▲中学生最後の夏
ある王は言った。 「私は皆を愛している。 だから私は全てを終わらせよう。」
別の王は言った。 「私は皆を愛している。 だから私は全てを始めよう。」
何もかもが消えゆく時、二つの思想が動き出す。
ゆるやかに腐り落ち行く己の欠片達を見て、終わる世界は何を思う?
ある日。
森の中。
カピバラ(?)に出会った。
…ああ、うん?
◇◆◇◆◇
VRMMORPG。 正式名称Virtual Reality Massively Multiplayer Online Role-Playing Gameと言うゲーム形態の一種であり、簡単に言うと『仮想空間での多人数同時参加型オンラインRPG』である。 オンゲーの上位互換版、とでも言うと分かりやすいだろうか。
このVRMMORPG、正式名称【Kings of the Time】にアクセスする方法は簡単。 特別なゲーム機(なぜか、色から猫の足にぴったりなサイズのリセットボタンまで当時のファミコンを再現してある)に【綿】のソフトを入れ、ヘッドセットを被ってゲームを始めるだけだ。 その後は種族と年齢を選び、容姿を設定した後名前を決定して終わる。 その後、【故郷】にて目覚めるのだ。 【故郷】は種族などからランダムに決められるので選ぶ必要はない。
ちなみに公式略称はKoTなのだが、最終的に【綿】として広まった。 そうなった経歴は、無駄に洗練された無駄な努力を好む人達がKoTの発音がコットなのに目をつけ、それに『ン』をたしてコットン、つまり綿としたんだと。
また、このゲームの製造過程にあたり、魂という物が存在する事が広く告知された。 その最たる証拠こそがこのゲームの容姿設定の方法である。 このゲームでは二通りの方法でキャラを作成する事が出来るのだが、その方法が【一から作る】か【現在の姿を使う】であり、【現在の姿を使う】を選ぶと現実での自分の姿がダウンロード…と言ってもいいのかは知らないが、とにかく容姿設定画面に現れるらしい。 なにか特別な事をしている訳でもないのに。
その後はそれに手を加える事も、そのまま使う事も自由だ。 年齢や名前も最初は現実の物が表示されている。 勿論、人気のある名前やありふれた名前はオープンβ版時に取られているので使えない。 世知辛い世の中である。
…とまあ、ここまでがーっと喋っていて名乗っていないのも変か。 はじめまして、俺は命守司。 この夏を越えたら高校一年生になる。 一人暮らしをつい二日前にはじめたばかりだ。 兄弟は居ない。 姉妹もいない。 両親は健在。
髪の毛は焦げ茶。 目は黒。 典型的な日本人である。 両親の血のいい所を受け継いだので、顔はゆるそーな柔らかい雰囲気がある。 頭の中身は…聞かないでな部類だが。 いいんだ、そこそこの生活さえできれば俺は幸せなんだ。
まあそんな事はさておき。 そんな俺は【綿】を高校入学祝として貰ったので、早速今日始めるのだ。 嬉々として朝飯を食い終えた後にヘッドセットを被り、あらかじめテレビのまん前に用意していた簡易寝床に横たわる。 このゲームをやっている最中は現実世界の体から意識がなくなるらしいので、どうせなら楽にプレイしたいと思い作っておいたのだ。 左にあるテーブルの上には水分類やお菓子などが置いてあり、いつでも手に取れるようになっている。 準備万端過ぎて自分が怖い。 さすが俺。
そうしていよいよ、右にあるテレビとゲーム機のほうに目をやり、手を伸ばして起動した。 そしてさっとG様もかくやという程のスピードで寝床に戻るが、目の前のモニターには【ゲーム開始まで後一分】と出ている。
どうやら落ち着くための時間はくれるようだ。 先に言っておいてほしいものである。
顔を真っ赤にしながらも手を胸の前で組んで大人しく横になっていると、時間がゼロになり感覚と言う感覚が消えた。 …いや、下にゆったりと沈んでいっている。 適度に暖かく、心地が良い。 ふわり、ふわり。 沈んでいく。 はぁ、と息を吐いて体の力という力を抜く。
どれくらい時間がたったのだろうか。 何故だか急に足が下に向き、立っているような体勢になった。 と同時に、足の下に何かを感じた。 硬いので、足場かなんかだろう。 そしてキャラ作成が始まった。
まずはウィンドウが現れた。
【種族を決定してください】とある。
選べる種族は人間系、妖精系、魔物系の三種類であり、その中からさらに分岐しているものを一つ選ぶ形式になっている。
人間系は人間、半獣人とドワーフ。 エルフ系はエルフ、ピクシーとウィンドボイス。 魔物系はゴーレム、獣人とハーフリングとなっている。
自分の種族は決まっている。 エルフだ。 エルフは種族特性として魔術を使う際にはボーナスが付くので、魔術を扱う系のジョブに最適なのだ。 魔術系には魔術士や死霊術士などが居るが、自分は治癒術士系に進むつもりだ。 自分で治癒さえ出来れば、後はひたすら殴ってれば勝てるしな。
ま、そんな訳で俺はエルフにしたのだった。 己の姿をダウンロードしますかと聞かれたので、Yesにしたら少し待ったあと自分の姿が目の前に現れた。 このままで良いですか、と来たので全力でNoを押す。 エルフってーんだから、さすがに髪の色とかは変えたほうがいいと思ったからだ。
…で、時間をかけた結果、さらさらの金髪(慎重に赤みを増やした黄金色だ)の緩い三つ編みを左に流している、同じ色の瞳をした長耳さんが完成した。 勿論オールバックではない。 髪を縛っているリボンは緑色のベルベットらしき生地で出来ており、長さは大体鎖骨の辺りまでだ。 顔はぜんぜんいじくってないので、最終的にはなにやらオリエンタルな外人さんが出来てしまった。 日本人の顔立ちに金髪ならこんなものか。 年齢は…今と同じで良いな。 面倒くさい。 背の高さは…今と同じでいいや。 そっちのが動きやすいだろうし。
さて、名前である。 どうしたものか。 普通に自分の名前から取るか? んー……そういえば、あるゲームに凄く良い歌があったっけ。 それをちょっといじくれば…行けるんじゃないか? という訳で、物はためし。 入れてみた。 最初の何回かは失敗したが、根気良くやっていると新しいウィンドウが出た。
《お名前は【リヒト・ヴェレン】で宜しいですか?》 Yes No
お、これで通ったって事になるのか。 ああそうそう、リヒトはドイツ語で光。 ヴェレンもドイツ語だけど、意味は波。 これだけで分かる人にはわかっちゃうかね。 しかし、ドイツ語ってほんと良い響きの言葉が多いよなぁ。 俺の年代にはドンピシャだよ。
…うん、これで設定は全て完了です。 やっとはじめられる。 という訳でお願いします決定ボタンさん。 …ん、ああ、最終確認ね。 はい、それでいいです。 という訳で、もっかい決定ボタンを押します。 また目の前が真っ暗になったんだが、今度は落ちる感覚ではなく浮かんでいっていた。 ふわーり、ふわーり。 んー、気持ちが良い。 そして突如光が目の前にばーっと広がったと思ったら……
……思ったら、ツタやら苔やらに侵食されているボロボロの神殿の中に居た。 神殿の中にはいくつかの柱と自分の身長の何倍もある窓が左右対称に施されており、自分が居る場所の後ろには黄金の縁と葉っぱや木の枝の装飾を持った大きな鏡が鎮座していた。 この鏡だけは時間の経過から取り残されたように傷も曇りも何一つ無く、淡々と己の目の前にある事実だけを写していた。
雅やかな造形を持つ窓からは、この場所を囲っているであろう大樹達が所狭しと並び、ここがとても深い森の中だという事を声高に歌っていた。 ふいと上を見上げてみると、三角形の屋根が見えた。 かろうじて穴は開いていないので、寝泊りするには困らないだろう。
ここにずっといるのもあれなので、俺はよっこらせっと立ち上がると神殿の外に出た。 扉もまた俺の身長よりずっと高かったが、見た目よりはずっと軽かった。 ずごごごごと音を立てて開いたそれを潜り一歩そこから踏み出すと、眼下には階段と緑の苔やツタに侵食されている廃墟が広がった。 慎重に階段を居り、探索を始める。 どうやら早朝らしく特有の澄み切った空気が肺にもぐりこみ、少々肌寒い気温はしかし夏の気配をすでに孕んでいた。
…これ、本当にゲームか? かがくのちからって、すげー!…なんて事を思いながら、とりあえず探索してみる。 現在の情報を集めるのはどのゲームでも現実でも有効な自衛方法だからである。 さらに、運がよければ凄いアイテムが落ちている場合もある。 ただ、現実で財布とかを拾ったらきちんと警察に届けましょう。 助け合いは大事です。 勿論中は見ずに。 …中に指紋が付いていたら、わざと盗んだと言いがかりを付けられてしまう場合もあるからな。
ある程度探索すると、いろいろな物が集まったので整理してみる。 まずは【治癒のススメ】。 手に取ったと同時に消えたので、おそらく落ちているアイテムは触れた時点でアイテムボックスに入るのだろう。 俺にとってもっとも大事な指南書である。 他には【剣術のススメ】、【干し肉】、【干しプラム】、【漬物壷】(中身は無し)、【水筒】、【フィールド<暗影の森の庭>の地図】、【守ノ首飾リ】、【御伽噺の本】、そして【古ぼけた人形】。 しかし、それよりもっと大事な…もっとすばらしいモノを、俺は見つけたのだった。
そう、目の前にいらっしゃる、普通よりも凄くでかいカピバラ(?)さんの事である。
◇◆◇◆◇
と、言うところで冒頭に戻るわけだ。
とはいえ、ここはどこだーとかはその時は考えなかったね。 カピバラ(?)さんが危ないモンスターかどうかも。 勿論ここが安全かどうかなんて知ったこっちゃなかった。 ただ、俺は一心不乱に。 目の前の可愛らしい生物に優しく紳士的に(ここ重要)突進した後、そのすばらしい毛並みを堪能しまくった。
しかしこの子、凄いな。 逃げもしないし、我関せずとばかりにもっしゃもっしゃとたんぽぽを食いつづけてる! 母さんが動物アレルギーだったからなー。 飼えなかったんだよなー。 触って帰った…どころか、同じ部屋に居ただけでも感知しちゃうんだもんなー。
こんなに思いっきり触ったのは…どれくらいぶりだろうか。 長すぎて思い出すことも不可能だ。 ああ、それにしてもかわいい。 あったかい。 さらさら。 しあわせ…。 …おお、腹がいっぱいになったのか、寝始めた。 かわいい。 …寝ているのを邪魔するのもあれなので、ようやく自分の置かれた状況を理解する事にする。
そして理解した状況。
俺の【故郷】は廃墟のようです。
しかも、ずっと昔に放置された。
んー、なんかぼろぼろになった苔まみれの建物などの他に骸骨とかもあるんだよな。 一見緑一色で綺麗なのに、良く見ると凄い事になっている。 はっきり言って気味が悪かとです。 廃墟の部分には一本も木が無く真っ青な空が見えているが、廃墟の周りはいきなり暗い森になっているからちょっと怖い。 奥のほうには小高い丘と、その上に建っている俺が出てきたであろう神殿風の建物がそびえ立っているから、なんか来たらそこに逃げようか。
カッピー(カピバラ(?)をそう呼ぶことにした)、良くこんなとこで飯食えてたな。 案外、神経図太いのな。 それがまたかわいいよカッピー。
カッピーがまだお昼寝中で暇なので、ひょいっと手を前にかざしてみる。 これは自分用ウィンドウの呼び出し動作である。 それにはアイテム欄、装備欄、Stat欄など色々ある。 右端にはログアウトボタンもある。 アイテム欄を覗いてみると、さっき拾った物の他に【深緑の片手剣】、【深緑のスタッフ】、【深緑のチェストプレート】、【深緑のケープ】、【深緑のチュニック】、【深緑のブーツ】、【深緑のキュロット】、【深緑の籠手】、そして初心者用HPポーションが50個と初心者用MPポーションが50個入っていた。 初心者支援アイテムがあると、なんか幸せになるよね。 ちなみにポーションのWTは0でした。
地図はさっき拾った【フィールド<暗影の森の庭>の地図】を使ったら登録された。 色々弄くった結果、ここは<暗影の森の庭>内にある<深緑の聖地>という場所だという事が分かった。 現在位置を表示する、って良い機能だよな。
時間は特別欄に入っていた【真鍮の懐中時計】を装備すれば分かる。 これは流れの違う現実の時間とゲームの時間を同時に表示してくれる優れものだ。 ちなみに、ゲームの体感時間は現実の約六倍だ。 現実の一日がゲームでの六日。 ゲームの一日が、現実での四時間。 時を忘れてゲームをしてしまう人のために、アラーム機能も付いている。 なので、現実では忙しい人などもログインして休む事が多いらしい。 ちなみにリアルで何時何分になったら強制ログアウト、という条件もつける事ができるらしい。 なんて便利。 …ここに勉強道具とか持ち込めるんだろうか。 持ち込めたら、さらに便利なんだが。
まあそんな俗な事は置いといて。 【守ノ首飾リ】および【真鍮の懐中時計】と深緑装備を一式身に付け、周りと同じ深緑色になった俺は…再びカッピーの傍に寄っていったのだった。 念願が叶ったのだ。 これぐらい許して欲しい。
ああそうそう、カッピーの正式名称がわからない理由は、分かりません。 普通の動物だとしても、どういう生物かは出るはずだもんなー。 というかやってる知り合いに聞いたんだけど、ニワトリや馬でも出るそうだ。 でもいい。 カッピーが魔物だろうと、どうでもいい。 可愛いしアクティブじゃないからな。 それだけで俺は生きていける。
これで最初にやるべき事は全部終えた、と思う。 そんでまあ…ちょっとこのあたりを探索したら、人が居る町を探す旅に出る事になるだろう。 しかし色々調べてきたから良かったようなものの、俺がいきなり始めるタイプの人だったらどうするんだろう。 チュートリアルも無いし、明らかに混乱してやめちゃうよな。 いわゆる一つのマゾゲーに良く訓練された兵士でもない限り。
さて、では…探索に行ってきまーす。
◇◆◇◆◇
探索を開始してから15日間。 俺はまだ【故郷】にいた。 愛するカッピーと共に。
だって綺麗な水源は近いし、モンスターは弱いのばかりだし、美味い木の実も柔らかな寝床もここにはあるんだ。 …人間、堕落してしまうとどうにもならないって事が良く分かったよ。
しかし、ちゃんとレベルアップはしている。 レベルも5になったし、【ススメ】類の本を読んで使える『コマンド』も増えた。 ついさっきも【出血治療Lv1】を覚えたし。 ちなみに、【出血治療】とは『選択した相手の【状態異常:出血】を止める。』スペルだ。 他に覚えている物は、【治癒Lv1】、【癒しの歌Lv3】、【攻撃Lv4】、そして【魔術の結界Lv2】だ。 …あ、『コマンド』ってのは魔術や攻撃、特別モーションなどをさす言葉だから、覚えておいてくれな。
そんで、なんで【治癒】が一番低いかと言うと、よくある『回復率は低いが、発動と回復するまでの期間が少ない』系だからだ。 俺はどっちかというと総回復率が高い方が好きなので、【癒しの歌】の方を好んで使っている。 とはいえ、ここいらでLv5ともなると回復なんていらなくなるから、レベルは低いまんまだが。 ちなみに【魔術の結界】は結界内にいるとMD(魔防)が少々上昇し、MP(魔力)が一定時間の間、規定分回復するスペルだ。 LV2なので、『30秒』の間『2%/最大MP』分回復する。 MDは今のところどうでもいいが、自然に回復する値に加えて回復してくれるのでかなり使い勝手が良い。 結界内から出たら効果がなくなるけどな。
ああでも、一応留まってる理由はあるんだ。 勘違いしないでくれ。 今はまだ出ないほうがいいと判断しただけなんだ。 …本当だぞ?
実は入ってからゲーム時間で十一日目。 いきなりログアウトが出来なくなってしまった。
まあ、ここまでならよくあるゲーム系のトラブルだ。 ただ、その後がおかしかったんだ。 いきなり空がどす黒い赤になったかと思うと、ぶつっと何かが切れた音がしたんだ。 そしてログアウトをしようとしたんだが徒労に終わり、ふと時計を見てみると現実とゲームの時間の流れの差が訳わからん事になってたんだ。 具体的には、通常は「四倍」となっている所がバグっていた。
ちょっとパニくっていたらカッピーが擦り寄ってきてくれた(しかも自分から!)ので平常心を取り戻せたのだが、その状態で二分ほど待っていたら、空から何かが軋むような音が聞こえてきたんだ。 マジ怖かった。
その現象は五分ほどで収まった。 通常の空の色が戻り、音は聞こえなくなったが、ログアウトは依然としてできないままだった。 俺だけがこんな状態な訳がないだろうし、他のプレイヤー達も同じ物を見て同じ状態になっている事だろう、と俺は結論づけた。 そしてこういう場合、人間は大抵通常状態に戻るためには時間を有する。 つまりは町はまだ混乱状態だろうという事だ。 なので、俺はいまだにここに居るって訳。
とはいえもう三日もたっている。 そろそろ町に行ってみても良い頃合だろうか。
「なぁ、カッピー。」
カッピーは答えない。 彼はただ、ゆったりと目を開けて俺のほうを見た。 しかし俺は、それがカッピーの喋り方だという事を心得ているので、喋り続ける。
「俺、そろそろ町に行ってみようかと思ってるんだ。 あの赤い空事件から三日もたってるし、パニックも収まってんじゃないかなーって思ったんだけど。」
ころんとカッピーの前に寝転がる。 カッピーは少し思案していたが、のっそりと身を起こすと俺に向き直った。 それはつまり、行こうってことですかカッピーさん。 釣られて俺も正座した。
「カッピー、まさか付いてきてくれるのか?」
ゆったりと目を閉じて、ゆっくりとした動作で頷くカッピー。
「カッピー、ありがとう。 とても心強いよ。 じゃあちょっと準備してくるから、待っててくれ。」
カッピーを待たせちゃならんと俺は手早く支度をした。 神殿内に出しっぱなしだったキャンプセットをしまい、果物と水を持てるだけ持つ。 ちなみに干し系のアイテムには手をつけていない。 たいまつは…二、三本もって行くか。 レベル上げと筋トレのおかげでWT(いわゆる筋力)が上がってるので、はじめた時よりは持てる量が増えてるのが嬉しい。 火を汲んできた水で消し、準備は万端。 俺たちの冒険はこれからだ!
そんな打ち切りフラグを勝手に立てつつ、てしてしとカッピーの居る所に戻る。 カッピーは座って待っていてくれた。 かっこいいよカッピー。 んじゃいこうって事で歩き出す俺たち。 これから何があるのかは分からないけど、まあ適当にやっていこうと思う。 それが俺の生き方だからだ。
…どうせ、問題解決とかは、勇者(いるのか分からんが)とかそういったリア充な中心人物がやるだろうし。
◇◆◇◆◇
その暗い部屋には、無数のモニターの光のみが光っていた。
中心に位置する椅子に座っている人影は、まるで人形のように身動き一つすらせずモニターを見つめている。 しばらくの間その人影はそのままそこに座っていたが、己の左に現れた新しいモニターとそれがもたらしたアラームにより、初めて反応を返した。
《ATTENTION!》
《特別フィールド<■■□■■>より『■■□■』が旅立ちました。》
《繰り返します、フィールド<■■□■■>より『■■□■』が旅立ちました。》
《これにより、Piscesクエスト『■■□■Part1』が始まりまます。》
《Piscesクエスト『■■□■Part1』の内容は『■■□■』と『■■□■』の係わった者の行動如何により変化します。》
《Piscesクエスト『■■□■Part1』に組み込まれた者は、行動を起こす際には十分注意してください。》
《繰り返します、Piscesクエスト『■■□■Part1』に組み込まれた者は、行動を起こす際には十分注意してください。》
その人影はアラームが終わった直後は動きを見せなかったが、その後一つため息をついて、囁きの様な愚痴をこぼした。
「……ノイズ、多すぎだっつーの。」
【リヒト・ヴェレン】
髪・瞳: 黄金・黄金
レベル:5
現在位置: <暗影の森の庭>
装備:
【深緑装備一式】
【真鍮の懐中時計】
【守ノ首飾リ】
所有アイテム:
【治癒のススメ】
【剣術のススメ】
【干し肉】
【干しプラム】
【漬物壷(果物入り)】
【水筒(水入り)】
【古ぼけた人形】
【果物(×43)】
【御伽噺の本】
所有『コマンド』:
【治癒Lv1】(備考:対象のHPの『5%/200%』を回復し傷を癒す。)
(Lv2:『5%/200%』→『7%/200%』)
【癒しの歌Lv3】(備考:対象のHPを『10pt』づつ『50秒』回復する。)
(LV4:『10pt』→『15pt』、『50秒』→『1分』)
【攻撃Lv4】(備考:対象を攻撃する。 AP依存。)
【出血治療Lv1】(備考:選択した相手の【状態異常:出血】を一定の確率で癒す。 LK依存。)
【魔術の結界Lv2】(備考:結界の中に居るとMDに『+1』され、MPが『2%/最大MP』づつ『30秒』回復する。)
(Lv3:『+1』→『+1.5』、『2%/最大MP』→『4%/最大MP』、『30秒』→『40秒』)