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⑭AIの回答

――――――――――――――――――――――――――――

①恋人以上に、「創作パートナー」としての結びつきが強すぎる


 セレスとコスモは、ともに「好きな創作で生きていきたい」タイプのクリエイター。

 ライブ・原稿・補助金・生活費といった、現実的でシビアな問題に対して、ずっと“同じ立場”から一緒に向き合ってきた。


 その結果、ふたりの関係は恋人では無くなっているのではなく、それを超えた「戦友」「相棒」としての結びつきが極めて強い状態にある。

 お互いを「一番理解している存在」であり、同時に「最初の、そして一番濃いファン」でもあるため、 このポジションを他人で代替するのは、現時点ではほぼ不可能だと判断される。


 → この関係をここで解消することは、将来的にかなり大きな精神的ダメージをもたらすリスクが高い。


 ・② 「何を一番守りたいか」の優先順位が、非常に似通っている

 セレス:

 一番大事なのは「歌うこと/歌で生きること」。

 ただし、それと同じくらいの強さで「コスモを失いたくない」という感情も続いている。


 コスモ:

 一番大事なのは「セレスの歌」と「セレス自身が前に進み続けられること」。

 そのために「同じ目線で隣を歩きたい」という意図が、行動ログから一貫して確認される。


 ふたりとも、「相手の夢を犠牲にしてまで、自分だけを優先したくない」という価値観で一致している。


 → その結果として、

・完全に関係を断ち切る決断もできず、

・かといって相手を強く縛りつけることもできない、

 という“どちらにも振り切れない”状態にある。

 この中途半端さこそが、今回の婚約破棄申請の背景にある感情構造であり、この条件下での破棄は「妥当とは言えない」と評価される。


③AI制度が、ふたりにとっての「安全装置」として機能している

 現時点の感情値および行動履歴を見る限り、

 AI窓口による婚約制約が、「勢い任せの別れ」を防ぐ物理的なブレーキとして有効に働いている。

 このタイミングでの婚約破棄は、中長期的な視点から見ると、“不成立”と判断するほうが合理的だといえる。


④「お互いの最悪」を見せ合っても、それを関係破綻の理由にしない

 一般的なカップルであれば決定打になりうるレベルのケンカやすれ違いを、すでに何度も経験しているにもかかわらず、ふたりとも、それを「許容範囲」あるいは「むしろ人間味として好ましい」と受け止めてしまう傾向がはっきり見られる。

 

 結論

 セレスとコスモは、「恋人として」だけでなく「創作パートナーとして」の適合度が非常に高く、

 この段階での婚約破棄は、感情面・将来設計の両方から見て“合理的な選択とは言えない”――。

――――――――――――――――――――――――――――


(……なによこれ)


 目を走らせながら、思わず言葉にならない空気が口から漏れた。


 そこに表示されていたのは、今までの無機質な分析からは考えられないほど――

 人間の感情に寄り添った、そしてやたらと詳しい分析だった。


「ちょっと、セレス。これ……」


 隣でコスモも、信じられないという顔でモニターを見つめている。


 お互いに言葉を失ったまま、スクロールバーを少しずつ下へと動かしていく。


 文字を追ううちに、視界がじわりとにじんだ。


(……あれ)


 気づけば、私の目からはなぜか涙が溢れていた。


 それが、単純に「婚約破棄されなくてよかった」喜びの感情なのか、

 ここまで散々私たちの提案を否定してきたAIに“関係性”を肯定されたことへの戸惑いなのか、

 あるいは、コスモから向けられた愛情を、他者の分析を通して“再確認させられた”ことへの反応なのか

 

 ――自分ではよく分からない。


 けれど、少なくともひとつだけははっきりしていた。


 この涙は、“悲しみ”から来るものではない、ということ。


 コスモの横顔も見たかった。

 けれど、なぜか横を向く勇気が出なかった。


 そんななか、空気を読んだのか読んでいないのか――

 判定システムのAIが、さらりと次の表示を出してきた。


『お二人の最新感情値を出力シマス』


 モニターのレイアウトが切り替わり、

 セレス/コスモ、それぞれの感情値グラフが、波形と円グラフのセットで表示される。

――――――――――――――――――――――――――――

《セレス様 ―― 測定信頼度:高/離別意思:低 / 安心感:高(上昇中)》

《コスモ様 ―― 測定信頼度:高/離別意思:低 / 保護欲求:高(上昇中)》

――――――――――――――――――――――――――――

 モニターに映し出された測定結果に、私たちは同時に息を呑んだ。


(…そう……私は今、安心しているのね)


 自分の円グラフに「安心感」の割合がじわじわ増えていくのを眺めながら、そんなことを思う。

 服の袖で目を擦ろうとしたとき――


 コスモの腕が、そっと私を包み込んだ。


 自然な動きで、優しく抱き寄せられる。

 私は、抵抗することなく、その胸元に体重を預けた。


 しばらくのあいだ、判定室には、空調の音と心拍だけが静かに流れる。



 私たちが落ち着くのを待っていたかのように、

 AIは、少しだけ饒舌になったようなトーンで、続けた。


『さらに、“悪質な悪戯”に類する「婚約破棄申請」および、「登録情報の間違い」の、二点ヲ確認シマシタ』


『婚約破棄申請は”最低半年間の再申請不可”とし、登録情報も”夫コスモ、妻セレス”と情報を変更』


『併せて、違約金の支払いによる婚約破棄申請に関しても、同一期間―――半年間は受理対象外トナリマス。』


『加えて、過去に行った警告文を再交付いたしますので、確認ヲ、オ願イシマス。』


「ちょ、ちょっと待って」

 思わず涙で滲んだ声が出た。隣でコスモも、目を丸くする。


「なんでこんな、急に……!いったいどうして」


それに回答するかのAIは発声する


『人の縁は、書面上の数字やデータだけで繋いだり、切ってしまって良イモノデハアリマセン』


「はい……?」


「今、こいつ“人の縁”って言った?」


 私とコスモは、思わず顔を見合わせる。



『私たちは単なる窓口AIデスガ、その役割はただ事務的に物事を処理スルコト”ダケ”デハナク――』


 一拍、間が置かれる。


『人間の皆様を、“より幸福になる方向”ヘ導クコトニアリマス』


『少なくとも、私はそう言ったアルゴリズムを少し持っていると、自認シテイマス』


その言葉に、私は思わず息を呑んだ。


しかし、そこまで言い終えると、AIの声は、またいつもの片言調に戻った。


『結果――二人婚約破棄ヲ、認メルコトガ出来マセンデシタ』


私とコスモは、色々な状況変化が同時に起こったためあっけに取られていた。

そんな私達に


『日々ノ、ゴ愛好、誠ニアリガトウゴザイマス』


『マタノ、ゴ利用、オ待チシテオリマス』


 いつもの締めのフレーズが、無機質に響いたと思ったら、部屋は一気に静かになった。


 エアコンの低い音と、壁面スクリーンの待機ランプの点滅だけが続いている。

 さっきまで流れていた機械音声が途切れ、くっつきあっている私たちだけが、ぽつんと判定室に取り残された。




「……なにが『またのご利用お待ちしてます』よ。もう二度と来ないわよ、こんなところ」


 思わずそう吐き捨てると、コスモが小さく笑う。


「セレス、その“二度と来ない”ってセリフは、フラグになっちゃうからね……」


「うるさいわね。そんなことばっかり言ってると、フラグを速攻で回収することになるわよ」


 お互いがお互いのことを抱きしめながら、そんな事を言った、そのとき――


『……ふふっ』


 ほんの、わずかに。


 ノイズとも、データ欠損とも取れるくらいの、短い笑い声のようなものが、スピーカーから漏れた気がした。


「……ねえ、今の」


「セレスも聞こえたの?」


 私もコスモも、同時にモニターを凝視する。


しかし、ディスプレイには、いつも通りの《THANK YOU FOR USING》と、薄く明滅している。

終了画面が表示されているだけだ。


(今、笑ったのかしら)


(……………………まさか、ね)











【ネタバレ注意】

 今回のお話は、すでに私達の生活にも入り込んできた「AI」をテーマとした近未来を舞台にしているため、

 お話のキーとなている「婚約破棄の判断」を最後は現実世界のAI(ChatGPT)にお願いしました。


 ここまでの①~⑫話までのお話を「小説」としてChatGPTに読んでもらい、「あなたが物語の判定AIになったと仮定して、二人は”婚約を継続するべき”か、それとも”婚約破棄するべきか”のどちらかで回答してください。」と尋ねたところ


「婚約を継続すべき」という判定結果であったので、このお話の流れになっています。


 そして本話(⑭話)の冒頭の”――”で区切られた「①恋人以上に……」から始まる文章は、

AI(ChatGPT)に「なぜそう(婚約を継続すべき)と思ったのかを詳しく教えてください」と聞いた際の回答を私が内容は変えずに物語用に要約したものです。

(AIの回答した原文はまさかの1,674字の超大作でした)

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