表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
33/40

第31話 宮風陥落作戦にて その八

 ファミレスへと戻ると、店内はガヤガヤと楽しげな声が飛び交い、注文が間に合っていないのか、店員が慌てている様子だった。

 俺は、品物を届けるべく走り回っている店員をヒョイと交わしながら、自席へと戻った。

 自席へと戻った俺は、自分の注文していたハンバーグへと目を向けた。

 目の前にあるハンバーグは、注文が到着した時のように、湯気が立ち上っていなかった。

 クソ……ハンバーグが冷めてやがる……楽しみにしてたのに。


「おかえり〜なんかあったの?」

「いや、なんも」

「え〜絶対なんかあったでしょ。逆に何もないのに呼び出したりとか普通の人はしないし」


 美也が俺の顔を覗き込んで、ニヤニヤとしながら俺を挑発する。

 確かに、だ。普通の人間ならなんの用事もないのに人を呼び出したりなどしない。

 やるならただの面倒くさいやつだ。

 流石にこの言い訳じゃ無理があったか……

 俺はもう気の抜けてしまったメロンソーダを口に含んだ。……あんまり美味しくない……


「で、本当のところはどうなのかな?峯岸くん?」


 宮風から少しばかり小さな怒りを感じる。

 俺はそんな宮風に対し「まぁまぁ」と言って言葉を濁らせ、もう一度フォークとナイフを手に取り、ハンバーグを一口大に切った。

 もう時間が経ってしまい、鉄板も手で触れられるくらいの温度になっていた。

 まぁ仕方のないことだと思い、俺は一口大に切ったハンバーグを口の中へと運んだ。

 うん、先ほどのまでとはいかないが、しっかりとした味付けと、相変わらずの旨みが残っている。実に美味だ。

 さっきから、なんで食レポなんかしてるんだ……?


「ていうか宮風、俺なんかと話すんじゃなくて美也と会話してくれよ」

「それもそうだね。じゃあ美也さん、何か僕に聞きたいこととかない?」


 宮風は、ナチュラルに美也へと話の方向を転換した。

 ていうか、さっきのは流石にあからさま過ぎたか……バレないでくれたらいいんだがな。

 

「え⁉︎あ、その……好きな食べ物とかって……?」


 なんだよその、「初対面の人に質問することがなくなってなんとか絞り出した質問」みたいなのは。 

 いや、今がその質問することがなくなった時なのか。

 だとしたら早過ぎないか?まだ、ファミレス来てから30分経ってねぇぞ。


「好きな食べ物か……うーん悩むね。基本嫌いなものとかもないからね」


 この質問ってそんなに悩むことなのか?偏見だが、この手の質問で悩む奴なんて、大食いのガキ大将ぐらいだぞ。

 ……自分で言ってなんだが、かなりの偏見だな。

 宮風は少し悩んで美也の方を向き直り、再び口を開いた。


「やっぱり、パスタかな。メニューにあったら大体頼んでしまうからね」


 ……なぜだろう。そこはかとく宮風のことをぶん殴りたくなる……

 あのナルシスト感というかなんというか……

 

「そうなんですね!私も好きです!パスタ!」


 美也が宮風の言葉に反応し、両手を合わせながら少し可愛げに返答を返した。

 て、嘘つけぃ。お前パスタなんて食わないだろ。ファミレス行ったらいつも、「パスタなんて全然お腹にたまらないよ〜やっぱりお肉だね、肉肉〜」とか言いながらステーキ頼むだろ。現に今日もそうだし。

 宮風は美也の言う事が本当だと思い込んだのか、「いいよね〜」などと、先ほどよりも気持ちテンション高めに美也との会話を続けた。

 まぁ、これも進歩か。でも、あまりに関係を進め過ぎたら、美也から金をぶん取る機会が少なくなってしまう。

 後1ヶ月は現状維持でもいいぞ。

 

「あ、そういえば。さっき聞きそびれちゃったんですけど、宮風さんって水泳部なんですよね?」

「うん。そうだけど?」

「水泳部の3年生で寺坂伊乃莉てらさかいのりって人知ってますか?」


 美也は優斗にそう聞いた。

 「寺坂伊乃莉」。俺はその名前に聞き覚えがあった。

 彼女は、俺の母親の弟の娘、つまり従兄弟にあたる存在だ。

 昔は、優斗、真希、俺、伊乃莉、美也の5人で仲良く遊んでいたのだが、もう最近は遊ばなくなってしまった。

 別に会えないというわけではないのだが、家の事情というやつだ。

 美也がどうして彼女の名前を出したのか、俺は不思議だった。


「うん、知ってるよ。寺坂先輩だよね。あの寺坂家の」


 宮風はどうやら、伊乃莉のことを知っているようだった。

 それはそうだ、部活も同じで、噂だとかなりの好成績を大会で収めているのだからな。

 

「あ、そうですか。それはそれは……」


 美也はそう言って、再びステーキへと視線を向けた。

 一体なんなんだ?なんで美也は伊乃莉のことを?

 そのまま、特に伊乃莉に関する質問をするわけでもなく、美也は残りわずかのステーキを一口大に切り、口へと運んだ。

 一方、宮風はというと、なんで伊乃莉について聞かれたのかもわからず、ポカンとしていた。

 それもそうだ。突然先輩に関する話題を振られ、何が何だかわからないまま話を切られたのだ。

 まぁそうなるよな。


 その後、天音ちゃんもすぐに戻って来て、特に美也と宮風にはなんの進展も無く、みんな食べ終わって席を立ち上がった。

 本当、ここ最近の俺は、毎週のようにファミレスでこんな無駄な時間を過ごしているのだ。


 今日は流石に人数が多いため、奢りじゃんけんは無しになり、みんな自分の注文したものは自分で払うことにした。

 会計時、俺の番になった時に金額を見て目が飛び出た。


「お会計、5400円です」


 5、5400だと?天音ちゃんの分を含めてもそんなに行くはずがないのだが……

 俺は注文商品を見て、誰が俺に支払いを負担させているのかが一目で分かった。

 Bセット……俺達の中でBセットを頼んでいるのは美也だけだ。……あいつ、俺に支払いを任せて逃げやがったな……

 俺は少し怒りが湧いた。


 仕方がないので、俺は泣く泣く財布の中に入っていた津田梅子一枚と、北里柴三郎一枚をレジの前へと置き、お釣りの600円をもらって店を出た。

 これじゃあグッズどころかライブの入場券すら買えねぇじゃねぇか……

 俺はすっかり薄くなってしまった財布を見ながら感傷に浸り、ガヤガヤと賑わっている店を後にした。

 クソ!俺にはそんなにガヤガヤできる元気はないってのに……

 なんだか、店の中の客から煽られているような気がしてさらに一層悲しくなってしまったのであった。

久々の後書きです。

宮風陥落作戦、思ったよりも長くなりました。

いや、タイトルの割に全然陥落どころか攻め入ってすらいなくね?というのは作者が1番思っていることなのでご容赦ください。

以上、後書きでした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ