幕間 配給列の中で
(農民・不満側視点)
正直に言えば、納得なんてしていなかった。
俺は毎日畑に出ている。
朝から晩まで、腹を空かせながらだ。
それなのに――
列の前にいるのは、昨日まで寝ていた連中だ。
「……同じ量、かよ」
隣の男が舌打ちした。
分かる。
俺もそう思った。
若い領主は、演説めいたことを言っていた。
平等だとか、数字だとか。
正直、難しい話はどうでもいい。
欲しいのは、腹を満たす飯だけだ。
配給の袋を受け取る。
軽い。
「これで一日か……」
怒りが湧く。
だが、前みたいに暴れようとは思わなかった。
理由は単純だ。
――次が、見える。
壁に貼られた板。
名前と、作業内容。
俺の名前も、あった。
【畑の整備:参加】
その下に、小さく書かれている。
【追加配給:明日】
「……」
不思議なものだ。
量は増えていない。
今も腹は減っている。
それなのに、心は少しだけ落ち着いている。
嘘だったら、明日暴れればいい。
そう思えるだけで、人は我慢できるらしい。
家に戻ると、子供が袋を覗き込んだ。
「お父ちゃん、今日はある?」
「ああ」
少ないが、ある。
それだけで、胸が詰まった。
(……あの領主)
信用はしていない。
だが、前の領主よりは、よほどマシだ。
翌日。
畑に行くと、昨日より人が多かった。
誰も笑っていない。
だが、誰も盗まない。
俺は鍬を握り直し、地面を叩いた。
「……数字だか何だか知らねぇが」
生き残れるなら、それでいい。
そう思えたのは、
久しぶりのことだった。
本話もお読みいただき、ありがとうございました!
少しでも続きが気になる、と感じていただけましたら、
ブックマーク や 評価 をお願いします。
応援が励みになります!
これからもどうぞよろしくお願いします!




