第22話 続・家電量販店にて
「おかえり伊吹。あ、八坂さん見つかったんだね」
「まぁな。案外近くに居たわ」
俺は、ポケットに手を突っ込み、少しカッコつけながらそう言う。
とりあえず、充電器コーナーで充電器を選び、レジへと持っていった。
「じゃあ伊吹、俺エレベーター前で待ってるから」
伊吹はそういって、レジに向かう俺とは別の方向に行った。
って優斗ぉぉぉ!ここは八坂も連れていけよぉ!
ここで無視して「おう」などと言ってしまっては八坂との契約に違反してしまう。
仕方が無いので、俺は優斗も呼び止めることにした。
「な、なぁ優斗。八坂も連れて行ったらどうだ?特に用があるわけでもないし……」
ナイスフォロー、俺。今のは悪く無い判断だったと俺は思う。
さぁ八坂、これで優斗と2人っきりになれるぞ、感謝しろ。
「う、うん。じゃ……じゃあしょ、しょうしゅりゅよ……」
噛み噛みじゃねぇかよ……もう少し落ち着けよ……俺は、緊張で頭が爆発しそうな八坂を見送り、会計を始めた。
「これお願いします……⁉︎」
レジへと行き、会計を済ませようとすると、そこには天音ちゃんの姿があった。
見る感じ、天音ちゃんはここでアルバイトをしているみたいだ。俺は、普段とは違う天音ちゃんの姿を見れて、少し舞い上がっていた。
「天音ちゃん?ここでバイトしてるの?」
「こちら一点で、お会計8万7千円になります。袋はご利用しますか」
「いやいや天音ちゃん、無視しないで?それにそんな高く無いだろ?」
俺を完全にスルーして、淡々と天音ちゃんはレジ打ちをする。
そんなに俺に会いたく無いのか?……いや、絶対にないだろうが照れ隠しという説もありえるか……
「間違えました。お値段、迷惑料も込みで28万円です。早く渋沢栄一を二十八枚置いて即刻立ち去ってください」
天音ちゃんの睨む目がさらに強くなった。そこまで俺のこと嫌いなのかよ……いや、これは照れ隠し、照れ隠し。そう思うだけで気分が軽くー……はならないな。
「袋はつけてくれ。はい正規料金の2800円がないから3000円。レシートはいらないぞ。あとまた来る」
「ありがとうございました。またお越しくださらないでください」
天音ちゃんはそう言って、俺にお釣りの200円と、いらないと言ったはずのレシートを投げつけ、次のお客さんの会計を始めた。
天音ちゃんがいるのか、またからかいにでも来るか。
俺は、優斗と八坂が待っている、エレベーター前へと向かった。
エレベーター前について俺は思った。八坂は優斗としっかり話せているのだろうか。俺はそれが気になって、物陰に隠れることにした。
「「……」」
俺がチラッと見ると、2人して黙って、下を向いていた。
八坂はともかく、優斗。お前はこういうときグイグイいって女の子を気絶させるタイプの人間だろ?なんで黙ってるんだ?
折角なので、もう少し観察を続けることにした。
「あーえっと……そ、そういえば、八坂さんって伊吹と仲良いの?委員会も一緒だし、たまに学校内で話しかけてるのも見かけるし……」
ナイスだ優斗。そうだ、いい調子だ。俺をネタにしたのは少し許せないが。
「え!いや全然全然!伊吹とは仲良くないよ!ハハハ……」
「伊吹ねぇ……」
優斗は少し八坂の言葉に疑問があったようだ。まぁ確かに、まだ会って2日目だというのに、もう名前呼びというのは違和感があるか。
そんな違和感に気づかなかった八坂は、そのまま緊張しているのか、ダンマリを決め込んだ。
これ以上見ていても、何も面白いことが無さそうなので、2人の前に現れることにした。
「会計終わったぞ」
俺はそう言って、高らかに充電器の入った袋を掲げた。
「やっと終わったか、じゃあ帰るとするか」
俺達はそう言って駅へと向かい八坂は俺と優斗とは反対方面の電車へと乗り込んだ。
一体、今日のこれにはなんの成果があったのだろうか。俺が金を無駄にして、要らないものを買っただけじゃないか。クソ、せめてあのとき、咄嗟に充電器って言わなきゃよかった。
俺は貴重な放課後をこんなことのために奪われて、少し腹を立てながら家へと帰った。




