第32話 屋上にて
空は晴れ渡り、元気な鳥のさえずりが聞こえる今日この頃。
俺は雲ひとつない青空を見上げながら仮眠を取る体制に入っていた。
いや、心地が良い。やはりこの時期の屋上での昼寝は格別だ。今日も、この時期ならではの温かく心地の良い風が吹いていた。
今日は気分転換に、地べたにダンボールを敷くのではなく、立ち入り禁止のはずなのになぜか設置されているベンチに横になった。
昔は立ち入り自由だったのだろうか。そんな時代の生徒でなくてよかった。
もし誰でも入れてしまうのならば俺の安眠が妨げられてしまうからな。
……屋上のベンチと聞いて、某伊藤さんと某西園寺さんが出て来てしまうのは病気なのだろうか……
いや、あのシーンは某言葉さんが可哀想だったな。わかる人にしかわからないだろうが。
そんな国民的エ◯ゲのことを考えながら寝ようとした時、スタスタという足音と共に、屋上の扉が開かれた。
誰だ?立ち入り禁止の屋上に無断で立ち入っているやつは?
「おい、ここは立ち入り禁止の屋上だぞ」
「いや、伊吹が言えることじゃないでしょ……」
俺の元へとわざわざ足を運んでくれたのは、真希の友達こと八坂芽衣奈だった。
俺は彼女の方を見ると、彼女の長い髪は風に靡いて、まるで風に煽られる旗のようになっていた。
まぁ、綺麗だったと言うことだ。
「ていうか、よくよく思ったが、お前とか宮風とか美也って屋上に来ても大丈夫なのか?」
そうだ、美也や八坂、宮風は天音ちゃんのように教師公認ではなく所謂、不法侵入のようなものだ。
まぁ、俺もそんなこと言える口ではないんだがな。
俺がそう言うと、八坂は「うーん」と唸りながら考え始めた。
「うーん、まぁ宮風さんは先生にしっかりと許可取ってるみたいだよ」
「ほう、それはよかった──お前今、宮風『は』って言ったな?」
俺がそう言うと、八坂はにこやかに微笑みながら、ベンチに座る俺の方へとじわじわ近づき、目の前で話はじめた。
「バレなきゃ犯罪じゃないんですよ」
「…………」
どっかのニャルラトホテプ星人を彷彿とさせるようなことを八坂は言った。
クソ、今の会話を録音して宇宙CQCにでも突き出しちまえばよかった。
それよりもこいつ、やっぱりこちら側の人間なのだろうか。
そう言った八坂はなぜしたのかわからないがくるりと一回周りながら俺と少し距離をとった。
「そんなことより本題。今日実行委員があるってことはもちろん知ってるよね?」
「知らぬ存ぜぬ初耳だ」
「…………」
キッパリと言い切った俺に、八坂は少し頭を抱え、もう一度俺の方を向き直った。
「てことで、今日は実行委員会だから。どうせ知らないと思ったから来て正解だった」
「だな」
「『だな』じゃないよ!事前にそれぐらい知っといてよね!」
八坂はそう言って、屋上のドアをバタンと閉め、屋上を後にした。
いや、さすが八坂だな。なんだかんだ関わってみて思ったが、バカな子だと思ったら意外と仕事できるのよな。こいつ。正直、俺なんかよりも全然できる。
八坂もいなくなり、今度こそ静かに寝れる……と思ったのも束の間、再び屋上の扉が開けられた。
「ちょっと、ここは立ち入り禁止の屋上ですよ」
「その言葉、そっくりそのままあなたに返すわ」
この凍ついた言葉、先ほどから聞こえていた上品な足音、間違えなく天音ちゃんであった。
俺がもう一度寝ていた体制からベンチに座り直し、天音ちゃんの方を向くと、さっきまで吹いていた暖かい風が、少し冷たくなったような気がした。
なんだよ、松岡修造の対を成す存在かよ。天音ちゃんと松岡修造がいたら悪くない気温になりそうだ。
「で、何しに来たの?」
「分かっているでしょ?いちいち聞かないでくれる?あなたとの会話は極力避けたいの」
なんだかいつにも増して当たりが強いな。
天音ちゃん。もしかして生理?などと、不躾で失礼なことを俺は言わないので、心の中に秘めておくことにした。
本日も、天音ちゃんの要件は変わらないのだろう。
「もう言っても無駄だろうけど。峯岸くん、授業に出なさい」
「あーいずれ出るよ。いずれ」
俺はそんな適当な返事をし、もう一度ベンチに横になった。
全く、教師陣と天音ちゃんはいつになったら俺のことを諦めてくれるのやら。
無理なものは無理だと言うのに。
「ねぇ、峯岸くん。あなたに聞きたいことがあるの」
天音ちゃんが俺に質問だなんて珍しいな。
いつもなんて、質問どころか必要最低限の会話すらできていなかったのに。
俺が天音ちゃんのその質問とやらに興味を示して、天音ちゃんの方を向くと、天音ちゃんは口を開いて話し始めた。
ちょくちょく、これ今の中学生が見てる年代じゃないだろというアニメネタが出てくるというか前から出て来ていますが、ただの「みんなよりも古くてみんなの知らないアニメ見てる俺、カッケー!」とか思っちゃってる厨二病なだけなのでご容赦ください。




