07 ざわぷにもけかた
時期は111「いつかが来る前に」前後
四匹のモンスターたちは、スタッフルームに身を寄せて集まっていた。
ロッカーの隅で縮こまるようにして、トリギュラとコッツは背中を丸めている。
考える時期が来た。
いままでのように生産者でいるのか、それとも管理者に回るのか。
と言われても、彼らにとって物事はそう複雑ではない。
彼らの答えはすでに決まっている。それはもう、尋ねられた瞬間から。
「ぷにー……」
「もけ、もけもー?」
「ちゃのきー」
作ることの喜びを知ってきた彼らにとって、いまの環境は忙しくも楽しい。
ただし、それは指揮する人間が彼女だからというのが前提にあった。
なにを悩んでいるのかと言えば、
「……ぼくたちにできますかね」
で、あった。
普段から見ているだけに、管理者がどれほど心を砕いているか知っている。
それをやる立場に回るとなれば、同じような仕事を期待されるだろう。
というより自分たちなら期待するだろう、と彼らはわかっている。
「ちゃののー……ちゃの、のきー」
「もけ、もけもっも」
「ぷにー。ぷに、ぷにっ」
小さく縮こまっていた若木の枝が奮い起つと、鶏牛の背中が伸びてくる。
ぴょんぴょんとスライムが飛び跳ねたかと思えば、彼らは白い骨に身を寄せた。
細枝が肋骨をなでて、前足の蹄が肩甲骨をなめらかに揺らす。
半透明な粘液が白いすねを這い回る。そのどれもが温かい。
「そうだよね。料理も、最初からできてたわけじゃないんだ」
すこしずつできることを増やしていって、いまがある。
みんながそれを知っていた。そうしてこのダンジョンを作りあげたのだから。
かたかたと震えていた白い骨拳がやわらかく広げられた。
黒い眼窩は相変わらずなにも映さない。けれどその眼差しで三匹を確かに見る。
四匹の期待も不安も、すべてがこのダンジョンに呼ばれた時とよく似ていた。