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剣も魔法も平均以下の少年領主、数字と制度で破綻領地を国家にする  作者: 芋平


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第19話 届く噂

 噂は、いつも人より先に動く。


 フェルディナンド辺境領を発った商人が、街道沿いの宿で酒を飲む。

 その隣で、別の商人が耳を傾ける。


「……あの村な、盗賊に狙われたらしい」


「終わったか?」


「いや、それがな」


 商人は声を潜めた。


「何も奪われてない。

 死人も出てない」


「は?」


「しかも、盗賊が自分から引いたらしい」


 聞いていた者が、眉をひそめる。


「辺境の寒村だろ?」


「そうだ。

 だから、変なんだ」


 噂は、形を変えながら広がっていく。


 ――奪えない村。

 ――割に合わない領地。

 ――若い領主が、やたら現実的。


 それらは、数日後には王都へと流れ着いた。


 王都、貴族街。


 豪奢な執務室で、一人の貴族が書簡を読み終え、鼻で笑った。


「辺境が盗賊を退けた?

 誇張だな」


 だが、別の書簡を開き、表情が変わる。


 内容は、似通っていた。


「……複数か」


 彼は顎に手を当てる。


「しかも、被害なし?」


 その名は、アレク・フェルディナンド。


 戦死した父の後を継いだ、若い男爵。

 見捨てるために押し付けたはずの領地。


「妙だな」


 さらに数日後。


 王国財務院。


 一人の官僚が、帳簿を睨んでいた。


「……フェルディナンド辺境領」


 税の滞納はない。

 だが、増税にも応じていない。


 それでも――

 崩れていない。


「数字が……合っている」


 不正もない。

 粉飾もない。


 ただ、異様に堅実だ。


 官僚は、上司に書簡を回した。


「調査を進めるべきかと」


 一方、その頃。


 フェルディナンド辺境領では、日常が戻りつつあった。


 警備隊は、訓練を続けている。

 夜回りは減らしていない。


 だが、恐怖は薄れた。


 アレクは、カイルから報告を受けていた。


「盗賊の姿は、確認されていません」


「そうか」


 だが、彼の視線は、帳簿ではなく地図にあった。


(……次は、内側じゃない)


 森の外。

 街道の先。

 そして――王都。


 その夜、使者が到着した。


 王国の紋章を付けた外套。

 丁寧すぎる礼。


「フェルディナンド辺境領主殿」


 使者は、穏やかな声で言った。


「王都より、正式な視察の申し出がございます」


 役人たちが息を呑む。


 アレクは、一瞬だけ目を閉じ、そして開いた。


「……分かりました」


 拒否はできない。

 だが、恐れる必要もない。


「受け入れます」


 使者は微笑んだ。


「では、改めて」


 扉が閉まる。


 部屋に残った者たちが、アレクを見る。


「領主様……政治ですね」


「そうだな」


 アレクは、静かに言った。


「ここからは、

 数字だけじゃ足りない」


 剣も、魔法も使わない。


 次の戦場は、

 言葉と、制度と、立場だ。


 フェルディナンド辺境領は、

 国家として認識され始めた。


 それが、幸運か不幸か――

 答えは、まだ出ていない。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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