最後の決着:ファントムの逮捕と世界の調和
その時、要塞の奥から、けたたましいサイレンの音が鳴り響いた。
「警視庁捜査一課だ!全員、手を上げろ!」
冴島率いる捜査部隊が、要塞の奥へと突入してきたのだ。彼らは、響が暴走するエーテル・チェインの力を沈静化させたことで、結界が弱まった隙を突き、ファントムが作り出した要塞の隠し通路を突破してきたのだ。
「冴島警視…!」響は、安堵の表情を見せた。
「ファントム!観念しろ!」冴島は、ファントムに銃口を向けた。
ファントムは、笑った。それは、諦めではなく、狂気に満ちた笑いだった。
「私を捕らえても、この世界の歪みは消えぬ!いつか、この世界は再び破滅に向かうだろう!その時、お前たちは…私の正しさを思い知るのだ!」
彼は、響が「月光の山水画」を抱きしめているのを見て、狂喜した。
「ならば…この私を逮捕すればいい!だが、あの怪盗も、ここで全てを奪い取った犯罪者だ!捕らえるのなら、彼も共に捕らえよ!」
ファントムの言葉に、冴島は一瞬、迷いの表情を見せた。しかし、彼はすぐに表情を引き締めた。
「その裁きは、我々が下す。だが、お前が引き起こした混乱は、決して許されるものではない」
冴島は、スネークとファントムに手錠をかけた。彼らは、抵抗することなく、警官に連行されていった。ファントムは、最後に響を見て、不気味な笑みを浮かべた。
「お前は、この重荷から逃れられぬ…月森響…」
ファントムの言葉は、響の心に、深く刻まれた。だが、彼の心には、もはや迷いはなかった。
「月光の山水画」は、響の腕の中で、静かに、そして温かく輝いていた。
数日後。
世界各地では、未曾有の自然災害と混乱から、奇跡的な回復を遂げたというニュースが報じられた。専門家たちは、その原因を究明しようとするが、科学的な説明はつかなかった。
新聞の一面には、「《アークス》、世界の危機を救う!?謎の災害沈静化と、ファントム逮捕の関連性」という記事が踊っていた。世間は、《アークス》の存在を、もはや「義賊」としてだけでなく、「世界の守護者」として認識し始めていた。
月光庵のアトリエで、響は「月光の山水画」を、元あった場所へと丁寧に飾った。絵画は、これまで以上に美しく、そして温かい光を放っている。
(この力が…世界の調和を保つためのもの…)
響は、その絵画を見つめながら、改めて自らの使命の重さを噛み締めた。彼は、もう孤独ではなかった。祖父の遺志を受け継ぎ、世界の均衡を守る者として、彼はこれからも「アークス」として、見えない脅威と戦い続けるだろう。それは、決して派手な戦いではないかもしれない。だが、彼は、この力を正しく使い、世界が平和と調和を保てるよう、静かに見守り続けることを誓った。
彼の戦いは、まだ終わらない。だが、この日、彼は真の「世界の調和」の番人となったのだ。




