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第4話:腐敗した毒と、はじけるレモン

「……味が『死んで』しまう、だと?」

 国王陛下が眉をひそめる。

 隣では王妃が、顔を引きつらせながらも「あら、無礼な料理人ね」と冷たい声を上げた。

「陛下、その男はただの平民。私の淹れた最高級の茶葉に、レモンなどという安っぽい果実を合わせるなんて……」

 王妃の頭上の文字が赤く激しく点滅する。

『【毒殺計画】実行まで:残り3分』

(やってやる。毒入り紅茶を、俺のスキルで「詰み」にしてやる!)

「失礼します。このレモンはただのレモンではありません。……これこそが、を抜く、いえ、『を抜く』最高のスパイスなのです!」

 俺は王のカップを奪ったまま、厨房の奥から取り出した自作の**「瞬間・超発酵シロップ」**(ただの激甘ハチミツ漬けだが、鑑定スキルで発酵のピークを狙ったもの)をドバドバと注ぎ込んだ。

 さらに、手に持ったレモンを力任せに絞り、ある「鑑定」の裏技を使う。

(鑑定スキル、対象固定:紅茶の中の【毒素】!)

 俺の目には、紅茶の中で毒の成分が黒いドロドロとして見えている。

 そこに、俺の作った超高濃度ビタミンと発酵液が混ざり合う。

『鑑定結果:化学反応により毒素が分解。……さらに、猛烈な下剤へと変化しました』

(よし! 殺傷能力は消えた。あとはこれを……!)

「さあ、王妃様。まずは提案者の私……ではなく、お勧めした王妃様から、この『生まれ変わった味』をしていただいてもよろしいでしょうか?」

 俺はわざとらしく、王妃の口元にカップを差し出した。

「なっ……な、何を!? 私が淹れたものよ、私が飲む必要なんて……!」

「おやおや、陛下。王妃様はご自分のセンスに自信がないのでしょうか? 隠し味のレモンが、そんなに怖いのですか?」

 カイル様がニヤリと笑って加勢する。

「そうだぞ、王妃。サトウの料理は魔法だ。……まさか、飲めない(・)理由でもあるのか?」

 周囲の騎士たちがざわつき始める。

 逃げ場を失った王妃は、真っ青な顔でカップを受け取り、震える手でそれを一口啜った。

「……あ、甘い……。いえ、酸っぱ……ッ!?」

 その瞬間だった。

 王妃の顔が、青から土色、そして紫色へと目まぐるしく変わる。

『【王妃の腸内環境】賞味期限:終了(大爆発まで残り5秒)』

「あ……あ、あ、あああああッ!!!」

 王妃はドレスの裾を振り乱し、優雅さの欠片もなく、脱兎のごとき勢いでトイレへと駆け出していった。

 王宮の廊下に、彼女の悲鳴と……何かが「破裂」するような音が虚しく響き渡る。

「……陛下。どうやら王妃様は、お腹の『賞味期限』が切れていたようです」

 俺が平然と言うと、陛下は呆然とした後、腹を抱えて笑い出した。

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