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じいさんと、りんご畑  作者: 糸東 甚九郎(しとう じんくろう)
9/11

● じいちゃんの料理

「ふぉふぉふぉ。ほいほい、できたぞぃ。夕食にしようー」


 今日はお姉ちゃんが夕食を作るはずだったんだけど、研究室のみんなとコンパになったらしいので、代わりにじいちゃんが夕食を作ってくれた。


「わぁ、おいしそーぉ! じいちゃん、これ、何の魚?」

「ふぉふぉふぉ。鯉じゃよ。この辺では、鯉をよく食べるんだぞぃ」

「え、鯉? わたし、初めてだなぁ」

「そうかの? 昔、うちへ泊まりに来た時、出してあげたことがあったと思うぞぃ?」

「え、そう? うーん。・・・・・・何だかわからずに食べてたのかもー」

「ふぉふぉふぉ。まぁ、ええよ。食べてみぃ。わしゃ、昔からこの鯉の味噌煮込みが好きでの」


 じいちゃんは鍋から丸皿へ、鯉の煮込みをよそってくれた。

 お皿から味噌の香りが、ふわりと立ちのぼる。ゴボウや白菜も、よく煮込まれている。


「あと、みさき、これも盛りつけてくれんかの」

「なにこれ? だいぶワイルド感のあるこんにゃくだねー」

「ふぉふぉふぉ。わしが作った、自家製のこんにゃくじゃよ。うまいぞぃ」

「え! じいちゃん、こんにゃくまで作れるの!」

「りんご畑の向こうに、小さな畑があるでな。そこに、少しだけだが野菜や根菜を栽培しとるんだぞぃ。家で食べるためだけの量じゃがのぉ」


 するとじいちゃんは、台所の奥にある戸棚から、丸く大きなイモを持ってきた。


「ほれ。これが、こんにゃく芋だぞぃ」

「え! 大きいねぇ! 里芋・・・・・・の大きいやつみたい」

「同じ仲間だからのぉ。この芋は、そのままでは食べられん。摺りおろし、お湯を加えて『のりかき』という練り上げを何度もやり、貝殻を焼いた粉を加え、また練り上げて、また固めて・・・・・・」

「た、大変なんだね。買ってきた方が早いのに、じいちゃんは、どうしてそこまでやるの?」

「ふぉふぉふぉ。ええか、みさき? 今は何でも好きな時にモノが手に入る時代。じゃが、わしらは忘れちゃいかんことがあるぞぃ。楽して何でも手に入れようとしちゃいかん。楽するのは一時は良かれど悪しとなる。苦労してこそ他人の苦労もわかり、感謝する心が自然と芽生えるものぞぃ。りんごを育てるのも同じ。忘れちゃならんことを忘れると、神様のバチが当たってしまうからのぉ」


 ニコニコ笑いながら、じいちゃんはわたしにそう話してくれた。

 じいちゃんが手間暇かけて作ってくれた夕食は、どれも、涙が出るほど美味しいものだった。


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― 新着の感想 ―
コンニャクは手間掛かりそうだな。テレビでしか見た事ないけど。
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