表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
24/42

第23話 屋上にて

 時は流れ1週間、俺はその間もなんら変わらない日常を、淡々と送っていた。

 今日も今日とで、屋上でのサボりタイム。今日は程よく暖かくなり始めていて、最高の寝心地だ。

 

「ほんと、今日はこのままずっと寝ていたいな……」

「あら、じゃあ永眠でもさせてあげましょうか?」


 俺が独り言をぼやくと、それに反応するように、声が聞こえてきた。

 このキレのある罵り、そして、声だけでもわかる、俺への曇りのない軽蔑具合。

 そう、何を隠そう我らが氷の神、天音ちゃんだ。


「天音ちゃんの手で永眠なら悪くないな」

「本当に気持ち悪いわねあなたは。同じ人間として恥ずかしいわ」

「俺のことを人間として見てるだなんて……まさか本物の天音ちゃんじゃないな?」


 いつもの天音ちゃんなら「ドブネズミ以下のゴミ」とかは言ってきそうなのに、今日はまだ人間の範囲だ。かなり優しい。

 以前の俺なら、これでも「うわーひでー」とか思ってたけど、もう慣れてしまったな。

 大抵の侮辱、暴言は効きづらい精神になってしまったのだ。

 天音ちゃんの侮辱を浴びせられ続けた俺なら分かる。次は「空気が汚染されてしまう」とかいうんだろ?


「間違えたわ。貴方はドブネズミ以下のゴミだわ。空気が汚染されてしまいそう」


 やはりな。それよりも、やっぱりこれでこそ天音ちゃんだ。

 なんだか、俺はM気質になってしまっているのだろうか。このままでは変態まっしぐらな気がする。


「こりゃ失敬。で、要件は?いつもの?」

「えぇ、そうよ」


 「いつもの」とは、お察しの通り、俺へ授業に出ろというやつだ。


「じゃあ俺もいつもので。答えはNOだ」

「いい加減私のためにも授業に出てはくれないかしら?貴重な休み時間が貴方みたいな『欠陥品』と過ごすだなんていやよ」


 ……欠陥品か、昔にも言われたな、同じことを。もう忘れようとしていたけど、やっぱり思い出してしまうものなんだな。

 俺は一瞬だけ下を向き、もう一度天音ちゃんの方を向きなおった。


「いやー本当にごめんな」

「申し訳ないという気持ちがあるなら出たらどう?」


 天音ちゃんが、柵に寄っ掛かり、頭を抱えてそう言う。


「うーん、天音ちゃんがテストの点数で俺を超えたら出るから頑張って」

「こんなのに腹を立たされるだなんて癪ね」


 「こんなの」と言うのは、俺のことなのか。それとも俺の言った煽りのことなのか。俺のことじゃないと信じよう。

 でも、天音ちゃんの視線を見ると、どう考えても俺のことをガン見してるな。


「まぁ、頑張ってね。天音ちゃん」


 俺が追い討ちをかけると、珍しく天音ちゃんがあからさまにイラついてるのが分かった。

 柵に寄りかかった天音ちゃんは、腕を組み、歯を強く食いしばっていた。


「なんで貴方なんかの成績が良いのかしら。本当、この世の中理不尽ね」


 天音ちゃんは、歯を食いしばる力を弱めて、快晴の、綺麗な空を眺めた。

 本当、顔だけはいいから無駄に映えるな、天音ちゃんは。風に靡く綺麗な黒髪に輝く瞳。

 このままこっそり写真を撮ってどこかに売り払いでもしたら儲けられそうだと思ったが、多分天音ちゃんに俺と買った人間もろとも絞められそうなのでやめておこう。

 そう思いながら、俺はスマホのカメラを起動し、シャッターを切った。


「盗撮よ。今から訴えるわ」

「またまた、ご冗談を……?」


 おっと、本能には抗えないと言うのはこのことか。よく分かったわ。ダメだと言われたらやりたくなるのが日本人の精神ってやつだよな。

 押すなよって言われたら押したくなるよな。でも、押さなかったら怒られるのはなんなんだろうな。


「今回は見逃してあげるから、早く消しなさい」

「ごめんごめん……なんか天音ちゃんが優しい⁉︎」


 俺は、こっそり天音ちゃんの写真を別ファイルに保存して、あたかも消したかのように装った。


「はぁ、貴方、将来犯罪者になりそうね。今ここで未来を潰しておきましょうかしら」

「遠回しに殺害予告するのやめてもらえます?」

「私は未来の地球のことを思ってのことよ。峯岸伊吹という諸悪の根源が消えれば地球は向こう二兆年は安泰ね」


 俺がいなくなることでそんなにえげつない効果があるのかよ。俺は一体何者なんだ?

 ちなみに、俺がいなくなれば地球が救われるとしても、俺は拒否するがな。意地でも逃げ切ってやる。


「じゃあ、私はそろそろ予鈴がなるからおいとまさせてもらうわ」


 天音ちゃんはそう言って、屋上のドアを開け、下の校舎内へと入っていった。

 なんかここ最近、授業に出させるための対話というよりも、ただの雑談になっている気がするのだが……

 まぁいいか。

 俺が昼飯を食べようと、今朝も早起きして作った「伊吹くんの愛情特盛弁当」を食べようとしたとき、また新たな来客が現れた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ