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じいさんと、りんご畑  作者: 糸東 甚九郎(しとう じんくろう)
2/11

● いい香り

「起きろー、弥咲! 今日はあんたが朝食当番だぞーっ!」

「うーん・・・・・・まだ早くない?」

「早くない! あたしもじいちゃんも、もう、腹減ってどうしようもないんだぞー」

「あ、あと五分だけ・・・・・・」

「だーめーだってば! それにあんた、今日、一限は実習じゃなかったんかい?」

「あ! そ、そうだったぁ!」


 じいちゃんちに住み始めてから、一ヶ月が経った。

 月・水・金は、お姉ちゃんが朝ご飯を作る当番日。わたしは火・木・土なの。

 日曜日だけは、じいちゃんが朝ご飯を作ってくれるんだ。


「は、はやく作って、行かなきゃ」

「みさきー、じいちゃんが作ってやろぉかぁー?」

「いい! ちゃんとやるもん」

「まったくー。大学生になったんだ。ちゃーんと、生活リズムは早めに整えなよ?」

「わかってるよぉ。あー、やばい! 遅刻しちゃうー」

「ふぁふぁふぁふぁ。そう言うつきこも、三年前は大変だったけどのーぉ。ふぉふぉふぉ」

「じいちゃん! それは言っちゃダメでしょう! あたしは弥咲にー・・・・・・」

「わかっておる。わかっておる」

「とにかく、弥咲? 早くしな! 何でもいいから、早く作って!」

「う、うん! あー。もー。しっかりしなきゃ、わたし!」

「じゃ、向こうの部屋でつきこと待ってるぞーぃ?」

「急いで作るね! ええと、ええと! ・・・・・・手っ取り早く、焼きうどんにしちゃえ!」

「慌てんでもいいぞぃー? 人生、慌ててもいいことないからの。りんごを育てるのも同じぞぃ」


 じいちゃんはニコニコしながら、そう言ってくれた。

 窓から、ふんわり甘い香りが入ってくる。じいちゃんが育てているりんごが今、一斉に花を咲かせてるんだ。白い花のまわりに、ピンク色の蕾がいくつもついてるの。


「わぁ! きれいー・・・・・・。なんて・・・・・・美しい景色・・・・・・」


 台所の窓から見えるのは、まるでファンタジーの世界みたいなりんご畑の光景。


「弥咲! なんだか焦げくさいーっ! 何やってんのよあんたはー?」

「え? わああ! つい、見とれちゃっててーっ!」


 お姉ちゃんは呆れているけど、じいちゃんは、こんな時でもニコニコ笑ってたんだ。


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― 新着の感想 ―
うんうん、いい香りだよね。 ソースのちょっと焦げた焼きうどん。 ……………………………………………違った?
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