始まり
村のはずれにある小さな館。
そこには化物が出ると噂されている。
俺たちは小さいころから、その館に近づくことを許されなかった・・・。
中学2年の夏休み、俺たちは自由研究の宿題で村の地図を作ることにしていた。
「よし、だいぶ出来たな。」
「これなら余裕で完成だね!」
「もっと細かく作れば、先生の評価も上がるんじゃないかな?」
俺たち3人はいつも一緒の幼馴染。
元気ハツラツ、好奇心旺盛な三浦 千代。
消極的で臆病、でも頭はいい藤岡 圭太。
そして俺、工藤 祐樹。
千代と圭太は昔からこの街に住んでいて、俺は10年前、都会に引っ越してまたこの街に戻ってきた。
「よし!これで完成!」
「待てよ、あの館書いてないじゃん」
そう言って俺は、村のはずれの小さな館を指さす。
「ゆーくん忘れちゃったの?あの館には関わらないほうがいいよ?」
「そうそう、おっかなーい化物が出るんだよ~」
千代が自分の手を体の前に垂らし、お化けのようなポーズをとっている。
「そんなのただの子供騙しだろ?小さい子供が近づかないようにするためのさ。」
俺の発言を聞き、そうかもしれないという表情をする千代。
「で、でも、お母さんに近づくなって言われてるし・・・」
「だから子供騙しだって!圭太だって細かく作ったほうがいいって言ったじゃないか。」
「うっ、それはそうだけど・・・」
「あーもうっ!そんなに言うから私まで行きたくなったじゃん!」
「2対1だな。館の前までだから大丈夫だって。」
「うぅ・・・。わ、わかったよ。館の前までだからねっ!」
こうして俺たちは館に向かった。
館は、村の奥にある神社の後ろの山の上に建っている。
村のはずれと言うだけあって、人気は全くなかった。
「うぅ、初めて来たけどなんか不気味だね。」
「圭太ぁ、怖いのはわかるけどそんなにぴったりくっつかないでくれ。正直歩きづらい。」
「2人とも遅いよー!早く早くー!」
「なんであいつはあんなに元気なんだよ・・・。少しは女の子らしく怖がれよ。」
俺たちを置いて、1人でずんずん先に進んでしまう千代。意外と険しい道なりに、俺と圭太は苦戦していた。
「この足場なら、近づくなって言われてもおかしくないな」
「だねぇ。一応ここも地図に書いておこぅ」
「・・・お前、まだ怖いか?」
「そりゃ怖いよ!薄暗いし、足場は不安定だし、ちーちゃんは先に行っちゃうし!」
「千代の奴、どこまで登って・・・ん?あれ千代じゃないか?」
少し上を見上げると、千代が誰かと話しているのが見えた。
「千代の他に誰かいるぞ!」
「そんな!こんなところに来たから怒られるよぉ」
「・・・いや、待て。あれは!」
そこにいたのは、同じクラスメイトの三島 幸也と成宮 春香だった。
「あっ!ゆーくん、けーたん!やっと来たぁ!」
「ん?なんだ、工藤と藤岡もいたのか」
「三島!それに成宮も!」
「こんにちは、工藤くん、藤岡くん。」
「お前ら、どうしてここに」
「そんなの決まってるだろ、あの館を調べるためだ」
「えっ!?調べるって、まさかお前らも!?」
「当たり前だ。俺も成宮も、前からあの館が気になっていた。自由研究の宿題としてレポートを書くつもりだ」
「僕たちと完全に被ってるね・・・」
「お前たちの目的も知っている。言っておくが、俺たちの方が良いレポートを書いてやる。お前たちはせいぜい、甲虫観察でもやってるんだな」
そう言って三島と成宮は奥へと進んでいった。
「なんだよあいつ!腹立つな~!」
「や、館のことはあの2人に任せて、僕たちは言われた通り甲虫観察でも・・・」
「もう地図は完成しかけてるんだ。今更変更なんてしたくねぇよ」
「そーだよ!あんなに言われて悔しくないの!?」
「そりゃ悔しいけど、あの2人の方が目的もはっきりしてるし、上手に作れそうだし・・・」
うじうじしていてきりのない圭太。俺としては3人で完成させたい。だから少しキツくあたってみることにした。
「じゃあ圭太はこのまま帰ってもいいぞ。あとは俺らで作るから」
「えぇ!?そんなっ!」
俺の意図を察したのか、千代も俺の案に乗ってくる。
「そーだよ!あの2人より絶対良いレポート作るもんね!」
そう言って千代は再び登り始めた。俺もそれに続き登り始める。
「うぅ・・・、ちょっと待ってよぉ~!こんなところで1人にしないでぇ~!」
俺と千代の作戦が成功し、再び3人で館に向かった。
このとき、圭太の提案を素直に聞いていれば、あんな恐ろしいことにならずに済んだのに・・・。
今となっては、そう思うことしかできなかった・・・。
この作品をご覧になっていただきましてありがとうございます!
今後も皆様の興味をそそるような怖い展開がありますのでご期待ください。




