第24話 宣言
王都への返書は、短かった。
> フェルディナンド辺境領は、
> 王国に敵対する意思はない。
> しかし、これ以上の内政干渉は受け入れられない。
丁寧な文言。
だが、意味は明確だ。
――ここから先は、踏み込むな。
その数日後、再び王都から使者が来た。
前回より人数が多い。
武装も、目立つ。
(……圧をかけてきたな)
アレクは、城門前で迎えた。
「フェルディナンド辺境領主、
アレク・フェルディナンドです」
使者の代表が、一歩前に出る。
「王国として、貴殿の返答は受け取った」
形式的な言葉。
「だが、その内容は――
前例がない」
アレクは頷いた。
「承知しています」
使者は、周囲を見渡した。
整然と並ぶ警備隊。
無駄な緊張のない村人たち。
「……問う」
声が、少しだけ低くなる。
「王国の庇護を減らすことが、
本当に領地のためになると?」
アレクは、即答しなかった。
代わりに、帳簿を差し出す。
「これが、現状です」
使者は怪訝な顔で受け取った。
数秒後、その表情が変わる。
「……飢饉、ゼロ?」
「はい」
「暴動、なし?」
「はい」
「反乱兆候……なし?」
「ありません」
沈黙。
「我々は、拡張を望みません」
アレクは、静かに言った。
「王国に逆らうつもりもない」
一歩、前に出る。
「ただ、
**壊れない形で生きたいだけです**」
使者は、言葉を失った。
ここで武力を使えばどうなるか。
全員が理解している。
勝てるかどうかではない。
――割に合わない。
「……王都へ、持ち帰る」
それだけ言うと、使者は踵を返した。
去っていく背中を、誰も追わない。
夕方。
広場に人が集まった。
アレクは、中央に立つ。
「王国には、我々の意思を伝えた」
ざわめき。
「これからも、
王国の名の下で生きる」
一拍。
「だが、この領地の運営は、
**この領地で決める**」
一瞬の静寂。
そして、拍手が起きた。
最初は小さく、
やがて大きく。
誰かが叫ぶ。
「俺たちの国だ!」
アレクは、首を横に振った。
「違う」
拍手が止まる。
「俺たち“だけ”の国じゃない」
空を仰ぎ、続ける。
「守る仕組みがあって、
従うルールがあって、
責任を取る者がいる」
「それが、国家だ」
その言葉は、
もう理想論ではなかった。
制度があり、
数字があり、
人がいる。
フェルディナンド辺境領は、
その条件を、すでに満たしていた。
この日、
辺境領は“見逃された”。
それはつまり――
国家として、認められたということだった。
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