第3話:王宮からの招待状(あるいは拉致)
翌朝。
店を開ける準備をしていた俺の前に現れたのは、昨日とは見違えるほどシャキッとした顔のカイル様……と、その背後に控える十数人の重武装した騎士たちだった。
(……え、なに? 昨日のステーキ丼、やっぱり毒だと思われた?)
身構える俺の前に、カイル様が歩み出る。
彼の頭上の数字は『残り:18時間』。昨日の涙の食事で少し回復したが、依然として危険水域であることに変わりはない。
「サトウ殿。昨日の料理……あれは、ただの食事ではなかった。絶望の淵にいた私の魂が、あの一杯で繋ぎ止められたのだ」
カイル様が真剣な顔で俺の手を握る。騎士たちの視線が痛い。
「頼む。王宮へ来てくれ。今、この国には君の……いや、君の料理の力が必要なんだ」
「いやいや、俺はただの定食屋ですよ!? 勘弁してください」
「拒否権はない。これは――『王命』だ」
……というわけで。
気がつくと俺は、豪華絢爛な王宮の調理場に立たされていた。
目の前に座っているのは、この国の主、エドワード国王陛下。
一見、威厳のある老人だが、俺の【賞味期限鑑定】は残酷な真実を映し出していた。
『【エドワード王の健康寿命】賞味期限:残り3日』
(うわ、マジか……。この人、あと3日で死ぬぞ)
さらに最悪なのは、その隣に座っている若くて美しい王妃――。
彼女の頭上には、どす黒い霧のような文字が浮かんでいた。
『【王への愛】賞味期限:マイナス15年(腐敗済み)』
『【毒殺計画】実行まで:残り1時間』
……待て待て待て。
「腐敗済み」ってなんだ? しかも、あと1時間で毒を盛るつもりかよ!
「サトウと言ったか。カイルが絶賛する貴殿の料理、さっそく披露してもらおう。まずはこの……王妃が淹れてくれた紅茶に合う菓子を作れ」
陛下がにこやかに笑い、王妃が差し出したカップに口をつけようとする。
鑑定の文字が点滅する。
『【紅茶】賞味期限:終了(猛毒混入済み)』
ここで止めなきゃ、俺は「毒殺現場にいた怪しい料理人」として即処刑だ。
俺は咄嗟に、手元にあった「賞味期限ギリギリのレモン」を握りしめた。
「陛下! その紅茶、レモンを入れないと……味が『死んで』しまいます!」
俺は王のカップをひったくるように奪い取った。




