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ドラゴンな幼女はさいつよだぞっ  作者: シチリアメロン
1章
3/3

お義父さん

久しぶりなので前話と少し矛盾点があるかもです。

見つけたらどしどし指摘してください

夢じゃなかった。


僕のつるペタボディをあらゆる外敵から守ってやると言わんばかりに巻き付いた毒々しい棘の生えた凶悪で巨大な尻尾。もし初見でこんな風に体にビッグテールが巻きついていたら、驚きの余り失禁し、凄まじく恥ずかしい姿を見せつけることになったに違いない。

もっとも、今の姿なら一部の大きなお友達から喜ばれるかもしれないけどね!よっ!ろりひんぬーのしーしー!


閑話休題、とまあ、現実逃避しても見える世界は何も変わらない訳で。

僕に絡みつくパパドラゴンはぐーすかとこれまた巨大なイビキをかいている。起きる気配が微塵も感じられない。

どうでもいいけど、「幼女に絡みつくお父さん」ってなんか卑猥だよね。

取り敢えず夢オチは無かったんだ!


「あの〜ちょっと、起きてくださいませんか? あんまり引っ付かれると困りますんで……」


丁寧に声をかけるも反応なし。いや、分かっていたことだけどさ。

今の僕はモノホンのドラゴンテールにがんじ絡めにされているため、外の様子が全く確認出来ない状態である。

見知らぬ土地に急に放り出された僕にとって、外の様子が分からないというのはとても不安になる。

ほら、大型ショッピングセンターで親とはぐれて迷子になったときに何でもいいからとにかくキョロキョロしたくなるよね?つまりそういうことだよ。


「起きてください。お願いします、何でもしますから」


懸命に声をかけるも目の前のドラゴンは無言を貫く。

もうキレていいかな?

目の前でスヤスヤと気持ちよさそうに眠るトカゲをみていると段々今の理不尽な拘束に怒りのボルテージがあげあげしてくる。

あっ、尻掻いてる。おい、てめえ曲がりなりにも父親だろ?娘の前でそんな格好していいのかよ。

怒っちゃうよ?普段温厚で近所から菩薩と呼ばれるほどの僕がマジギレしちゃうよ?あーあ。そっかぁ、起きないかぁ。

ふぅ、


「おい!!いい加減起きろっつってんだろうがおい!!!」


俺の持てる渾身の力を込めた魂からのシャウト。

その叫びが轟いた瞬間、眠り竜の巨躯にバシーン!!という耳を塞ぎたくなるような音と共に巨大な雷が落ちた。

比喩ではない。天を裂くほどの轟音を立てて、いくつものめちゃくちゃデカくて高威力な雷がパパドラゴンの体に直撃した。

「ぎゃあああああああああああああああ!!!!!!」と強烈な痛みに絶叫するパパドラゴン。暴れに暴れる尻尾に吹き飛ばされた僕が見たのは、両翼が焼け爛れたパパドラゴンと焦土と化したついさっきまで僕が寝ていた場所だった。


「えっ、なぁにこれぇ」


呆然と眺めるだけの僕をどうか許して欲しい。

だって一体何が起きたのか、さっぱり分かんないんだもの。

手持ち無沙汰というかどう対処すればいいのか分からない僕は、この場において立ち尽くすことしか出来ない案山子のようなものだ。

まあ、ここに来る前の僕は案山子よりも役に立たないスペースデブリのようなものだったけどね!


「え、えーっと大丈夫ですか?」


「くっ、くふふふふふぁハハハハハハ!!!なんという強さだ!!

よもや我が娘がこれほどまでの魔法の実力者だったとはな!!!」


一応今の僕の父親でもあるので、おそるおそる声をかけてみるといきなり上機嫌に笑い出した。先程まで痛みに苦しんでいたドラゴンと同一人物、もとい同一ドラゴンには見えないくらいだ。心配して損したわ。


「ガハハハハ!!我にここまでの傷を負わせたのはお前で3人目だ!!スゴイではないか!!驚いたぞ!!!

アオリ、お前がやったんだろう?先の雷魔法は!」


「えっ、あ、はい……」


本当は魔法なんてまったくもって知らないのだが、小心者で定評のある僕には、目の前の興奮したドラゴンに はい と頷くことしか出来なかった。日本人がイエスマンと言われる所以だね!なんでもyes!って頷いちゃう僕バリ日本人!イエスロリータノータッチ!!ロリは鬼ごっこでは無敵。ぅゎょぅι゛ょっょぃ。

兎にも角にも「やっぱり昨日の魔法を教えてくれなんて冗談だったんだなガハハハハ」と笑っているパパドラゴンを見ると今更違いますなんて言いにくい。


「はぁ〜僕の魔法って無意識的に出る感じなのかなぁ」


だから溜息を交えつつ、聞こえないようボソッと呟いてみた。


「っ!?……なんだと?」


とはいえ、やはりドラゴンの耳はすこぶるいいようだ。

僕がボソッと呟いた言葉にパパドラゴンが急に真剣な顔付きになった。さっきまで笑いこけていた顔が無表情で固められている。

何か失言してしまっただろうか。

もしかすると無意識的に発動しちゃう魔法というのはいけないことなのかもしれない。

そう考えていると、パパドラゴンが目を細め空を仰いだ。


「もしお前が本当に無意識のうちに魔法を発動させているのなら、危険だ」


「危険というと?」


「おそらくお前は魔法のコントロールが出来ていないのだろう。

普通はコントロールが出来なくとも余り周囲に被害を与えることはない。何せ、無詠唱で魔法を発動させるのだ。威力なんて察して然るべきものだからな。

しかし、お前は違う。お前の魔力はそこいらの凡夫の追随を許さぬほどの高さである。なまじそれだけ強い分、コントロールができないと先の雷魔法のように強い魔法が感情などに任せて勝手に発動してしまうことになる……」


そこでパパドラゴンは一呼吸つくと言った。


「お前ほどに魔力が高い者による魔法なんて耐えるものなど極小数に限られるだろうな。

つまり、先の雷魔法、相手が我ではなかったら────


確実に死んでいた」


……死んでいた。

それはつまるところ、僕が故意にしても違うにしても生き物の命を奪っていた、ということだ。相手はドラゴンで人間じゃない。

でも知能があり、感情がある点では『人』と殆ど同じなのだ。その命を奪うということは人を殺すことに等しいと僕は思う。

僕はすぐにでも魔法のコントロールを身につけなければならない。

いつ発動してしまうか分からない爆弾、それを制御出来る術を身につけなければならないのだ。


「……今すぐ僕に魔法を教えてください」


「ほう」


「頼んでいる立場の僕が言うのはおかしいですけど、僕は魔法を習わなければならないと思います。これは言い換えるなら義務だ」


初めてだった。

こんなに何かに真剣に取り組もうと思ったのは。

受験の時だって、好きな女の子への告白だって、就職活動だって、こんなに真剣な気持ちにはならなかった。あっ、でもネトゲには常に全力全開最高に真剣だけどね。

つまりネトゲレベルで僕が真剣になるほどに今の僕は危険であるということだ。伝わるかな?伝わらないかそっかー。


暫くの無言の時間を破ったのは、いつにも増してギラギラとした目つきのパパドラゴンだった。ちょっと怖い。世のロリコンどもにどこか通じるものがある。

しかし、出てきた言葉はとても誠実なものだった。


「我は……


感動したッ!!!!


教えるとも!魔法だけではない、有りと有らゆる我が叡智をお前に授けようではないかァ!!!

……我は不安だったのだ。

娘もそこいらの凡夫のように自身の力に溺れ、努力を怠るものではないかと。しかぁし!それは杞憂であった!!済まぬ、娘を信じてやれぬ不甲斐ない父を許してくれぇ!!!」


「……」


涙を飛ばしながら叫ぶパパドラゴン。

涙の粒が大きすぎて、最早水弾というべきか。地面が涙で抉れていくところを見るのはドン引き不可避である。

でも、

そんなパパドラゴンを、何故だろうか僕はこの世界に来る前の事故で亡くなってしまった優しくて子供思いだった実の父親と重ねていた。


「すぐにでも始めねばな!人間どもには鉄は熱いうちに打てという言葉があるらしい。けだし名言よ。

話を戻すが、やるからには妥協は許さぬ、心して臨むのだぞ!

故に、励めよ?」


「うんっ!」と大きく頷いた僕の顔はおそらく満面の笑顔であったに違いない。

励めよ、そう激励の言葉を投げかけたお父さん(・・・・)はとてもかっこよかったんだ。


突然異世界に放り出されてしまった僕。

一人ぼっちだった僕に支えてくれる人が出来たんだ。

そう考えると何故か涙腺が緩んでくる。

いつだっけ、最後に涙を流したのは。確か小学生とのときに右腕を骨折したときだっけ。

父親が事故で亡くなったときだって泣くことはしなかった。男は泣いちゃダメだって言われてたから必死に我慢して、お葬式の時もずっと平静を装うことができた僕が、


この時の感泣は止められなかった。

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