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四話『月英学園七不思議【中】』

 リンネに案内され、正面玄関にやってくるアマネとトウマ。

 中に入ればきれいに手入れされているだろう木製の靴箱が並んでおり、その奥の壁には鏡が取り付けられているのが見えた。


「まずは一つ目。夜に正面玄関の鏡を見ると幽霊が見える」


 用意していた室内靴に履き替え、鏡の前に立つアマネとトウマ。二人は首を傾げながら鏡を検分し始める。


「何の変哲もない鏡っぽいけどなー。アマネはどうよ」

「私も特には。条件を揃えないと現れないタイプかなーって感じ」

「日のあるうちは異常がないということですね。では次に行きましょうか」


 リンネが先導し、三階へとやってくる。


「二つ目と三つ目は同じ、この音楽室で起きるようです。肖像画の目が光った、誰もいないのにピアノの音を聞いた、とありきたりですが」


 アマネは音楽室のドアを開け、中へと入る。

 入ってすぐに見えるのが夜陽国とレフォリア国の音楽を繋いだとされる人物の肖像画で、部屋の中央には立派なピアノが置いてある。


「ここは時間指定とかねぇの?」

「夕方から夜にかけてといったところですね。どうですか?」

「うーん、うっすら怪異っぽい感じがするかなぁ。対処するにしても夜のほうが良さそうかも」


 ピアノの蓋を撫でつつアマネはそう口にする。トウマもそれに賛成らしく頷いていた。


「夜が怪異の領域だしな。そこでぶっ飛ばしたほうが対処しやすいし」

「まあ、そうですね……。けれど、これは夜との差異を見つけるためのものです。どこが変わっているか分かっている方が対処しやすいでしょう?」

「分かってる分かってる。ほら、さっさと確認に行こうぜ」

「うんうん。ほら、次はどこー?」


 話が長くなりそうな、面倒そうな気配を感じたトウマはリンネの背を押して次へ行くように促す。アマネもそれに乗り、次はどこかと問いかけた。


「……四つ目はトイレの四番目の個室に誰かがいる、というものです。これについては一階だの二階だのといろいろな話があるので、おそらく四番目ならどこにでも出るのでは?」

「んじゃ、近くのトイレに行ってみますか」


 ひとまず三階のトイレにやってくる三人。男女ともに個室のあるトイレで、アマネが女子にトウマが男子に向かい、リンネは外で待機することになった。


「四番目~。見た目は普通かも。気配も……あんましないかも」


 ぐるっと個室の中を確認し、アマネはリンネのもとに戻る。トウマもほぼ同時に戻ってきた。


「こっちもあんまりだったな」

「じゃあ次に行きましょうか。五つ目は階段に関するものです」


 そう言ってリンネは三階端の階段へと向かう。そこは屋上に繋がっている階段で、雨の日や風の強い日以外は鍵を開けてあるらしい。


「この屋上に向かう階段の四段目を飛ばすと異なる世界に行く、らしいですよ」

「よくこんなの見つけたな?なんで四段目を飛ばして行こうと思ったんだ?」

「まあ七不思議ってそんなもんだし。ひとまず四段目を飛ばしてみたけど、何にもないねぇ」


 屋上の扉は休校のためか鍵が閉まっているが、渡されている合鍵で開けて扉を開けてみる。

 特に変わりない青空が広がっており、変化はみられないようだ。


「特に異常はないですね……。じゃあ六つ目に行きましょうか」


 鍵を閉め、一階まで階段を降りていく。そこから中庭に出て、端のほうにある四角い建物へと向かう。


「ここが六つ目、開かずの間。他の場所に比べてやけに涼しい、くらいですね。ここに関する話はあまりなくて」

「確かに涼しく感じるけど……空気としてはいい感じじゃない?」

「悪い感じはしねぇな?」

「ここも明るいから何も起きないのでしょうか。では一通り確認して七つ目の話をしましょうか」


 四角い建物の周りをぐるりと確認し、リンネにベンチを勧められて腰を下ろすことにした。アマネとトウマは端に、リンネは真ん中に座り、最後の七不思議について話をする。


「七つ目は徘徊する下半身です。これはあらゆる場所で見かけられていて、特に追いかけられたり攻撃されたりという話はなく、目撃者を気にもとめず歩いている、と」

「それも夕方とか夜のやつ?」

「夕方での目撃例が多いですが、朝や昼の時間帯で一人でいた生徒が足音を聞いたというのもありまして。姿がないので同個体かは明確に判断出来ませんでした」

「まあでも下半身だし、足音なら同個体でいいだろ。で、えーと、それで七不思議がおわりなんだよな?」

「ええ。あとは夜を待つだけですね。では、アマネが言っていたお団子屋で時間を潰しましょうか」

「えっ、やったー!じゃあ早く行こう!リンネが好きそうな味もあったんだよー!」


 ぱっとベンチから立ち上がったアマネがリンネの腕を引っ張る。早く早く、と急かす彼女にリンネはやれやれというように息を吐き出して腰を上げた。

 そうして彼女らは団子屋で時間を潰し、日が完全に落ちてから再び月英学園へとやってきた。


 

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