パーティ
「ただいま」
「おかえり」
つい最近まで1人でアパートに住んでいたのでまだその応答に慣れないでいる。
「まだ慣れないんだよね。」
溜め息をつきながら私は言う。
「ゆっくり慣れればいいさ。」
私にコップを渡しながら彼は答える。しかし、コップを受け取ろうとした矢先、頭痛が襲い反応が鈍ってしまった。
「大丈夫?」
私のふとした一瞬に気付き心配そうな表情で彼はのぞく。
「少し、具合が悪いかな。でも「じゃあ、今日は「いや、絶対やるよ!パーティ!!」
今日は1ヶ月同居の記念日。私のせいで練りに練った計画を潰す訳にはいかない。
「明日は遼、仕事で出張でしょっ!今日しかないよ、今日っっ!」
私は彼の答えを聞かず、さっさと夕飯の支度に取り掛かった。彼は考え込む様に、その場に固まっていたが考えがまとまったのか、
「つかさ。」
料理をしている私に近寄り声を掛けた。
「だから大丈夫」だって・・・と言いかけた刹那、眩暈で視界がグラッとなる。
「だからね、大丈夫なの・・・」机に寄りかかる私の弱々しい声に対し、目の前の彼は焦る表情を隠すかの様に、
「無理に話すな!俺がどれだけ心配したと思っている!?だから・・・俺は・・・」
怒りをふんねにして話を続けようと思ったが私は、俯き荒い呼吸を繰り返している。見て分かるように歩けそうにない。
ー仕方がない。
彼は私をお姫様抱っこをしベットヘ運ぶ。運びながら私の大丈夫・・・大丈夫・・・と呪文の様に言う言葉を聞いて彼は情けないと思い後悔をした。
「う・・・んん」
私は目を覚ました。
「おっ、起きたか。」
傍に居た彼は、安心した表情で私の手を握りしめていた。部屋の様子から察する様にここはベットらしい。額には熱冷シート、頭には氷枕。彼がやってくれたのだろう。しかし、胸に引っ掛かるものがある。それを思い出そうとしたら、
「さっきはごめんな。」
「?」
「お前が辛そうなのに怒鳴ったりして。」
ああ、思い出した。私は怒られたのか。
「いや・・・私も。」
言葉を出すのが苦しくて咳き込んでしまった。彼は優しく背中をさすってくれた。
「おっ、そういえば。」
彼は近くの机に置いてある茶碗に手をのばし、
「食べる?お粥。」
と言った。しかし、私は近くの机に置いてあるデジタル時計を見て、
「会社、大丈夫なの?」
と訊ねた。時刻が次の日の8:00を示していたからだ。
「あー俺、会社休んだわ。」
しまった。また、彼の足を引っ張ってしまった。今日は出張の日ではないか。ごめんと謝ろうと思ったが、口にはお粥が詰め込まれ照れくさそうに、
「だって俺、辛そうなつかさを置いていけないもん。ずっと呻いてたし、きつそうでグッタリしてたぜ。」
モグモグしながら、私はうれしさで顔が赤く染まった。それを見た彼は心配そうな顔で、
「熱、大丈夫か?顔が真っ赤だよ。熱測ろうか。」
何処から事も無く、体温計を取り出してきた彼は私の脇にセットした。
ー3分後ー
ピピッッ
「ゲゲッ!」
体温計を抜いた彼は、顔が引き攣っていた。
「38.5℃・・・大丈夫かっ!?」
彼の顔が私を心配そうに見ていた。流石に大丈夫とは言えなかったので、
「ありがとう。」
と言った。そこまで私を心配してくれ、看病してくれる彼に恵まれて私は幸せだと。
すると彼は、私の頭をなでながら、
「パーティはつかさが元気になってするから、早く元気になれよ。」と言った。
そして1週間後、つかさは元気になり今はパーティが始まろうとしている。
「かんぱーい」
カチンというグラスのぶつかる音が耳に心地よくきこえる。彼は、
「今日は言わなければならない大事なことがあるんだ。」
「だから、1ヶ月記念おめでとーでしょ?」
「いや、結婚しようだ。」
その瞬間、私は喜びに満ち溢れた声で
「はい。」
と答えていた。
はじめまして、にこ遥です。
この作品はデビュー作ですので、何かご理解が難しい点があるかと思いますが、温かい目でお読みください。
また、ご感想やアドバイスがありましたらお待ちしております。