表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
剣も魔法も平均以下の少年領主、数字と制度で破綻領地を国家にする  作者: 芋平


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

23/27

第21話 数字で殴る

 王都からの正式な文書は、簡潔だった。


フェルディナンド辺境領の統治状況について、

成果の報告を求める。


 期限は一週間。


 要求内容は、三点。


財政状況


治安状況


将来性


「……ふむ」


 アレクは、紙を机に置いた。


 役人の一人が、不安げに言う。


「成果、とは……軍事でしょうか?」


「王都が期待しているのは、そうだろうな」


 だが、とアレクは続けた。


「俺たちが出すのは、別の成果だ」


 数日後。


 王都から派遣されたのは、見覚えのある男だった。


 財務院視察官――マルクス・レイン。


「再びお会いしましたね」


「ええ」


 非公開の会談室。

 随行は互いに一名ずつ。


 マルクスは、率直に切り出した。


「率直に言いましょう。

 この領地は“妙”です」


「光栄です」


 アレクは微笑まなかった。


「軍拡なし。

 領土拡張なし。

 それでいて、治安が安定している」


「事実です」


「では、成果を見せてください」


 アレクは、帳簿を一冊差し出した。


「まず、冬季死亡率」


 マルクスの視線が、数字を追う。


「……ゼロ?」


「はい」


「この規模の辺境で?」


「ええ」


 次の頁。


「人口推移。

 減少していません」


「……流入が?」


「難民と流民です。

 逃げ出す理由がなかった」


 さらに。


「治安維持費と、被害額の比較」


 マルクスの眉が、わずかに動いた。


「……費用対効果が、異常に高い」


「即席ではなく、制度化しましたから」


 沈黙。


 マルクスは、ゆっくりと息を吐いた。


「……あなたは、何を目指している?」


 アレクは、少し考えた。


「拡張ではありません」


 正直に言う。


「壊れない国家です」


 マルクスは、しばらく何も言わなかった。


「王国は、成果を求めます」


「分かっています」


「だが、あなたの成果は――

 短期的な税収にはならない」


「ええ」


 アレクは、はっきりと頷いた。


「ですが」


 帳簿の最後の頁を開く。


「失敗しない領地は、長期的に王国の負担になりません」


 そこには、予測表があった。


 飢饉発生率。

 反乱リスク。

 軍派遣コスト。


「……なるほど」


 マルクスは、苦笑した。


「これは、財務官向けの数字だ」


「軍人には、響きませんが」


「ええ。

 だから、ここまで残ってきた」


 会談は、静かに終わった。


 別れ際、マルクスは言った。


「結論は、まだ出ません」


「承知しています」


「ですが」


 一瞬だけ、声を落とす。


「あなたを“失敗例”として処理するのは、

 王国にとって損だ」


 それは、最大限の評価だった。


 使者が去った後。


 役人が、恐る恐る聞いた。


「……勝った、のですか?」


「いいや」


 アレクは首を振る。


「殴り返されない位置に立っただけだ」


 だが、それで十分だった。


 帳簿に、新しい行を書き加える。


【王都評価:再検討】

【即時介入:回避】

【次段階:政治圧力】


 戦いは、終わっていない。


 だが、

 剣も魔法も使わずに、

 確かに一歩、前へ進んだ。


 フェルディナンド辺境領は、

 数字で生き残ることを証明した。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


少しでも続きが気になる、と感じていただけましたら、

ブックマーク や 評価 をお願いします。


応援が励みになります!


これからもどうぞよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ