第27話 宮風陥落作戦にて その四
「いらっしゃいませ!」
大きな声で、元気に接客するその店員は、いつもの優斗にデレデレな高校生アルバイターだった。
今日も、優斗を見るなり走ってこちらへ来る。
「何名様ですか!」
「7に……」
答えようとした先頭の俺に目もくれず、後ろにいる優斗へと店員は向かっていった。
なんだろう、無性にムカつくな、こいつ。
お店にクレームでも入れてやろうかな。「顔面で客を差別する店員が居ます」って。
「え?あ、7人です……」
まさか自分に来るとは思っていなかった優斗が、戸惑いながらも質問に答える。
「あなた、店員さんにも嫌われているのね」
俺の隣に立っていた天音ちゃんが、小声でそう言う。
やめろよ、気にしないでいるんだから。それに、この店員さんは、優斗の顔面がいいから俺じゃなくて優斗の方に行ったまでだ。俺は嫌われているわけじゃ……
「7名様ですね!4人用のお席しかなくて、別々になってしまうのですが、よろしいでしょうか?」
「はい大丈夫です」
「……チッ」
俺が質問に答えると、あからさまにいやそうな顔をして舌打ちしてきた。
うわぁ、こえぇ。これだから女の人は嫌いだ。
中学の時だって、優斗に近づくために俺を利用しようとした女の頼みを断ったら、さっきまでのかわいらしい雰囲気からは一転して、俺に向かって大声で悪口を言ってきたんだよな。
ほんと、こわいこわい。
「ちょっと、店員としてそのような態度はどうかと思うのだけれど」
俺がこのまま無視して食い下がろうとしていたら、横から天音ちゃんが店員の前に立ちはだかった。
「……!す、すみません……」
店員は、反撃しようかと思ったのか、天音ちゃんを一瞬睨んだがすぐに謝罪をした。
多分、さっきまでの自分の行動を振り返りでもしたのだろう。
でも、しっかりと謝れるだけ良い方だ。
まぁ天音ちゃんのあの剣幕だったら、すぐに折れてしまうのもわからなくはないが。
そう考えると、一瞬でも反撃しようと考えただけすごい方か。いや、別に褒めてるわけではないが。
正直俺は、天音ちゃんの一言にとてもスッキリした。あの店員は、前からあの態度だったからな。
「で、ではこちらへどうぞ……」
店員は、少し気まずそうに、そして、天音ちゃんを怖がりながら、俺達を席へと案内した。
「では、二組に分けて座ってください……」
店員は、早くこの場から去りたいのか、いつもよりも適当気味な接客だった。
何はともかく、この席決めというのはとても重要だ。やはり、俺の立場上は、優斗と八坂を同じテーブルに、美也と宮風を同じテーブルにしなくてはならないというものだ。
俺は半ば強引に、テーブルを分けた。
結局のところ、俺と美也と宮風の3人、天音ちゃんと優斗と真希と八坂の4人というグループ分けになった。
あの3人に天音ちゃんはちょっと怖いが……まぁなんとかしてくれるだろう……多分……
「こ、こんにちは宮風先輩!」
美也が緊張気味に、固まりながら宮風に挨拶をする。
もうちょっと肩の力を抜いてくれた方が楽なんだがな……まるで優斗と2人きりの八坂みたいじゃないか。
八坂のやつ、2人きりじゃなきゃ緊張しないんだけど、2人きりになった時の動揺のしようがそれはそれは滑稽でな。
「初めまして、えっと……美也さん?でいいのかな?」
宮風がにこりと優しい笑みを浮かべ、美也に接する。
なんか、このテーブル気まずいな……娘の結婚相手(この現状なら好きな人)を紹介される時の親ってこんな気持ちなのだろうか。
「は、はぅい!だ、でいじょぶでふ!」
美也は緊張のせいか、滑舌が死んでいた。
かろうじて何を言っているかわかる程度の滑舌で、宮風もそんな美也に向かって苦笑いをしていた。
「そんなに緊張しなくてもいいよ。ほら、肩の力を抜いて」
「はい!」
美也はそう言って、深く深呼吸をして、心を落ち着かせようとした。
数秒して、美也は落ち着いたのか、冷静な表情になっていた。
「テンパっちゃって……すみません先輩……」
「大丈夫、全然気にしてないよ」
宮風は、とても優しく、まるでいい人かのように美也に接した。
人ってこんなに変わるんだな……怖い怖い。俺の時とは天と地の差がある。
「じゃあ俺は注文するから、なんか適当に話しててくれ」
「え⁉︎お兄ちゃんまじ⁉︎」
俺はコクリと頷き、テーブルの横に置いてあった注文用のタブレットに手を伸ばした。
えっとーなになに?おぉ新登場の抹茶ハンバーグか、美味しそうだな。
「「…………」」
2人を見る限り、話すネタがないのか、はたまた、普通に初対面同士というので緊張しているのか、まぁおそらく両方だろう。2人は一向に離そうとしない。
「えっと……美也さんが峯岸くんといるのって珍しいね……き、今日はなんかあったのかな?」
次の瞬間、美也はビクッと宮風の言葉に反応した。
まずいな。正直に話すわけにも行かないし、ここは美也がどうやって濁すか見ものだな。
「え!何かあったかですか⁉︎うーん……」
美也はとてつもなく悩んでいた。少し離れてみてもわかるぐらいだ。
数秒悩んだあとに、実也は口を開いて弁明を始めた。




