26 やさしい王様
王たちの食後の口直しは、最近ではケーキだけになりつつあった。
レシピを確かめる意味もあったし、作るのを安定させるのも重要だった。
材料を混ぜるところから焼き上げるところまで、すこしも気を抜けない。
そのかいあって、キュストモンク王のお腹がすこし服に合わなくなったくらいで、ようやくケーキの品質は安定し始めた。
いくらおいしくても、連日食べ続ければ飽きる。
王、王妃ならびにその息子たちも、ようやく終わると安堵の息を吐いたところで、ケーキを担当していた料理人からこのような願いが上がってきた。
「レシピ通りに作れるようになったところで、新しい味を研究させてほしい。もらったものをそのまま作るだけでは、王城務めの名折れである」
この上なく真面目で向上心があり、負けん気が強い。
いい仕事をするのに必要なものをすべて持ったすばらしい料理人だ。
しかし王たちは連食に飽きていた。
たっぷりと余計な肉もついていたし、これ以上食べたくなかった。
すぐさまテーブルで、王族たちによる会議が開かれた。
「どうする?」
「どうするもなにも、提案としては悪い話じゃない。外交にも必要だ」
「そういうことじゃない。いまは正常な判断ができないだろう」
「うむ。残念ながら口と腹がどうにも受け付けてくれぬ」
「でしたらそう言いましょう。ケーキではない味を出せたら食べると」
「ケーキであって、ケーキではないか。……なるほど、難題だ」
王たちは、どうあってもケーキを食べたくなかった。
どんなにおいしくて好きなものでも、いまはもう形も見たくない。
決議は速やかに通されて、王たちの返答は即座に厨房へ送り返された。
「ケーキはケーキのまま、まったく新しいものになったら口にしよう。それまでは味見もすべてそちらで行うように。食べ切れぬ分は城で働いているものに味を覚えさせるとよいであろう」
回りくどい言い方をしているけれど、要するに、食いたくないからそっちで勝手にやれ、と言ったも同然だ。
この答えに、厨房の料理人たちは感激した。
好きに材料を使って気の済むまでやれと言われて、やる気が出ないはずがない。
ましてや試作品でいいのなら、友人知人に食べさせていいとまで言う。
国にとって重要なはずのものを、ほとんど全幅と言っていいほど任せてもらえるのは、この上もないほど光栄だった。
「やるぞ、お前たち。ここまで目をかけて頂いた恩返しをしなければならない!」
『おおっ!』
料理人たちが団結して歓声を上げ、その日から城中にケーキが溢れていった。
王たちがケーキを見ないで済んだのは、わずか七日でしかなかった。




