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じいさんと、りんご畑  作者: 糸東 甚九郎(しとう じんくろう)
7/11

● りんごのきもち

「じいちゃん。それ、何してるの?」

「んー?」


 じいちゃんは、太さの異なるロープをりんごの枝に結び、そこへ支柱を立てている。


「ふぉふぉふぉ。こりゃあな、大変重要な作業なんだぞぃ」

「重要な・・・・・・作業?」


 そこへ、大きな剪定ばさみを肩に担いだ、作業着姿のお姉ちゃんがやってきた。


「枝の誘引(ゆういん)だよ、弥咲」

「ゆういん?」

「そっ。りんごの実が大きくなって、重みが増してくると、枝がぐにゃーって曲がっちゃうことがあるでしょ? それをそのままにしてたら、どうなる?」

「どうなる? ・・・・・・あ、そうか。それで枝が折れたりして、実にも樹にもよくないんだ」

「ご名答ー。そういうこと」

「ふぉふぉふぉ。つきこも、ここへ来た初めの年、みさきと同じ事を聞いてきたのぉ」


 じいちゃんはニコニコして喋りながらも、着々と作業を進めている。


「枝が垂れるとりんごに日当たりが悪くなって、実の善し悪しに大きく差が出てのぉ。最悪、幹から枝がばっきりと折れ裂けちまうこともあるんだぞぃ。だから、こうして、支柱を立てて枝をうまい具合に誘引してやる必要があるんだぞぃ」

「そうなんだぁ。それで、支柱も・・・・・・。確かに、これはとっても大切な作業なんだね」

「弥咲。その樹は大きくてじいちゃん一人じゃ大変だから、そっちから引いてあげて」

「う、うん!」

「ふぉふぉふぉ。じゃあ、こっちからロープを投げるからの。受け取ったら枝に絡めて縛りつけてから、ゆっくり引くんだぞぃ?」

「わ、わかった。・・・・・・よし! やってみる!」



 ナカネ果樹農園は、従業員を雇っていない。

 今でこそお姉ちゃんとわたしがいるけど、基本的にじいちゃんは毎年一人でこれをやってきた。それを思うと、「尊敬」の一言しか出てこない。すごいよ、じいちゃん。


「はぁ、はぁ。・・・・・・さすがだね、じいちゃんは。昔からこれをずっと続けてきたなんてさ」


 するとじいちゃんは、ニコニコ笑って「りんごの気持ちを考えるとのぉ」と、優しく言った。


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― 新着の感想 ―
パワフルじいちゃん。 こういうじいちゃんはいつまでも元気でいてほしい。
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