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第29話 宮風陥落作戦にて その六

「んーどれにしようかなー」


 ドリンクバーの前で、またもや美也の優柔不断が発揮されていた。

 

「今すぐ取らないならどけよ。俺は決まってんだからさ」

「ちょっと待って!もうすぐ決まりそうだから!」


 なんなんだよ、もう。俺はとっととメロンソーダが取りたいっつうのに……

 すぐに決まるといった美也は、なんだかんだ選び続け、ドリンクバーの前で2分が経過してしまった。

 宮風はというと、「僕は水でいいよ」なんてちょっとキザなことを言って先に帰ってしまっていた。

 

「おい、そろそろ決めろよ。本気で怒るぞ」

「うーん、決めた!」


 美也はやっと決まったようだ。

 だが、なぜかドリンクバーが目の前にあるのにも関わらず、ドリンクバーから離れていってしまった。

 一体どこへ行くのだろうか……

 

「おい、どこいくんだ?」

「やっぱり水にする」


 美也は、ドリンクバーの機械の隣にある、ウォーターサーバーから水を汲んだ。


「…………」


 こんだけドリンクバーの前で待たせたくせに結局は水かよ…………

 本当に俺の時間を返してくれ。

 俺は美也に少しイライラしながらも、ドリンクバーでメロンソーダを注いだ。


「…………なんかまた薄くね?」


 機械から注がれたメロンソーダはどことなく色が薄く、炭酸水に少し緑色がついているだけだった。

 ……また変えてないのかよ。

 前のように、またメロンソーダの原液が入っていないのだろう。本当いい加減にしてほしい。

 まるで貧乏な友達の家に行った時に出てくるカルピスのような薄さじゃないか。

 

 俺は仕方なくその薄いメロンソーダを持って、自席へと戻った。

 

 途中、優斗達の席に目を向けると、何やら楽しそうに話していたので、少し耳を傾けることにした。


「中西さん。まだ決まらないのかしら?」

「すみませんちょっとまだ決まらなくて…………」


 まだ決まってないのかよ。もう優柔不断すぎるだろ……ここまできたら日常生活に支障をきたすレベルだな。


「じゃあ真希!もう私とおんなじやつにしよ!」

「え⁉︎あ、うん……じゃあそうするよ」


 八坂は注文用のタブレットへと手を伸ばし、ポチポチと操作を始めた。

 やっぱり、真希の八坂への態度、少し違和感があるな……最初の時よりも少し距離が遠いというか……


 まぁ気のせいだと思い、俺は自席に戻ることにした。


「あ、美也さんも水にしたんだね」


 俺が席へと戻ると、何やら美也と宮風が会話をしているようだだった。

 とうとう2人きりでも会話ができるようになったのかと感心し、俺は回れ右をしていったんその場から離れることにした。


「そ、そうなんです…………」

 

 美也が返事をすると、2人は緊張のせいか、またもや黙ってしまった。

 おいおい、ダメじゃないかよ。

 このまま放置するのは流石に可哀想なので、やっぱり席へと戻ることにした。

 

「あ、おかえり。峯岸くん」

 

 宮風はにこやかに微笑んだ。なんだか、どことなく女の子と話すときの優斗のような雰囲気を感じられた。

 うぅ、寒気がする。


「帰ってきたぞ。じゃあ早速自己紹介するか」

「うん。わかったお兄ちゃん」


 美也はそう言って、宮風の方を向いた。

 美也と目を合わせた宮風は優しく微笑んだ。う、また寒気が。


「えっと、1年の峯岸美也みねぎしみやです。部活は弓道部に所属してます。よろしくお願いします!」


 なかなか悪くない。いたってシンプルな自己紹介だ。

 ていうか、美也って弓道部だったのか。初めて知ったぞ。

 中学の頃から弓道はやってたけど、今でも続けてるのか。俺なんて、今はスポーツすらしてないのに。とても立派な妹だ。


「よろしく。じゃあ次は僕かな」


 宮風はそう言って、グラスに入った水を一口飲んで、美也の方を向いた。

 宮風がどんな自己紹介をするのか見ものだな。


「えっと、2年の宮風秀斗みやかぜしゅうとです。部活は水泳部に所属してます。よろしくね」


 なんか、宮風の喋り方が女の子を落とす時の優斗そのまんまで吐きそうになってきた。

 宮風って水泳部だったのか。そこまで体格はいい方じゃないし、文芸部とかかと思ってたな。

 

「失礼します。こちらご注文のお品物です〜」


 宮風が話し終わったタイミングで、先ほどの店員さんが料理を運んできた。

 店員さんの手にはにはハンバーグのプレートが両手に一つずつ持たれている。


「こちら『特製抹茶ハンバーグ』です」

 

 店員さんは、俺の目の前に右手に持っていたハンバーグプレートをおいた。

 なんとなく気になって頼んでしまったが……抹茶ハンバーグとは一体どんな味なのだろう……

 見た感じは普通のハンバーグのお肉に抹茶が混ぜられているのか、ところどころ緑がかっていた。

 正直、あまり食欲の湧いてこない見た目だ。

 いや、まだここで判断するのは早い。大抵、こういうのは食べたら意外に美味しいものなのだ。


「ありがとうございます」


 俺は、横に置いてあった入れ物から、フォークとナイフを取り出した。


「じゃあこちらBセットの、お先ステーキになります」

「ありがとうございます!」


 美也は自分の目の前に置かれたステーキにキラキラと目を輝かせている。

 

「お兄ちゃんフォークとナイフ取って」

「はいよ」


 俺は、入れ物から美也の分のフォークとナイフを取り出し、美也へと渡した。


「2人とも、仲がいいんですね」


 宮風が俺たちを見てにこやかに笑っていた。

 そんなに仲が良い方なのか?正直、どこの兄弟も同じようなものだと思うのだが……


「いや、君たち2人はとっても仲が良いよ。羨ましいな、僕も妹がいるけどそんなに仲良くないんだよね」


 宮風に妹とは初耳……というか意外だな。てっきり一人っ子なのかと思っていた。

 

「え⁉︎いや、私がお兄ちゃんと仲が良いなんてそんなの全然ないですよ!もうなんなら仲悪い方です!」


 ……ひどいなお前。少し心にくるぞ、それ。

 俺は、少しシュンとしながらも、注文した抹茶ハンバーグをナイフで一口大に切り、フォークで口へと運んだ。

 おぉ、これはうまい。

 ハンバーグの種に練り込まれた抹茶によって、肉の臭みが消えていてとても食べやすい。

 おまけに、和風だしでの味付けが抹茶ハンバーグと合う。

 それに、後味がすっきり爽快。


「失礼しまーす」


 俺がハンバーグの食レポを1人心の中でやっていると、宮風の元へも料理が運ばれてきた。


「こちらAセットと、Bセットのスープです」


 店員さんが宮風の前にはパスタとサラダを、美也の前にはスープをおいた。


「ありがとうございます」

「あひがふふふごふぁいまふっ」


 宮風が爽やかに、かっこよく御礼を言ったのにも関わらず、美也の口の中には、先ほど食べたステーキがまだ残っていた。


「……(ゴクン)……ありがとうございます!」


 美也は、ステーキを飲み込んで、もう一度御礼を言い直した。

 本当、我が妹ながら恥ずかしいものだ。


「ふふっ……なんか君たち、そっくりだね。それに、とても楽しそう」


 そっくりとはなんだ。失礼な。俺は口に食べ物を含んだ状態で話したりしないぞ。

 俺達がそんなふうに談笑していると、何やら優斗のテーブルの方からこちらへと向かってくる足音が聞こえた。


 


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