第17話 カラオケにて〈中〉
部屋へと到着した俺達は、真希を初めに、次々と曲を入れていった。
「伊吹、先にドリンクバー取りに行こう」
真希と八坂が曲選択に夢中になっていたとき、優斗に肩を叩かれた。
「今のうちにドリンクバーでも通りに行こうぜ」
優斗にそう言われ、俺達はドリンクバーを取りに行くことにした。
部屋を出て、何を飲もうかと悩みながら歩いていたとき、優斗がそっと口を開いた。
「八坂さんと知り合いみたいだけど、友達……な訳ないか」
友達じゃないって決めつけるなよ。まぁ、確かに友達ではないんだがな。
「お前も知ってるだろ、俺と八坂は運動会実行委員だ。それで今日、打ち合わせなるものをやったんだ」
俺がそういうと、優斗は「なるほど」っと頷いた。
「初対面にしては結構距離近くないか?」
「そうか?そんなことはないと思うけど……」
気がつけば、目の前にドリンクバーがあったので、俺達は各々好きな飲み物をとった。
「やっぱり伊吹はメロンソーダなんだな」
「まぁな、安定のメロンソーダだ。そういう優斗は……」
俺はそう言って、優斗の持っているグラスに視線を向けた。
グラスの中にはコーヒー(ブラック)が入っていた。
……こいつ、カッコつけやがって。
「初めて話す子だし、少しカッコつけようかなって思って」
相変わらずムカつくな……これがどこにでもいるような平凡な俺みたいな男なら、「うわ、コイツイテー」で済んだのに、残念ながら優斗はイケメンなのである。だから、どんなにイタイことを言っても少しカッコよくなってしまうのがさらにイラッとくる。
俺達が部屋に戻ると、すでに真希が一曲目を歌っていた。
「真希お前、八坂もいるんだから初手からマイナーアニメのオープニング入れてくんなよ」
真希が歌っていたのは、もう何十年も前のアニメのオープニングで、そこまで有名でもない、知る人ぞ知るという感じのアニメだ。
「大丈夫だよ峯岸くん。私、真希が楽しそうならそれでいいから!」
感想に入った瞬間、画面をみていた真希がこちらを振り向いた。
「別に何歌ってもいいじゃん。伊吹だって私たちとカラオケ行くと、『何それ?』って感じの曲歌うし」
そんなマイナーな曲を歌ってる気はないんだがな……前に演歌ばっかり歌ってたら、優斗に「俺のおじいちゃんとカラオケいった方が楽しそうだな」とは言われたけど。
「まぁまぁ」
俺と真希の間に、いつも通り優斗が割って入ってきた。中学の時からこんな感じなんだよな。俺と真希が喧嘩して、そこを優斗が仲裁する。
「星川くん!ブラックコーヒー飲んでるの!カッコいい〜」
優斗がコップにはいったコーヒーを口元に持ってくると、それに反応した八坂が声を上げた。
クソ、これじゃあ優斗の思い通りじゃねぇか……
「次、芽衣奈だよ」
歌い終わった真希がそういって、八坂にマイクを手渡した。
そうして、八坂が歌い始めたのはどうやら、今流行りの歌手の歌らしい。
「八坂さん、この曲知ってるんだ。俺も好きなんだよね」
なんか陽キャ同士がわかり合っている裏で、俺と真希のチーム陰キャは「この歌知ってるか?」、「いや、知らない」などと時代に乗り遅れた奴らのようなトークをしていた。
いや、「ような」というか実際に乗り遅れているんだけどな。
「星川くんも知ってるの!私この曲大好きなんだよね!」
間奏に入った時、八坂が飛び跳ねながら優斗にそういった。
少しして、俺はとってきていたメロンソーダがなくなっていたので、取りに行こうとして、席を立ち上がった。
「あ、私も行くから待って!」
八坂が、コップを持ってきて、ドアの方へと向かっていった。
「いいよ、俺が持ってくるから。何飲みたい?」
ここでさらっとこういうことが言える俺、カッケー。
だけど、八坂は優斗と話す時のような感じに顔を赤らめず、「申し訳ないから一緒に行くよ!」といって、俺についてきた。
仕方がないので、俺は八坂と一緒に飲み物を取りに行くべく、部屋のドアを出た。




