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第8話:空から降る、伝説の美食家

俺の叫びで一瞬静まり返った広間に、突如として地響きのような音が鳴り響いた。

 ドォォォォォン!!

 王宮の天井が、まるで紙細工のように吹き飛ぶ。

 瓦礫と共に舞い降りたのは、太陽の光を反射して黄金色に輝く、巨大な翼――。

「……伝説の、古代龍エンシェント・ドラゴン……!?」

 カイル様が叫び、女帝の護衛たちが腰を抜かす。

 そこには、謁見の間を埋め尽くさんばかりの巨体を持った、神話の生き物が鎮座していた。

『【古代龍】空腹度:120%(餓死寸前)』

『【機嫌】賞味期限:マイナス2000年(絶望的に不機嫌)』

 黄金の龍は、琥珀色の瞳で広間にいる人間たちをなめ回すように見た。

 そして、その巨大な鼻がピクリと動く。

『クンクン……。……どこだ。この国に、数千年ぶりに我が嗅覚を刺激する「美味」の気配がしたはずだが?』

 龍が喋った。しかも、テレパシーのような直接脳に響く声だ。

 龍の視線が、俺の足元に転がっている「アイスの食べ残し」に固定される。

「ひいぃっ! サトウ、何とかしろ! お前の料理のせいで龍が来たんだろ!?」

 陛下が俺の背中に隠れる。情けない。

 龍はゆっくりと首を伸ばし、俺の目の前まで顔を近づけた。鼻息だけで、俺の制服が吹き飛びそうだ。

『小僧……。この、冷たくて甘い「雪の結晶」を作ったのは貴様か?』

「……ええ、まあ。デザートですけど」

『これを……これを食わせろ! 我はもう、火山のマグマや岩塩をかじる生活には飽きたのだ! 我が「味覚の賞味期限」が切れる前に、満足のいくものを出せ。さもなくば、この国を炭火焼きにしてくれる』

 王様、女帝、騎士、メイド……。全員が真っ青な顔で俺を見た。

 俺の鑑定スキルが、かつてない警告音を発する。

『【ミッション発動】古代龍の胃袋を満足させろ!』

『【失敗した場合】この国の賞味期限:残り10分』

(……勘弁してくれ。俺はただの定食屋志望なんだって!)

 だが、やるしかない。

 俺は広間に残っていた「超高級ワイン」と、リナが持っていた「定食屋の隠し味・味噌」を手に取った。

「ドラゴンさん! ……いや、龍王陛下! ちょっと待っててください。今、世界で一番贅沢な『ドラゴンのためのフルコース』を作ってやりますから!」

 俺は、壊れた天井から降り注ぐ光の中で、フライパンを握り直した。

古代龍エンシェント・ドラゴンを相手に、目玉焼きだと……!?」

カイル様が絶望に満ちた声を上げ、女帝エカテリーナは呆然として扇子を落とした。

だが、俺は本気だった。

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