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じいさんと、りんご畑  作者: 糸東 甚九郎(しとう じんくろう)
5/11

● 夏休みの宿題じゃないのよ

 陽射しがものすごく、強い。

 平地よりも涼しいと言われている長野の高原地帯でも、暑いもんは暑いよね。


「弥咲ー? 今日もアレの確認、おねがいねー」


 お姉ちゃんから依頼された「アレ」の確認をしに、わたしは今日もりんご畑を歩く。

 白い虫取り網と、じいちゃんが作った竹カゴを持って。

 りんごの樹には、袋を被せた実がいくつもついている。深緑色の中にうっすらとした緑白さを含んだ葉っぱも、茂っている。

 その合間に、アレは潜んでいた。


「あ! いたー。・・・・・・ごめんねぇ。君たちのオヤツじゃないのよ、このりんご」


 わたしは、虫取り網を「えいっ」と振った。

 白い網の中に、赤褐色のものが、もそもそと動いている。


「夏の定番、カブトムシ・・・・・・。子供には人気でも、りんご畑では、ねぇ・・・・・・」


 立派なツノを、にゅんと反り立たせたカブトムシの雄。

 じいちゃんが言ってたんだけど、カブトムシだのカナブンだのの甲虫類は、果物の汁を吸うから果樹園では招かれざるお客さんなんだって。

 小さい頃、わたしやお姉ちゃんはこのりんご畑で、目を輝かせながら喜んでカブトムシ採りをしたことがあるの。信じられないくらい、たくさんいたっけ。

 みんな、じいちゃんの作ったりんごの香りに、寄ってきてたんだね。



「今日も、たくさん来てたなぁ」


 数えると、竹カゴの中には雄雌合わせてカブトムシが二十匹。ついでに緑色のカナブンが三匹。


「やったね、弥咲! 今日は二十匹オーバーだねっ!」


 お姉ちゃんはここ最近、わたしが捕まえたカブトムシ類を受け取り、上機嫌で大学へ行く。夏休み期間なんだけどなぁ。


「お姉ちゃん? 聞きたいんだけど、それ、いつもどうしてるの? 研究に使ってる、とか?」

「そんな小学生の自由研究みないなことはしないよ。・・・・・・フツーに仕分けて、学内で売ってるのよ。人気あるんだよ、うちの畑のカブトムシ! 野山の恵みで、お小遣い稼ぎってやつかなー?」

「お、お小遣い稼ぎぃ?」


 商魂逞しいというか何というか。お姉ちゃんの生きる力は、カブトムシにも負けてないみたい。


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― 新着の感想 ―
妹「労力に対して何らかの支払いがあってもいいんじゃないかなあ?」 姉「う~ん………それじゃTUL○Y'Sのコーヒーに…………よし、持ってけ泥棒、清水の舞台から飛び降りる気持ちでサンドイッチもつけちゃう…
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