第33話 続・屋上にて
「副委員長、宮風さんについてなのだけれど」
「宮風か?それなら俺よりも天音ちゃんの方がよく知ってると思うが……」
俺と宮風なんて週に一度会うくらいだ。
それならば一緒に仕事をしてる天音ちゃんの方がよく知っていると思う。
俺がそういうと、天音ちゃんは顎に自分の右手を軽く当て、少し考え始めた。
「確かに、それもそうね。それに、あなたが副委員長のような普通の人と仲良くできるはずがないものね。知ってるわけもないわ」
なんだよその遠回しに俺が普通の人じゃないみたいなのは。
それに、その理論で言うと真希と優斗も普通の人じゃないってことになるぞ。
そう言った天音ちゃんは「じゃあ、もうあなたに用はないわ」と吐き捨てて、屋上から去っていった。
一体なんだったのだろうか。宮風がなんなのだろうか。
俺が天音ちゃんの言葉に疑問を覚え、なんだか気になって眠れなくなっているところに、再び来客が現れた。
「ここは立ち入り禁止の屋上だぞ」
「やぁ峯岸くん。今日はいい天気だね」
本日三度目の立ち入り禁止警告をした俺を、フル無視しながら天気の話をふっかけて来たのは何を隠そう、副学級委員長の宮風秀斗だった。
噂をすればなんとやらって本当なんだな。ナイスタイミングすぎる。
そう言った宮風は、先ほどの八坂のようにスタスタとこちらに歩み寄ってきた。
にしても来客が多いな。俺もそんなに有名になったか。今度サイン入り色紙でも販売するか。
「今日は君に相談があるんだ。ちょっと乗ってくれ」
俺と2人きりなため、宮風はいつものナルシストモードを終了し、タメ口になってそう囁いてきた。
それにしても、宮風が俺に相談とは一体何なのだろうか。
いつもなら、相談はおろか、普通に会話することすらできないと言うのに。宮風が俺に対する文句しか言ってこないから。
「いいぞ。ただし条件がある」
「ほう、いいよ。じゃあ条件は?」
「相談料だ。特価で500円でいいぞ」
俺、優しい〜!相談に乗ってあげると言うのに500円とか。こんなの、ガンジーでも助走つけてハグするレベルだわ。
俺がそう言うと、宮風は「おいおい、正気かよ」と言うまるでどっかのアメリカ人かのようなリアクションをし、考え始めた。
「仕方ない。君ぐらいにしか相談できないようなことだから、その条件を飲もう」
宮風は、ポケットから取り出した財布の小銭入れに入っていた500円玉を、俺が差し出したてに乗せた。
この前の美也のせいで行ったファミレスの所為で、結局ライブの限定グッズは買えなかったのだ。
次回のために少しずつ貯めていこう。
「確かに受け取りましたっと。で、相談ってなんだ?」
俺はもらった500円玉を自分の財布の小銭入れに入れ、宮風の方を向き直り、そう言った。
正直なところ、俺は宮風の相談というものに興味がある。
一体なんなのだろうか。まぁ、どうせ天音ちゃんのことな気がするが…………
「実は、瀬戸さんのことで相談があってな」
宮風は少し気取ったように、自身ありげにそう言った。
ほらなやっぱり。僕ちん天才。
「どうしたのか?まだ諦めきれないのか」
「諦められるわけないだろ」
宮風は急に真面目な顔になり、俺にそう告げた。
それにしてもこいつ、まだ天音ちゃんのことを諦めきれてないのか……
正直なところ、だいぶ気持ちが悪い……というか往生際が悪いな。
しつこい男は嫌われるぞ!
「で、天音ちゃんがどうしたんだ?」
「あぁ、君と話している時の天音ちゃんはどんな感じなのか気になってね」
宮風は先ほどのような少し気取った、女の子と話すときの優斗のような雰囲気をただよわせながらそう聞いてきた。
宮風の真意はなんなのだろうか。俺と話している時の天音ちゃんだって?全くつかめん……
「じゃあ500円な」
「またお金を取るのかい⁉︎君というやつは……」
俺が右手を宮風の前に差し出すと、宮風は頭を抱えてそう言った。
宮風は「仕方ない」と言って、財布から500円玉を取り出し、俺の右の手の掌へと乗っけた。
分かればよろしいのだ分かれば。
「えっと、天音ちゃんが俺と話す時の態度だって?」
「あぁ、そうだ」
俺は宮風に、いつもの天音ちゃんの様子を話した。
俺に対する皮肉やら文句やらをしっかりと俺に刺さる角度で言ったきたり、などなど。
話が終わると宮風は、ホッと少し落ち着いたような表情になった。
なんだ?なんでこいつは今の会話で安心感を覚えているんだ?
「いや、この前の美也さんと初めて会った時のファミレスだけど、瀬戸さんがいたのが不思議でね」
「なんだ、そんなことか」
「そんなこととはなんだ。瀬戸さんが君と遊ぶだなんて、正直驚いたんだからね」
別に、俺と遊びに来たわけではないのだがな。
ただただ激辛料理を奢って欲しかっただけなんだよな。
ちなみに、天音ちゃんが誰かと遊ぶと言うのは俺もかなり驚いている。
「あれは、その。まぁ色々とあって天音ちゃんも来たんだ?」
「一体何があったんだい⁉︎」
宮風が前のめりになりながら俺に向かってそう尋ねる。
だが、真希に教えてもらった天音ちゃんの弱点を話すわけにもいかず、俺は黙秘を貫く。
痺れを切らしたのか、宮風は「もういいよ」と言って、屋上を後にした。
これでやっと寝れる、と思った俺は、ベンチの上に寝転がって不快眠りへと落ちた。




