スキルやら魔法やらなんやかんや
続きです
鼻がムズムズする。
僕の意識が覚醒したのはそんな理由からだった。どうやらゲーム中に寝落ちしてしまったようだ。それにしても怖い夢を見た。
クレーン車に潰されるなんてホント夢でもショッキングだよ。あっ、ショッキングピンクな髪のツインテール美少女は大好きです。
それにしても若草の香りとぽかぽかと体を包む陽光の温もりが心地良い。すぐ近くにはサラサラとせせらぎが聞こえてくる。
川だろうか。部屋に川があるなんておかしな話だ。ママンに聞かせたら笑ってくれるかな?
……つまんね、で両断されちゃいそう。
にしても、こういうぬくぬく陽気は昼寝に最適だ。
昔からこうして学校や仕事をサボタージュしながら微睡むのは好きだった。なぜか優越感みたいなものがあるんだよなぁ。
閑話休題
今の今まで現実から逃げてたけど、そろそろ観念しなければならない。
部屋の中で若草の香りが自然発生する訳が無いし、水の流れる音なんてのは基本的に蛇口の閉め忘れにより起こるもので水道代的に唾棄すべき悪だ。
今感じているぽかぽか陽気だって、エアコンによる暖房じゃ生み出せない自然のもの。
つまり、僕は“屋外”で寝ているのだ。
しかもコンクリートでガチガチに固められたような場所ではなく、自然の草木が広がった場所。
ぶっちゃけこのまま華胥の国で遊んでおきたいが、一応周りの確認をしよう。自分の置かれた現状を把握することはサバイバルにおいて非常に大切なことらしいからな。サバイバル決定なんだ……嫌だなぁ。
まあ、何だかんだ言って少しだけ楽しみなのだ。美しい自然の景観の中で目を覚ます。スパランツァーニ!間違えた、なんと素晴らしいことか!
いざ、開眼!
目の前に何十匹もの羽が生えたどでかい爬虫類が闊歩していた。
RPGでお馴染みのドラゴンさんによく似ている。というか、形がそのまんま。
は?
『やっと目を覚ましたか……。我が娘よ』
「は?」
でかぶつモンスター達のうちの一匹が声をかけてきた。娘やらなんやら言ってるけどちょっとなにいってるかわかんない。
それに俺のダンディーな素敵ボイスがめちゃんこ可愛いロリボイスになっていることも奇怪なことだ。運営詫び石はよ。
『やっと目を覚ましたか……。我が娘よ』
「えっ、ごめんなさい。な、何言ってるんですか?そ、それとこ、ここどこですか?」
大事なことなので二回言いましたというような雰囲気を醸し出している目の前のモンスターに訊ねる。我ながら度胸があるな。
それにしても娘とは一体どういう事だろうか。僕はちゃんとした人間だし。仕事柄目が悪い僕でも流石に『人間か、否か』くらいは遠目でも判別できる。目の前のモンスターは全く人間には見えない。
まさか……、二次元をこじらせ過ぎて、あの伝説の『二次元以外は人に見えない病』を患ってしまったのか!そんなもんねえよ。
まあ、でも僕が人間である以上、目の前の謎生物の娘であるなんてことは有り得ないわけで。そもそも僕にはちゃんとしたママンとパパンが存在する。
というかここマジでどこだよ。
『むっ!ここは我ら竜族の住処であるぞ、無知なる娘よ。確か人間共は【竜の谷】と呼んでいたな』
へぇ、なるほど。今いる場所はファンタジー小説とかでよく見かける竜の生息域だったようだ。
つまり目の前のモンスターは見たまんまドラゴンのようだね。では、何故僕がドラゴンの娘にされているのか。
視線を自分の体へと向ける。
ロリ特有のつるぺたボディが見えちゃいましたっ!
裸です!すっぽんぽんですっ!!!!色々と見えちゃアウトな部分を見せつけちゃってまふ!
きゃーの〇太さんのえっち!!!!
今まで自分の身体がどうなっているのか確認する暇が無かったとはいえ、まさか大人の男の体が幼女の体になっていたのに気付かないなんて……。自分の鈍感さに頭が痛くなる。
鈍感系主人公はくそ。
それはさて置き、この体、どこかで見たような気がする。それもつい最近に。
「あのさ、鏡とかないですか?ないですよね聞いた俺が悪かったです殺さないで」
目の前のでっかいモンスターの機嫌を損ねて殺されるのは不本意だし、怖いので命乞いを交えながら、鏡が欲しいですっというニュアンスを含めて訊いてみる。
確認せねばならないことが出来た。今すぐに。絶対ニダ!
『鏡? その程度造作なく創れるぞ。
それと娘よ、我をなんだと思っているのだ。その歳で人化魔法が使えるほどに才のあるお前を殺すわけがないだろう』
ドラゴンさん、見た目に反して優しかった。
あれ、でももし才能がなかったら容赦なくコロ助しちゃうってことじゃあ?いや、気にしないのが吉だな。才能のない僕の末路が恐ろしい。
それにしても、じんかまほう?魔法?なにやら心躍るフレーズじゃないですか。ぴょんぴょん跳ねちゃいますよ。今なら僕のバニー姿が見られるぜ!
まあでもね、魔法なんてもん使った覚えがないから何かの間違いなんだろうけど。
まあ、取り敢えず、
「おっす鏡お願いしまーす」
どこから鏡が出てくるのだろう、そう内心わくわくしながら待ってみる。今の俺の目はさぞかし光り輝いていることだろう。
そんな僕のキラキラした目を向けられたパパドラゴンが得意そうな顔で無雑作に右腕で虚空を薙ぐ。
その瞬間に僕の目をレーザー光線のような眩い光が貫いた。
ほんとに目が光り輝いちゃいました!!ピカッチュー!黄色い鼠もびっくりなライトニング!
咄嗟に目を瞑るなどしていれば耐えられたかもしれないが、太陽も眩む光を直接目に入れてしまった僕は激痛に耐える他ない。
「目がー!目がぁー!!!!」
某大佐並に目を押さえ、叫びながら地面をゴロゴロと転げ回る俺氏。
バ〇スの光でのたうち回る大佐を大袈裟だろwwwと笑いながら見ていた僕だったが考えを改めよう。きっついわこれ。
涙目で土と草を纏いながら一頻り騒いだ後、僕の目の前にはどでかい姿見のような鏡がゴゴゴゴゴと佇立していた。具体的に大きさを説明すると、今の俺を4個分上に重ねたくらいの大きさ。
え、魔法ってこんなスゴイの?
『これで良いか?娘よ』
「えっ、はい。ありがとうございます。充分すぎますはい」
びっくり仰天しながら形式的に感謝し、傍に佇む大きな鏡に写る自分の姿に目を注ぐ。
そこには天使がいた。
比喩ではない。文字通り天使だ!金髪の天使がいた!!
見間違えることはない、俺が鉄血を注いで作り上げた金髪パッツン紅眼美少女煽姫たんがいた。
まさか僕がまたあのマイラブリーエンジェル煽姫たそに会うことが出来るなんて思わなかったよ。もっとも僕が煽姫たんになるのは誤算中の誤算、想定外過ぎることだけどね!
しかし裸だ。課金ゴスロリドレスどこいった。ウン万円のヤツ。僕の汗水流して得た結晶はいずこへ……?
あっ、そう言えば、
「あのー、さっき言ってた人化の魔法ってなんスか?そもそも魔法ってなんスか」
『むむ? もしや魔法を知らずして使っておったのか、娘よ?行先恐ろしいの。無論お前に教授することに異論はない。
しかし、魔法を教えるのはお前がもう少し成長してからだ」
どうやら魔法はまだ教えてもらう事は出来ないらしい。
確かに煽姫ボディはロリっちいけどさぁ……。
ちょっとだけ残念に思っていると、パパドラゴンが肩をとんとんとつついてきた。
ごめんなさい、思いっきり爪が刺さってるんですけど。
竜種の体は硬いのだろう。人間の頃なら致命傷な傷も左程ダメージを受けない模様。 つーか絵面大丈夫かこれ?
パパドラゴンの鋭い爪によってグサグサされている肩を見ていると、顔を覗き込まれる。
「おい、聞いているのか?
取り敢えず自分の能力を把握しておくといいだろう。
自身の能力を知っているのと知らないのとでは成長の具合なんてものは全く違うからな。
【オープン・ステータス】と唱えてみるといい』
「あーはい。えーっと、【オープン・ステータス】っ!」
パパドラゴンの言う通り呪文?らしきものを唱える。
すると空中にゲームのステータスウィンドウみたいなのが出現した。タップすると、指に硬いものが触れた感触がある。どうやら実体化してるみたい。もうこれ分かんねえな。
さて、気になる僕のステータスはというと、
《ステータス》
Name: アオリ・ヒメ
Lv: 3
Class: 竜姫
Job: 無し
skill: アイテムボックス
無限の成長
グーグレア翻訳Lv3
竜王のオーラLv2
闇魔法強化LvMAX
ろりぼいすLvMAX
Uniqueskill:しなないもんっ!Lv2
黒歴史召喚Lv4
魔法使い見習い
ニートの風格
虚飾Lv1
称号: 娘 ニートに堕ちし天使 魔法の天災
舐めとんのか。
なんだよ、グーグレア翻訳って。もうそれだけでお腹いっぱいだよ。誰のステータスだよこれ。俺だったよ……。
特にユニークスキルの欄。ちっとばかし名前が酷すぎやしませんかねぇ?
俺のステータスは強そうなスキルがちらほら見えるものの、クソミソなスキルが大部分を占めている残念なものだった。
『娘よ、スキルがあるなら押してみよ。スキルの効果が分かるぞ』
グーグレア翻訳Lv3
言葉を自動で翻訳してくれる。レベルが上がる事に人以外の生物の言葉も翻訳出来るようになる。
しなないもんっ!Lv2
死ににくくなる。これ以上老化しなくなる。
レベルが上がると全能力値が倍加。
魔法使い見習い
30歳まで童貞を守りきると魔法使いに昇格できる。
全ての魔法を無詠唱で発動できるのに加え、全魔法の威力が20%増加。全魔法耐性が20%増加。
ニートの風格
jobが無し の状態のみ発動。
何もしなくてもお金が増えていく。
発動していなくても、常に金運値が50%増加。
名前がクソミソな割に効果がチートだった。
でも魔法使い見習い。てめーはダメだ。どんなに有能だろうと絶対に許すことは出来ん。
バカにしやがってからに。
『どうやらあまり使えないスキルだったようだな……。ドンマイ』
頬を膨らませてステータスウィンドウを睨む俺を無能なスキルのせいでむくれているのかと思ったのだろう、父ドラゴンがごつい手で頭を撫でてくる。
ロリをオッサンドラゴンが撫でる図とか酷くシュールだ。シュールストレミングの臭いくらいシュールだ。規模が分かんねえよ。
くそっ!俺はもう寝る!
この後パパドラゴンの手を払い除けて、思いっきり不貞寝した。
夢オチだったらいいな。あっ旗立てちゃった……。