恋とはなんと甘美な物か
笑顔で目の前に座る、短髪のまあ良い方の顔の彼。 彼と私は恋人同士と言っても差し障りの無い関係だった。 一緒に旅行にも行ったし、体を重ねた事なんて数えきれないほどある。 自他共に仲が良いと認められた、とても仲の良いカップルだった。
いつもはお仕事が忙しくて会えないのだけど、今日はたまたま時間が開いたので急遽暇だった私にデートしようかって言ってくれた。 だから私は、ちょっと遠いけどとっても美味しいって評判の喫茶店に、少し面倒臭がった彼を引きずっていったの。 案内されて座った窓際の席は、良い感じに外の景色が見えていた。 彼は出口に背を向けて、私は奥にあるトイレに近い方に座ったわ。
「ね、拓也」
「なぁに?」
彼の声は低くて甘くてとろけるよう。 とっても優しくて、でも虫から私を守ってくれる。
「好きよ」
「僕もだよ」
「どれくらい好き?」
「空気ぐらいかな。 無いと生きてけない」
「ふふ、ありがとう。 空気はたしかに大事よね。」
お待たせしました、と店員が注文した物を持ってきた。 彼はコーヒー、ミルクと砂糖をいっぱい入れて。 私は真っ赤な色の、イチゴのアイス。 甘くて冷たくて、蕩けそう。
「ふふふ」
「なんだいさっきから。 何か良い事でもあったのかい?」
彼も笑った。 傍から見れば、そりゃもういちゃついてる様にしか見えないバカップルだろう。 ちりんと音がして、一人客が出て行った。
「ええ、最近会えてなかったもの。 拓也が居るってだけで、私は幸せなのよ。 拓也のためなら、なんでもできちゃう」
「それは嬉しいね、僕も同じだよ」
「わぁ、ありがとう」
くすくすと笑いあう私達。 ちょっとアイスがほしいって言うから、あーんして食べさせてあげた。 甘くてとろける冷たいアイス。
彼とのおしゃべりを堪能して、夜に差し掛かる頃に私達は分かれた。 次はお家に招待しよう。 そして手作りの、真っ赤で美味しい柘榴のアイスをご馳走するの。
とっても甘々な彼