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第28話 宮風陥落作戦にて その五

「えっと……じ、実は今日は家の鍵忘れちゃって!仕方なくお兄ちゃんと一緒にきたというかなんというか……」


 美也はあたふたしながら、宮風へと返答を返す。

 それにしても、少しづつ自信を無くすなよ……宮風に嘘だと怪しまれるぞ。

 

「そういうことなんだね」

「はい……」


 そうして、2人はまた黙り始めた。

 仕方がないので、俺は沈黙を破るために2人の前にメニューを差し出した。


「ほら、メニューだ。なんか食べたいのあるか?注文してやる」


 宮風は、メニューをとって注文する品を選び始めた。

 選んでいる間に、俺は3人分のドリンクバーと、自分の品を注文した。

 毎度思うが、ドリンクバーって安いよな。原価で考えたらいくら飲んでも元は取れないが、店で買ったりする飲み物で考えればかなりの破格だ。


「じゃあ僕はこれにしようかな。美也さんは何にする?」


 選び終えた宮風は、美也にサッとメニューを渡した。

 メニューを見て美也は「あーでもない、こーでもない」と、何やら熟考しているようだった。

 そうういえば、美也も真希と同じようにかなりの優柔不断だったな。ちなみに、この優柔不断は父さん譲りだ。

 家族でご飯を食べにいくと、大抵は美也と父さんがずっとメニューを決められずに悩み、姉ちゃんがイライラし、仕舞いには店の中に姉ちゃんの怒号が響き渡る。と言うのがいつもの流れだ。


 3分か4分ほど悩んで、美也はメニューから目線を離し、俺の方を向いた。


「よし!私これにする!お兄ちゃん頼んどいて」

「了解」


 俺は美也と宮風の頼んだ商品を、タブレットで選択して注文した。

 ここで俺は、優斗たちの座る、通路を挟んで向かい側の席の様子が気になって、少し聞き耳を立てることにした。


「私はこれにするわ。中西さん、そろそろ決まったかしら?」


 メニューに手を伸ばし、商品を指差した。

 そして、真希の方に目を向けると、相変わらずの優柔不断ぶりを発揮していた。

 

「あ、ごめんなさい。まだ決まってなくって……先に頼んじゃってください」


 真希は天音ちゃんの方を向いて話した後、またもやメニューの方に目を向けた。

 やっぱり、さっきの「美也は真希と同じくらいの優柔不断」というのは取り消すことにしよう。真希の方が断然に優柔不断だった。


「じゃあ真希、先にドリンクバーとって来るね」

「あ、じゃあ俺も行くよ」


 そう言って、八坂に続いて優斗も立ち上がった。


「え!あ、いや……なんでもない!行こっか!」


 八坂は、緊張してテンパっていたが、なんとか深呼吸して平常心を保った。 

 まぁ良い調子だ。最初に比べたらかなりの進歩だろう。まだほんの1週間ほど前のことだが、家電量販店の時よりも八坂のテンパり具合が確実にマシになっている。

 この調子でこの後も何かと理由をつけて、もっと金をぶん取ってやろう。


「居ても仕方がないから私も行くわ。中西さん、決まったら頼んでおいて」

「…………」


 メニューを見るのに夢中になっていた真希は、横から話しかけていた天音ちゃんに気が付かなかった。

 別に、「真希は天音ちゃんに毒薬を飲まされ、目が覚めたら──」とはならないのでご安心を。


「おーい真希?無視してやるなよ瀬戸さんのこと」

「……⁉︎あ、ごめんなさい気が付かなくて!」

 

 優斗に話しかけられて、やっと気がついた真希は、天音ちゃんに向かって謝った。

 それにしても、真希が敬語を使っているところを見るの、なかなかに新鮮だな。 


「いいのよ、気にしなくて。それより、注文は決まったかしら?」

「まだ決まってなくって……先にドリンクバー取りに行っちゃってください」


 真希は再びメニューへと視線を送り、「Aセットにしようか、Bセットにしようか」などと、独り言をぼやき始めた。

 本当、優柔不断が過ぎる……ちなみに、真希の優柔不断も母親譲りで、サブスクで映画を見ようと悩んでいたら半日過ぎていたという伝説を持っている。

 つまり、真希の完全上位互換だ。絶対に一緒にご飯なんて行きたくないな。


「そう、じゃあ行きましょう」


 天音ちゃんは、八坂と優斗にそう言って、ドリンクバーの方向へと向かっていった。

 まぁ、俺の思っていたよりは荒れてなくて何よりだ。

 さて、本日メインと言っても過言ではない美也、宮風ペアはというと……

 俺は2人の方に視線を向けた。


「……………………」

「……………………」


 一言も発さず、まるで仏像かのように固まってしまっていた。

 それにしても、宮風がここまでのコミュ障だったとはな…………

 いや、コミュ障なんじゃなくて美也が俺の妹だからか。ごめんよ、美也。多分だけれども、俺を経由しないほうが可能性があったかもしれん。


「初対面なんだし、自己紹介でもしたらどうだ?」

 

 ここで、依頼主のためには動かねばならぬと思い、俺はすかさず2人に話題提供をした。

 やはり、初対面といえば自己紹介だ。人と人との関係の始まりは自己紹介からだと言っても過言ではない。


 2人は俺の提案に賛成し、とりあえずドリンクバーを取りにいってから自己紹介をすることにした。

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