曜日  


 この日、わたしは、スーパー裏の駐車場で、彼をはっていた。わたしの、ストーカーノートによれば、彼は、「土曜日と日曜日と祝日は、昼十二時から、夜七時まで働いている。」狙うならそこだ!と、わたしは、思った。そして、この日。帰る時間帯を、待ち伏せしていた。違う、違うもんっ!彼の姿を目撃したら、帰るんだもん。それだけでいいんだもん。そうしたら、満足なんだもん。そして、待つこと十五分余り。勤務終了予定時刻より十分経って。・・・・・・彼が現れた。しかも、同僚と二人で出てきた。それから彼らは、何やら談笑して、別れた。それも別の方向へ。えっ?水野さん、駅じゃないんだ・・・・・・彼が、駅とは、逆方向に歩いていくのを見ている内に……魔が差した。彼の家を突き止めてみたい。本当に、ただ、その一心だったー。


「あっ、わたしと、同じ方向なんだ」多分、彼が、途中で曲がったり、信号を渡って、向こう側の道に行っていたら、わたしはそのまま、諦めたと思う。でも、彼は、そんなことはなく、わたしの家のある方向へと歩いていく(わたしの帰る方向だからいいよね)。わたしは、ついつい興味をそそられて、そのまま、尾行した。水野さんは、わたしの家のある方向へと、ぐいぐい歩いて行く。ガチで、わたしの家のある方向だ。わたしは段々、不安になってきた。まさか、わたしが、ストーカーされていたのでは。もしや、逆ストーカー?

「ははは」

 おかしくてつい笑ってしまった。でもそれは、笑いになっていない、自分でもわかる空笑いだった。

 しばらく、直進して、彼は、当たり前のように右折する。彼は、どんどん歩いていく。まるで、いつも帰っている帰り道のように。そうよ。勘違いなんだから、彩穂、しっかり。もうすぐわたしの家だった。もう、五十メートルをきっていた。「そんな・・・・・・まさか!」不安が、確信に変わっていく。そのとき、風が、ビュー、と、吹いて、わたしの髪を勢いよく揺らした。髪全体が、上下左右に乱れて、再び戻った。

 元の、髪型には、戻らなかった。


 気づかれないように、彼と五十メートルの、距離をあけて。そっと、静かに。つけていく。ついに、わたしの、家だ。まさか、来るのだろうか?わたしの、家に。そして、押すのだろうか?わたしの家の、インターホンを。ついに、水野さんが、わたしの家の、前に来た。

「ドキドキ」心臓の高鳴る音が、聞こえた気がした。


「くるなら、いっそきて。それならそれで、わたし、うれしいから」

 わたしは、叫びにも近い心境で、自分の中で、ダイナミックに吐露とろした。わたしは、彼の歩む先を、見守る。そして・・・・・・彼は・・・・・・わたしの家の前を・・・・・・通りすぎた。「フー」なんだ。やっぱりわたしの、勘違いか!びっくりしたな、もうっ。でも、言葉とは、裏腹に、むなしさを感じるのはなぜだろう。そうよね?わたしが 男の人から、ストーカーなんてされるはずないよね。しかも・・・・・・それが、イケメンの、水野さんだなんて。わたしは首を振りながら、再び、水野さんの足跡を追う。そのとき、再び、風が、ビュー、と、吹いた。その風が・・・・・・なんだかとても冷たく感じた。


 水野さんは、しばらく歩いて、十字路を、左にそれる。あっ、見失ってしまう。わたしは、あわてて、走って、十字路まで追いついて、すぐに曲がる。すると、

「トウヤ!」

 家の玄関の前で、若い女性が立っていて、水野さんに手を振りながら、呼び止める。にこにこ笑いながら。水野さんは、照れ臭そうに、恥ずかしそうに、照れながら、下を向いて歩いていく。若い女性は、「よしよし」みたいに、水野さんの肩を叩いて、家の中へと招き入れる。一緒に 家に入る。玄関のドアが、きいー、と、鳴って、パタン、と、閉まる。何?この雰囲気?何?この感じ?若い女性。水野さんを、名前呼び。しかも呼び捨て。わたしは、急いで走って、門の、表札を見る。そこには、「佐々木」という謎の名。えっ。水野じゃないんだ。一体・・・・・・。

 わたしは、空をあおいだ。・・・・・・そんな、同棲生活・・・・・・女の人と。あおいだまま、空に向かって、気持ちを吐露する。

「終わった。わたしの、初恋。まさかこんな形で」

 雨が降ってきた。傘は持っていなかった。早く帰ればいいのにわたしはしばらくどうすることもできず、ぼうぜんとただ、たたずんでいた。


 わたしは、風邪をひいてしばらく家で寝込んで、意気消沈して学校に通った。それは、日数にして二週間くらいだった。


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