12 はじめての友達
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はじめての友達
七月二十日 金曜日
翌日の二子桜美川学園。放課後のろうか―。
「藤堂さん!」
「こんにちは」突然声をかけられ驚きながらも、わたしは言った。兵藤さんだった。
「あの、藤堂さん。ちょっといいかしら?」
兵藤さんは、わたしをうながして、外へ出た。ついていった先は、部室だけの校舎と本校舎を結ぶ中庭と呼ばれる通路をそれた、ひとけのない、学園と住宅街の境界線を隔てるためにあるフェンスだった。
兵藤さんは言う。
「あなたの言う通りだった」
「えっ」
「今さっきね、確認したの、本当の持ち主。竜のボールペン」
「あっ、そうなんだ」わたしは内心びくびくしていた。
「ありがとう」
「えっ」
「わたしのこと、助けてくれて。本当にありがとう」
そう言って兵藤さんは頭を下げた。
「いや、そんなこと・・・・・・いいんだってば。気にしなくて」
照れるわたしに頭を上げた兵藤さんは、驚きの言葉を続ける。
「わたしと友達になってよ。ねえ、いいでしょ?」
「うん」
返す言葉が何も思いつかなくて・・・・・・わたしはとっさにそう返した。もしかしたらうれしさのあまりの条件反射が出たのかも。
「ねえ、彩穂って呼んでいい?」
再びわたしは「うん」とこたえる。
「よかったー。わたしのことは栞って呼んでね」
「うん。栞」そう呼んでからはじめてわたしは気づく。この学園に入学してはじめて友達ができたことに。
夏休みに入った。何よりわたしにはやるべきことがある。




