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じいさんと、りんご畑  作者: 糸東 甚九郎(しとう じんくろう)
4/11

● キャリアの差

「じいちゃん、これが摘んじゃっていいやつなんだよね? どんどん、摘んじゃうね!」

「ん? あー、そうそう。だが減らしすぎも良くないぞぃ。わかんなかったら、つきこに聞けー」

「わかったー」


 涼やかな初夏の風が吹く、じいちゃんのりんご畑。

 この時期は、より品質の良い大きなりんごが実るよう、実になる花芽を間引く作業をするんだ。

 昔、じいちゃんちに遊びに来た際、この作業をここで見てた覚えがある。今はそれを、わたしが同じようにやっているの。

 やってみると、これがなかなか大変。小さなりんご畑だけど、花芽の数は一本の樹で膨大な量。

 それを選別しながら、一つずつ手作業で間引くの。多すぎてもダメだし、少なくしすぎもダメ。

 これは、長年この作業をしている人にしかわからないことがたくさんあるね。お姉ちゃんは四シーズン目の経験だからか、けっこう目を利かせてサクサク進めてる。


「弥咲ーっ? どーお? すすんでるー?」

「う、うん。なんとかー」

「葉っぱもうまく残すんだよ? 一つのりんごに対して、四十から五十枚の葉っぱが必要だよ」

「わ、わかった!」


 お姉ちゃんに教わりながら、わたしは何とか作業を進める。じいちゃんは、隣の列からニコニコした顔を見せてるけど、お姉ちゃんの倍の数をやり終えてる。さすが、手慣れた作業に無駄が無いってことなんだろうなぁ。

 わたしはまだ、お姉ちゃんの半分にも満たない数しか、終わっていないしさ。


「り、りんご一つ育てるのにも・・・・・・すごい細かな作業があるんだね、お姉ちゃん」

「そうよー。ばあちゃんが生きてた頃は、これをじいちゃんは二人でやってたんだろうけどさ。今は一人だもん。少しでも、あたしたちが手伝って、身体の負担を減らしてあげないとさー・・・・・・」

「そ、そうだねー」

「ふぁふぁふぁふぁ。優しいのぉ、つきこも、みさきも。心から、感謝しとるぞぃ」


 じいちゃんは、いつの間にか休憩に入っていた。わたしたちがまだ一列分の間引きを終えていないのに、もう、じいちゃんは二列分を終わらせ、丸太イスに座ってカップ酒を飲んでいる。


「お、お姉ちゃん・・・・・・。すごいね、じいちゃん。あの余裕っぷりは・・・・・・」

「当たり前だよ。じいちゃんはこの道六十年の超ベテランだよ? キャリアが雲泥の差なんだよ」


 お姉ちゃんはにこっと笑い、どこか誇らしげに、そう言った。


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― 新着の感想 ―
間引きは大切。 昔は間引かなくてもその分、栄養をあげてたらいいんじゃないのか、と思ったけどそんな事はなかった!
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