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01 ハチミツリンゴタルト

 カウンター席の端っこで、少女はやってきたお菓子を眩しそうに見る。


「お待たせいたしました。ハチミツリンゴタルトと紅茶でございます」

「うわぁ、キラキラしてる……!」


 薄く切られたリンゴはハチミツで煮られて透き通る黄金色に染まっている。

 タルト生地にカスタードクリームを敷いて、その上に黄金リンゴが並んでいた。

 ぎっしり詰められたリンゴの皮部分は、窯の熱でカラメル状に香ばしい。


「た、食べても……いいんだよね?」


 一人、キョロキョロ周りを見て彼女はフォークを握りしめる。

 温かい紅茶のこともすっかり忘れて、恐る恐る手を伸ばした。

 なにしろ何十日分ものおこづかいを貯めて、ようやく食べに来たのだから。


「あっ」


 リンゴの皮が薄い飴のように砕けて、タルトがさっくり割れる。

 恋をしたようにドキドキが止まらない少女は、小さく削ったところを頬張った。


「ん……ぅ」


 叫び声さえ出ない。口を開けて、この味を逃してしまうのがもったいない。

 本気でそう思うほど、彼女は両手で口を覆ってじっくり噛み締める。

 サクサクホロホロ砕けるタルト生地に、ぽってり素朴に甘いカスタードにはバニラの香り。

 そしてなにより、じんわりと口いっぱいに甘酸っぱいリンゴの味わい。


「よかった。我慢してよかった」


 キレイな端切れや糸、町で売っている花に、ちょっとした小物。

 買いたくなるものはいくつもあったけど、それを耐えてでも食べる価値があった。

 最後のサクサクとしたタルト生地を食べ終っても、彼女は幸せに浸っていた。


「あっ、終わっちゃった」


 夢の時間はそれほど長くはない。

 でも、それは間違いなく幸せだった。


「……今度は、なにを食べようかなぁ」


 メニュー表に並ぶお菓子の名前を見ながら、じんわりと味を思う。

 また、何十日も我慢しなければいけない。

 でも我慢して、絶対に食べに来るんだと彼女は強く心に誓った。

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