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「ご指名ありがとうございます」婚約破棄から始まる悪役令嬢の王国攻略  作者: 小鳥遊夜乃


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第13話 柱は、動かさない

 評議会の後、

 私はすぐに動かなかった。


 それが、

 一番の“動き”になると

 分かっていたから。


(四大貴族)


 王国を支える四本の柱。

 でも――

 柱は、押すものじゃない。


 押せば、

 必ず軋む。


 軋めば、

 周囲が騒ぐ。


 王国攻略で

 一番いらないのは、

 その音だ。


 フォビア家。


 魔法の正統。

 教育と理論の頂点。


(……父は、

 動かさない)


 動かさなくていい。

 もう、

 “在る”だけで

 十分だから。


 魔法学校が平常運転。

 それ自体が、

 王国の安定。


 父は、

 私を使わない。


 でも、

 止めもしない。


(それが、

 一番重い後ろ盾)


 ハートガード家。


 剣と規律。

 治安と抑止。


(ここは、

 使う場所じゃない)


 剣は、

 抜かせない方がいい。


 抜かせた瞬間、

 “事件”になる。


 ハートガードは、

 最後に立っていればいい。


 動かない強さ。

 それが、

 この家の価値。


 ヴェラルーカ家。


 理屈。

 予測。

 制度。


(……一番、

 危ない)


 頭が良すぎる人は、

 早く答えを出したがる。


 だから、

 距離を間違えると

 “使われる”。


 でも。


 正しく距離を取れば、

 未来を共有できる相手。


 メラルーカは、

 もう気づいている。


 私が、

 感情で動かないこと。


 そして、

 結果だけを

 残していること。


(……ご指名は、

 一回だけでいい)


 エスメラルダ家。


 金。

 物流。

 情報。


(分かりやすい)


 利益があれば、

 動く。


 なければ、見ない。

 だから、

 一番扱いやすい。


 ただし。


 最初から

 全額は出させない。

 小さく。

 確実に。


 “試し金”で十分。


 四大貴族は、

 味方じゃない。


 敵でもない。


 機能だ。


 魔法は、

 安定させるために。


 剣は、

 抜かせないために。


 理屈は、

 先を読むために。


 金は、

 流れを作るために。


 それぞれ、

 使い道が違う。


(……王国攻略)


 王座を奪うわけじゃない。

 命令するわけでもない。


 ただ、

 決まる前に、

 選択肢を置く。


 それだけ。


 選ばせる。

 選んだ気にさせる。


 夜の世界で、

 何度もやってきたこと。

 

 問題は――

 誰に、

 どの順で

 声をかけるか。


 答えは、

 もう出ている。

 最初は、

 剣でも魔法でもない。


 理屈。


 理由が通れば、

 金は動く。


 金が動けば、

 剣は抜かれない。


 魔法は、

 最後まで

 何も言わない。


 私は、

 深く息を吸う。


(……焦らない)


 席は、

 もう用意されている。


 あとは――

 誰を、どの席に座らせるか。

 王国攻略は、力比べじゃない。


 配置の話だ。


 私は、

 静かに結論を出す。

 次に動くのは――

 ヴェラルーカ家。


 でも。

 私からは行かない。

 向こうから

 来させる。


 ご指名は、

 まだ

 こちらから

 出すものじゃない。


(夜職語録㉓

 指名は、

 欲しがらせてから

 受けるもの)


 それが、

 一番高くつく。

 王国でも、

 同じだった。

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