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薬禍  作者: 大橋博倖
4/8

第4話 2030


「MKウルトラ計画」

 死角から強烈なフックが滑り込んで来た。同僚がフリックし視界に差し込む。

「洗脳、ですか」

 常套手段だよ、と男の口調は事務的なそれ。

「昨今の、AIがAIを使役するスマートデジットとは凡庸な、枯れ果てた、ね」

 傍らのモニタでは犯人、現行犯射殺、つまり被害者が常に変わらぬ情熱的な口調で語り続けていた。

 プエルトリカン、プアサウス。

 彼が主張する処に因ると、現在の海洋、水質汚染はかなり深刻である、らしい。

 つまり薬害なのだと。


 薬とは、毒である。


 それは副作用、と呼称される。

 都合の為の不都合。

 だがそれも服用者にとっては、自己責任ではある。

 が。


 薬は最終的には排出される。


 海に流れ、蒸散し舞い上がり、大地に振り撒かれ、また海に戻る。


 それは1年で、10年で、100年で、地球全土で、いったい何トンの散布となるのか。


 永年メキシコ湾で代々漁業に従事してきた彼の実家は、廃業に至ったのだと、養殖ではない、野生のサカナは最早生物濃縮でクスリ漬け、商品にならないのだ、と。


 現実のデータは少し異なる。

 彼の実家は裕福な網本、大富豪で、彼は放蕩息子の成れの果ての北米に巣くうヤクの売人。

 これは天誅だと画面の彼は息まいている。

 しかして、襲撃対象となったのは、全米ライフル協会であった。


 総てがちぐはぐ、しかし演出されたものであるなら道理。


 世界の「抗生物質汚染」、今すぐ対策を、最新研究

72カ国91河川の6割以上で検出、基準値の300倍超の場所も

2019.05.31


 ドラッグが一大産業である事、その発言力の絶大に異論は無い。


「反対物は反対物を治療する」

 ディープスロートの口許が再び猛禽のそれを真似た。

 事件の前年、薬品業界は自然保護団体から猛烈な批難、薬は患者も地球も蝕む、という、不都合過ぎる真実で小突きまわされ閉口していた。

 そう、銃規制運動と時を同じくして。

 そして、不幸にも、薬禍撲滅運動の指導者も乱射事件の犠牲者となっている。

「銃乱射事件の現行犯、狂人の戯言、劇薬で以って事実を捻じ曲げようと」

「ノーコメント」


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