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第三章 逆説の螺旋
未来のアルノー──つまりジュリエットは、毎日のように過去の自分──現在のアルノーを陥れようとする。
魔道具を盗ませようとたり。
王女との出会いを妨害したり。
陰謀をでっち上げて追放させようとしたりした。
だが奇妙な事に、彼女の悪行は事如くアルノーを助ける結果になる。
魔道具を盗ませようとした時は、その魔道具が盗賊団の襲撃からアルノーを救った。
王女との出会いを妨害しようとした時は、その混乱の中でアルノーは王女を救い、英雄として認められる。
「何故だ……? なぜ俺の邪魔が『アルノー』を助ける……?」
ジュリエットは鏡の前で叫んだ。
「俺は俺を殺しに来たのに……!」
彼の心は二重の苦悩に満ちる。
未来の英雄としての後悔と、過去の自分への複雑な感情。
そしてある夜、彼は夢を見る。
幼いアルノーが村の火事で家族を失い、一人で泣いている夢だった。
「誰か……助けて……」
その声に、ジュリエットは胸を締め付けられる。
……俺はあの時……助けられた。
だから英雄になれたんだ。
でも、今の俺は……その英雄を消そうとしている。