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じいさんと、りんご畑  作者: 糸東 甚九郎(しとう じんくろう)
3/11

● もらってきた草花

「見て、じいちゃん」

「ん? なんじゃい、この草は? 白い花のフウロソウかの?」

「ううん。その仲間だけど、ペラルゴニウムっていうお花だよ。今日、大学でもらってきたの」

「ぺらる・・・・・・? なんだかよく舌が回らん名前だのーぉ。・・・・・・でも、なかなかきれいだの」

「でしょ? でね、まだこの花には秘密があって!」

「なんぞぃ?」

「葉っぱ、軽く揉んでみて?」

「んー? こうかの? ・・・・・・。・・・・・・お? こりゃあ、りんごみたいな香りがするぞぃ!」

「そうなのぉ! だからね、じいちゃんも気に入ると思って、もらってきたんだぁ!」

「ふぉふぉふぉふぉふぉ。そうか、そうか。みさきは、気が利くのぉ」

「へへへー。良かったぁ」

「こんな草があるんだのぉ。わしゃ、最近の新しい草花は、ぜーんぜんわからんでな」


 じいちゃんは、ペラルゴニウムの鉢を大事そうに持ち、玄関横の靴棚の上へ置いた。


「ここなら、屋内だが日当たりもいいぞぃ」

「あ、いいね! そこだと毎日、よく見られるもんね!」

「ふぉふぉふぉふぉ」


 じいちゃんの白い髭が、もふもふと動いている。喜んでるんだね、じいちゃん。


「みさき、大学は慣れたかぃ?」

「うん。友達も増えたし、実習や演習も、やり方のコツがわかってきたの」

「そうか、そうかー。・・・・・・初めは疲れるだろうが、最初だけぞぃ。何事も、段階経ずして功成らず。一つずつ学び、一つずつゆっくり積み上げ、身に覚えさせればいいぞぃ」

「・・・・・・そうだね。わたし頑張るよ、じいちゃん」

「みさきは、ずく(やる気)ある娘だからのぉ。無理はせずにの?」

「うん!」


 じいちゃんはその時、「お?」と庭の方を向いた。あ、お姉ちゃんも帰ってきたんだね。


「じいちゃん! これ見て! めっずらしいやつをもらってきたんだよ! この葉っぱね・・・・・・」


 お姉ちゃんは、小さな鉢植えの草花を満面の笑顔でじいちゃんへ見せたの。

 青い花のペラルゴニウムだった。大学の研究室で、同じゼミの人がくれたんだって。

 じいちゃんは「つきこ、何の花ぞぃ?」と、何も知らない感じでお姉ちゃんに問いかけていた。


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― 新着の感想 ―
微笑ましい。 だが玄関横にあったら、すぐに見つかるよ。 色違いなら何とか知らない振りは出来るか? 頑張れ、じいちゃん。
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