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スネークの本格的な反撃と罠:闇の術師とカウンター魔法

スネークは、これまでの《アークス》の犯行パターンを徹底的に分析した結果、次に狙われる可能性が高い美術品を絞り込んだ。それは、大手IT企業「サイバーコネクト」の創業者である神崎 悟が所有する、「混沌の砂時計」という古代メソポタミア文明の遺物だった。この砂時計は、時間を操る力を秘めているとされ、神崎はそれを詐欺まがいの手法で手に入れ、会社の事業拡大に利用してきたと噂されていた。


「神崎は、この砂時計の力で、株価操作や競合他社の情報抜き取りを行ってきたと見られている。つまり、これは《アークス》のターゲットにうってつけだ」


スネークは、リリーに指示を出す。


「リリー、神崎に接触しろ。警備を請け負うだけでなく、彼がこの砂時計を『エーテル・チェイン』のピースとして認識していることを悟らせるな。そして、我々の『特別セキュリティチーム』を金庫室に配置する」


今回のスネークの作戦は、これまでの比ではない。彼は、「シャドウ・オークション」が裏で抱える「術師」の存在を初めて作戦に組み込んだ。彼ら術師は、エーテルの真の力を理解しているわけではないが、古の秘術や呪術を操り、エーテルを模倣した「擬似的な魔法」や、物理法則を歪めるような現象を引き起こすことができる。


「術師よ。お前たちの力で、あの怪盗を捕らえる。これが、我々シャドウ・オークションの総力を挙げた罠だ」


スネークは、金庫室の警備に、自身の精鋭部隊に加え、「シャドウ・オークション」に仕える二人の術師、闇を操る「ナイトメア」と、精神を惑わす「サイレン」を配置した。彼らは、最新のテクノロジーと融合した形で、アークスを迎え撃つための罠を仕掛けていた。


盗難決行の夜。 神崎悟の超高層ビルの最上階、社長室の奥に設けられた厳重な金庫室。そこには、「混沌の砂時計」が、分厚い強化ガラスケースに収められていた。周囲には、過去の《アークス》の魔法に対応するための最新鋭のセンサーと、物理的な防御壁が幾重にも張り巡らされている。


金庫室の扉前には、神崎悟、彼の秘書、そして冴島漣警視、高橋刑事、そして怪しげな雰囲気を纏うスネークと、彼が率いる「特殊警備顧問チーム」が控えていた。冴島は、スネークが今回の警備に、これまでとは異なる「何か」を導入していることを直感的に感じていた。彼のチームの警官たちの中にも、どこか不自然な緊張感が漂っている。


「今回の警備は完璧です、警視。あの怪盗も、今回は手も足も出まい」


スネークが、冷ややかな声で冴島に語りかけた。彼の言葉には、以前の敗北の悔しさよりも、確かな自信が漲っていた。


午前0時。


その瞬間、金庫室の室内が、急激に冷え込んだ。温度センサーが異常値を示し、警備員たちが戸惑いの表情を見せる。


「なんだ…この寒気は…!?」神崎が身震いした。


その直後、金庫室内の監視カメラの映像が、激しく乱れ始めた。まるで、数本の釘で引っ掻いたかのように、画面全体に黒い線が走り、映像が断続的に途切れる。


「カメラが…!何が起きている!?」高橋が叫んだ。


これは、術師「ナイトメア」が発動させた「闇のカーテン」というカウンター魔法だった。周囲のエーテルを吸収し、光と電磁波を歪めることで、視覚と電子機器を一時的に麻痺させる効果がある。


「電磁波撹乱装置を最大出力にしろ!どんな魔法も、物理的な力の前には無力だ!」スネークが叫ぶ。 しかし、電磁波撹乱装置が作動しても、映像の乱れは収まらない。それどころか、空間全体が、まるで墨を流したかのように、じわりと暗く、濃密な闇に包まれていく。


「なっ…何も見えない!」警備員たちが戸惑い、銃を構える。


その闇の中で、微かな「カチャリ…カチャリ…」という、歯車の回るような音が響いてきた。それは、「混沌の砂時計」が収められたケースのロックが、静かに解除されていく音だった。


「これは…幻覚ではない!何かが、本当に中にいる!」冴島は叫んだ。彼は、自身の空間認識能力を最大まで研ぎ澄ませた。闇の中の、わずかなエーテルの波動を感知しようと試みる。


その時、闇の中で、複数の影が、うごめき始めた。それは、警備員と同じ制服を纏った、しかし表情のない「人影」だった。


「おい!そこに誰かいるぞ!」警備員の一人が叫び、銃を構える。


これは、術師「サイレン」が作り出した、「精神の幻影サイキック・イリュージョン」だった。対象の脳に直接働きかけ、不安や恐怖を増幅させ、存在しない幻影を見せる。警備員たちは、まるで自分たちの仲間が、突如として敵になったかのように見え、互いに銃を向け合う寸前だった。


「待て!それは幻覚だ!攻撃するな!」冴島が叫ぶが、警備員たちの耳には届かない。

その混乱の中、金庫室の中央、砂時計が置かれたケースの真上に、一瞬、透明な陽炎が揺らめいた。その揺らめきは、まるで光を吸収するかのように、周囲の闇を一層深く見せた。


そして、その揺らめきが収まった時、「混沌の砂時計」は、忽然と姿を消していた。


「消えた…!」神崎が絶叫した。


「馬鹿な…!『闇のカーテン』の中で…どうやって…!」スネークは、初めて明確な動揺を露わにした。彼の計算は、完全に狂っていた。術師のカウンター魔法は、確かに《アークス》の視覚と電子機器を封じたはずだ。だが、その闇の中で、奴は完璧に仕事をやり遂げた。


「警視!足元に何か…!」高橋刑事が、闇の中で何かを見つけた。


冴島は、足元を照らした。そこには、壊れた腕時計の歯車がいくつか散らばっていた。そして、その歯車の隙間には、微かに光る砂粒が付着していた。


「これは…!」


冴島は、その砂粒に、かすかなエーテルの波動を感じ取った。それは、時間と空間を超越するような、奇妙な感覚だった。そして、彼の空間認識能力が、その砂粒から、金庫室の壁の、最も厚い部分に、極めて微細な「亀裂」が走っていることを感知した。


「高橋!この壁の亀裂を調べろ!」冴島は指示を出す。 スネークは、その光景を呆然と見ていた。《アークス》は、彼が仕掛けた「闇のカーテン」の中で、時間と空間を操り、精密に金庫のロックを解除し、そして、彼が最も警戒したはずの金庫室の「壁」に、新たな突破口を開いたのだ。それは、まさに彼が仕掛けたカウンター魔法を逆手に取った、「闇の中の奇襲」だった。


響は、術師のカウンター魔法によって視界と電子機器が封じられた闇の中で、自身の進化させた空間認識能力と、新たに手に入れた「時間の操作(基礎)」の魔法を駆使した。彼は、時間の流れをわずかに遅らせることで、センサーの隙間を縫い、金庫のロックを瞬時に解除した。そして、美術品を手に、金庫室の壁に、時間を凝縮させた極めて小さな「亀裂」を生み出し、そこから脱出したのだ。あの歯車は、彼の魔法の過程で生じた、時間の歪みの痕跡だった。


翌朝、神崎悟は、不正な株価操作、インサイダー取引、そして顧客情報の不正利用の容疑で逮捕された。

冴島たちが壁の亀裂から発見したのは、神崎が不正に会社の資金を流用し、個人的な目的で巨額の美術品を買い漁っていたことを示す秘密のデータサーバーだった。そのサーバーは、まるで《アークス》が設置したかのように、警察が「偶然」見つけることができるような場所に、巧妙に隠されていたのだ。


「一体なぜ…!このサーバーは、完璧に隠されていたはずだ!」


逮捕された神崎は、警察の取り調べに対し、激しく動揺していた。


数日後、「混沌の砂時計」は、古代メソポタミア文明を研究する国際的な学術機関の、厳重な保管庫に、匿名で届けられているのが発見された。研究員たちは、失われたはずの砂時計の帰還に歓喜し、その歴史的意義を世界に発表した。


今回の事件は、これまでの《アークス》の事件の中でも、最も強烈なインパクトを世間に与えた。


テレビのニュース番組:「今回の《アークス》の犯行は、もはや魔法そのもの!闇の中で消え去った『混沌の砂時計』の謎に、専門家も困惑!警察の捜査は限界か!?」


コメンテーターG(ミステリー作家):「これは、推理小説の範疇を完全に超えています。彼の手口は、物理学を超越しているとしか言いようがない。まるで、時間や空間を操っているかのように…」


SNSの反応:

•「《アークス》、ついに術師まで倒したのか!?マジで神か?」

•「闇の中で消えるとか、もうホラー映画だよ」

•「警察、本当に頑張れよ…って言いたいけど、アークス強すぎ」

•「神崎逮捕!この砂時計が、またも悪を暴いた!」

•「アークスをアニメ化しろ!これは絶対人気出る!」

世間は、《アークス》の存在を完全に「超常的」なものとして認識し、彼の行動は、もはや「義賊」の枠を超え、「伝説」として語られ始めていた。


新聞各社も、一面でこの事件を報じた。

•大手一般紙『朝日新聞』:「《アークス》、闇を操る術師を翻弄!『混沌の砂時計』盗難で国際的詐欺師を逮捕」

•科学専門誌『SCIENCE FRONTIER』:「《アークス》の不可解な能力を科学で解明せよ!『時間の遅延』を可能にする新物理法則の可能性」

•週刊誌『月刊不思議現象』:「【衝撃】《アークス》の正体は時空を操る者!?古代文明の秘宝と謎の力が完全合致!」


スネークは、今回の敗北に、初めて明確な「恐怖」を覚えた。彼の科学的な分析も、裏社会の術師の擬似的な魔法も、《アークス》の能力の前には、まるで無力だった。


「一体、奴は何者なのだ…!私の理解を超えている…!」


彼は、自身が敗北したことを認めたくなかった。だが、目の前で起こったことは、彼の合理的な思考を完全に破壊していた。


冴島は、自身のデスクで、今回の事件の報告書と、新たに発見された「時間の歪み」の痕跡に関する鑑識の報告書を見比べていた。彼が壁の亀裂から発見したカメラと、あの「カシャ…」というシャッター音。そして、現場に残された壊れた腕時計の歯車と、かすかに光る砂粒。


(彼は…私に、この『時間』という新たな要素を伝えようとしているのか…)


冴島は、自身の中に芽生え始めた「エーテル・チェイン」の理論と、《アークス》の「共闘」の萌芽が、新たな段階に入ったことを感じていた。彼は、法を守る刑事でありながらも、《アークス》の行動によってもたらされる「正義」の結果に、内心で深く揺さぶられていた。


彼は、もはや《アークス》を単なる犯罪者として追うのではなく、彼が何を伝えようとしているのか、そして、彼の真の目的が何なのかを理解するために、その謎を追い続けることを決意していた。この戦いは、もはや警察対怪盗という単純な構図ではなく、闇の組織「シャドウ・オークション」をも巻き込んだ、壮大な「エーテル・チェイン」を巡る戦いへと変貌を遂げていたのだ。



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