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スーパーの店員の水野さん  作者: 開墾路花壇
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14 いとしい○○は、恋の味


いとしい○○は、恋の味


 八月九日 木曜日

 

 この日、わたしはいつものとおり、パイの実を買うために売り場に行った。

 パイの実を持ってレジに並ぶ。順番は、なかなかまわってこない。イライラがつのる。と、いうのも目当ての彼と、今日会うことができなかったから。売り場にも、いないし、レジにもいない。わたしは、あきらめて、くやしくて、パイの実を買わずに、帰ろうかとさえ思った。でも、そこは乙女心・・・・・パイの実が・・・・・・食べたい。どうしても・・・・・・食べたい・・・・・・だもんっ!だから、しょうがない。急いで商品を取って、レジに並んでいたら、すごく混んできた。両隣のレジは、無人だ。早く誰か来ればいいのに・・・・・・。そう思っていたら、

「お次に、お並びのお客さま、どうぞ」と言われた。その方向を見た。「えっ!」彼だった。そうか、休憩中だったのか。

「あのー、大丈夫ですか?」ドキっとした。胸がしめつけられるくらいキュンとなった。

「はい。大丈夫です」

 そう言われて、わたしがとっさにだした言葉だった。すると彼が、なぜかとまどいながらこう言った。

「じゃなくて、あのーう」

と、イケメンの彼の視線が、段々と、わたしの出した商品のほうを向いていく。「・・・・・・えっ!」わたしのパイの実が・・・・・・。それは・・・・・・いとしいパイの実でなく、「たけのこの里」だった。

「いつもと、その・・・・・・商品、ちがうから。気になって」

「いえ、その・・・・・・いいんです、これで」

「そうですか」

 恥ずかしくてわたしは、急いで会計を済まし、そそくさとその場から、立ち去った。

 よく確かめもしないで、急いで取ったから、こういうことになる。家に帰って、予定外だったたけのこの里を食べる。美味しくて。それは何だか・・・・・・ほんのり、「水野さん」の味がした。

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