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じいさんと、りんご畑  作者: 糸東 甚九郎(しとう じんくろう)
10/11

● 山のかみさま

「じいちゃん! じいちゃん! ねぇ、じいちゃん!」

「んー? なんじゃい、つきこ。朝から元気だのぉ」

「元気だのぉ、じゃなくって! りんご畑に、なんか、すごいやつがいる!」


 お姉ちゃんが、慌ただしそうに外から戻ってきた。


「すごいやつ、って・・・・・・なぁに、お姉ちゃん」

「弥咲も見てみな! 台所の窓から見えるはずよ! 畑で一番大きい樹の上!」

「樹の上? ふぉふぉふぉ。・・・・・・さては・・・・・・久々に、ここへ来てくれたんかのぉ」


 わたしは、お姉ちゃんやじいちゃんと一緒に、台所の窓を開けてみた。

 そこから見えるりんご畑は、緑色の葉と、赤い実と、灰色の幹とが絶妙なコントラストとなり、ヨーロッパの油絵のような風景になっている。


「ほら! まだいる! あたし、あんなの初めて生で見たよ!」

「ふぉふぉふぉ。こりゃあ、だいぶご無沙汰じゃの。うちで見るのは五年ぶりくらいだぞぃ」

「え! 何あれ! わ、わたしも、初めて見た・・・・・・」


 お姉ちゃんが指差す方向には、りんごの樹の上にどかりと居着く、大きなフクロウが一羽いた。

 まるで監視カメラのような動きで、フクロウは時々、首を左右にくるり、くるりと動かす。


「じいちゃん! どうしよう? フクロウがいても、平気なの? あたし、わかんなくてさ」

「ふぉふぉふぉ。平気の平座だぞぃ。あのフクロウはの、りんごの樹を囓って荒らすネズミ類を捕まえてくれるんじゃよ。・・・・・・しばらく見かけなかったが、うちに来たと言うことは、畑にネズミが出始めたんかもしれんのぉ?」


 するとじいちゃんは、台所からフクロウに向かって、まるで神社にお参りするかのように、ぱんと柏手を打って拝んだの。「よろしく、お頼み申します」と。

 わたしとお姉ちゃんも、よくわかんないけど、じいちゃんに合わせて同じように拝んじゃった。

 すると、フクロウはじいちゃんの祈りが届いたのか、両翼をぶわりと大きくその場で広げた。

 そして、樹の上から「ホッホォ」と鳴き声を響かせて、りんご畑の一角に向かって、ばさりばさりと飛んだの。その姿はまるで、山の神様と言っても差し支えない格好良さ。

 赤い実がついたりんごの樹々。その合間を縫うように飛び、フクロウは地面へどすんと音を立てて着地。その足下では、小さなネズミが「きゅう」と声を上げて、捕まっていた。


「つきこ。みさき。よぉ見るがええ。わしらはこういう自然の一部として生きているんだぞぃ」


 フクロウはネズミを丸呑みにした。わたしとお姉ちゃんは、ただ静かに見入ってしまっていた。


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― 新着の感想 ―
フクロウは人間から見て益鳥だしな。 カムイつきの呼び名が多数あるのは伊達じゃない。
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