ねえ、知ってる?
「ねえ、知ってる?」
ふいに僕の耳に聞こえてきた。
「女子高生が行方不明になったって」
僕の横を通り過ぎていく女の子たち。
「もう2週間も連絡つかないって」
「家を出たまま帰らない」
また別の人の声で聞こえてくる。
「何度連絡をとって、でも返事がなくて」
「諦めらなくて、何度も」
「追い詰められてるんじゃないかって」
また別な人の声で。
「事件?家出?もしかして自殺?」
僕とすれ違う人達の声が次々と聞こえてくる。
行方不明になっていると言われてる女子高生達を僕は知っている。
おとなしそうな子達だった。
挨拶すると少しはにかみながら挨拶を返してくれる笑顔を覚えてる。
「その女子高生は仲良くていつも一緒だった」
「2人で出掛けて帰らない」
「悩んでるみたいだった」
「2人で泣いてたって」
行方不明になっていると言われて教室に入っても聞こえてくる。
「諦められない」
「フラれたって」
授業中でも聞こえてくる。
僕は思わず耳を塞いだ。
あきらかにおかしい。
この話は僕にだけ聞こえてくるらしい。
だって、授業中だから皆んな口を閉じてるのに聞こえてくるのだから。
「あの町はずれの空き家の方に歩いて行った」
「誰かに呼び出されたのか、誰かを呼び出したのか」
「それっきり・・」
僕はいてもたっても居られなくなって授業が終わるとその空き家に向かった。
確かめなければ、僕にだけ届くメッセージ。
じゃなければ永遠にこの噂話は永遠に終わらなそうに思えた。
空き家は長年手入れもされずに鬱蒼と雑草が覆いつくしていた。
家の周りをぐるりと回った。
別に誰かいる気配はない。
家の裏手に周る。
一部違和感のある場所、その部分だけ雑草がなく少し土が盛り上がっている。
僕は辺りを見渡し手頃な木の枝を見つけてその場に立った。
その土の部分に木の枝をグッと刺し入れた。
ずずっと枝が土の中に入っていく。
でもある程度の深さになると刺せなくなった。
僕はホッとした。
ここに、確かにある。
枝を抜こうとした時
「ねぇ、知ってる?」
耳元で女の子の声が聞こえた。
その声は僕の後ろで
「私達はここに埋められたの」
背中に覆い被さるように重みがかかる。
「あ・な・た・に」
悲鳴の出そうになった僕の口を冷たい手が塞ぐ。
そして足元の土の中から2本の手が伸びてきて僕の足を掴んだ。
「もう、これで、私達は、一緒よ」
女子高生2人の声が重なり僕に告げる。
凄い力で僕は土の中に飲み込まれた。
「ねえ、知ってる?あの高校で女の子2人と男の子が行方不明になったんだって!」
「え?本当に?初めて聞いた!」