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第六章 時を越えた和解
ジュリエットは王宮を去った。
辺境の村に移り住み、孤児達を助ける生活を始める。
誰もが彼女の事を『伝説の悪役令嬢』と呼ぶが、彼女はただ静かな日々を送るだけだった。
あくる日、一人の老人が彼女のもとを訪ねてくる。
白髪で杖をつき、その目に深い知恵が宿している事に気が付いたジュリエットは、老人に尋ねた。
「……貴方は……未来の私ですね?」
老人──アルノーは静かに頷く。
「ああ。俺はようやく気づいた。幸せとは運命を変える事じゃなく、過去を受け入れる事だと」
「王女は……どうなった?」
「彼女は俺の後悔を知って、こう言った。『貴方が英雄になれたのはあの令嬢がいたからよ。だから、ありがとう、って言いたいわ』ってな」
ジュリエットの目に涙が浮かんだ。
「……私は、悪役じゃなかった……」
「いや、お前は悪役だった。 けれど悪役が救いになる事もある。それがこの物語の真実だ」
老人は去り際にこう言い残す。
「ありがとう、ジュリエット。お前が俺を、もう一度英雄にしてくれた」