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紅葉に嵐

感想評価、お待ちしております。

9月の夜という温もりを



この日に限っては



ちくちくと、



ただ陰湿に、



肌を刺してきた事を



よく覚えている。





風が私をひと撫でして逃走を図る。




鉛筆を削る手を止め、



黒鉛の粉が連れて行かれるのを見て、



私はそれを追い掛けた。




蝶の飛ぶ時に微かに舞う虹の子の様に、



時折手を私に差し伸べるも、



すぐに引っ込めて窓に足をかける。



思い出したかの様に振り向くと手を振った。



追いかけて、


窓から外を覗いても、



闇に浮かび上がるのは一つだけ。





楷の木である。


季節がちょうどよい。


狂ったような朱に染まっていた。




でも、今日は来客だ。











一匹の梟が私を見ている。




私は家を出ることにした。



楷の木の下へと急いだ。










根は幾筋もの絡み合いながら地を潜り、




幹は老婆の労苦のように刻まれて、




枝の模様は寸分のの狂いも無く、




終点に一年の結晶を纏わせる。






前述の通り、中間など無い。あるのは緋だけ。







手を伸ばすと、



梟は直ぐに足を掛けた。





口に挟んでいたもの、



椛の七指を



私は落掌した。







一指ずつに筆で文字が書かれている。







風月何絶急




深林尽日忍




慇懃謝紅葉




好去到情人








そこで私はーー



落ちている緋を拾って、






懐君属秋夜




散歩詠暗天




霧空葉音耳




幽人応未眠




と書いた。





書き終わって、



母喰鳥を探すも



見当たらない。

















ーー不意に背後から手が伸び緋を奪い取った。
















慌てて振り向くと、



















ーーー彼女がいた。







花顔柳腰、





鹿幘からはみ出ている







灰の様に斑らな髪、








艶やかで






しなやかな唇、











そして霞色の瞳は詩を映し、








雪膚を薄紅に染めている。











私が何とか驚殺から回復した時、








彼女の濡れた目と目が合った。












時は、朗々にて朧々。







絡まった視線はもう解せない。

















私は彼女を抱き寄せた。














彼女はほっそりとした手を背に回し






私を抱き締めた。

































太陽が漸く顔を覗かせようとしていた。








久しぶりの夜明けだった。









~fin~


有難うございました。


本物語に登場した詩については、

日本語訳を入れますので其方も御一読して頂ければ恐縮です。



作中詩につきましては、

偉大なる詩人の作品をお借りして

矮躯な者ながら手を加えたものになります。



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