たそがれ幻想詩-ララの回想-
目に留めていただき、深く感謝します。
私は後悔しているのだろうか。
あの日の光景が私の目の前に広がる。
私の頭の中で雑音混ざりの音声が再生されていた。
「さようなら、ララ。もしまた出会えたのなら--」
鮮やかな夕日に照らされてあの日の貴方は笑う。
私はなんて答えたら良いのか、分からなかった。
何て言えば良いのか悩む私なんて待たないで、貴方は私の側を離れていった。
あの時……何か言えていたら、私たちの未来は変われたのだろうか?
「おーい、ララちゃん!出番だよ!」
明るい舞台の向こう側から髭面の恰幅の良い男性が大声で声をかける。
「……………はい。」
私は立ち上がり、裏舞台に立った。
目を閉じて耳を澄ますと、より一層に観客のざわめきが際立つ。
未来なんて変わらない。
私は、そう思った。
根拠はない。ただ漠然に。……………直感的に。
もしという言葉は会話の中では叶わないことを願っているのだと、だから使いたくはないと他の誰でもない貴方が言っていた。
なら、あの時私が何を言ってもこの一人ぼっちの未来は変わらなかったのだろう。
私から貴方がいなくなるのは、もう変えようのない『未来』だったのだから。
私は目を開けカーテンの向こう側へ進む。
輝くばかりの光に照らされて、私は舞台の中央に立った。
ゆっくりと深呼吸した後、貴方によく聞かせたあの歌を唄う。
私なりの貴方の別れの曲のつもりで、私なりに寂しさを離れた貴方に伝えたくて。
でも私はまだその時気付いていなかった。
貴方の中で、まだ『あの日』が続いていたことを。
転機が訪れようとしていた。