1-28 白は、誰が手に?
数字がかなり被っていた為に、ライトの番号を146から186へと変更しました。
また時間が流れた。
[――こちらの古代魔導書は、186番の方が落札となります]
「ふぅ……こういうことなんですね?」
「流石ライト様、覚えるの早いのです!」
ライトは、シュビラの指導の下、オークションをしていた。そして、流石ライトといって言い程の速度でシュビラからの教えを全て吸収した。
因みに今落としたのは、ダンジョンで発見の魔導書。文字が古き時代のものな為に、使用に何はあるが、古き時代の力が宿っているのは確かな品らしい。
なんとこの魔導書、ライトの蛇王蛇法・明かし晒す探蛇を弾いたのだ。それに興味をもったからライトは買った。古き時代の文字なら、ヨルが読めるだろうと思ったのも落札の理由だ。
「ふぅ、トリスさんに貰った極秘カタログに載っていた目星しい物は、落とし終わりましたね」
「ライト君、そんなの貰ってたの?私は貰ってませんよ?」
「シュビラも知りません!」
「そりゃあそうでしょうね。このカタログ、優待者用だって言ってましたし」
巳蚓魑から取り出した冊子をパラパラと捲りながら呟くライトに、両隣から疑問と確認の言葉が投げかけられた。
この冊子、実はライトがラビルに着いた日の夜に渡されたものである。まあ、ライトもオークションが始まってから思い出したのだが。
内容は、このオークションに出されるもの(ミスティアナ以外)の概要が写真と共に載っている。
優待者用ということは、他にも持ち主は居るのだろうとライトは理解している。そしてその持ち主の一人は既に知っていた。
座席番号46、このオークション会場の一番前、そして一番舞台に近い座席に座る男。
カエルのようで脂ぎった気持ちの悪い、服は異常に豪華なデブ。
ドーカス公爵家当主、カス公爵ことトラッシュ・ドーカスだ。
今回のオークションで、いやこれからもライトの敵となるであろう男でもある。
(イレーヌさんの話以上に、想像以上にゴミクズそうですね。生きてる価値なさそうです)
と、言うのがライトの率直な感想。
これは、ただ外見からの感想ではない。ライト、ヨルとの念話後に気を張り直した後に、トラッシュを見つけた。その瞬間から、もうストーカー並みに観察し続けた。
その上で出た感想だ。トラッシュの態度は非常に悪い、貴族らしさも欠片も無い。落札出来た時の喜びようと落札できなかった時のごねりようは、もう子供と呼んでも良い。
(アレが公爵って、この国大丈夫なんでしょうか?)
今まで考えたことのない国の行く先が心配になるくらいにトラッシュは、公爵に相応しくないように思えた。
(ん~先代は、優秀だったのかもしれませんね。でも、アレを当主にするくらいですから先代も無能かもしれません)
「……まあ、そんなことどうでも良いですけどね」
ライトにとって今重要なのはアウトライル王国の未来なんかではなく、一人の少女である。
(兎にも角にも、奴には勝たなければならない――けど、焦る必要は無い。準備はもうしっかりしてるんですからね。ゆっくり時を待つとしましょう)
黒き王は、悠然と待ち続ける。
◆◇◆
予定にあった全てのオークションが、終了した。会場には、終了の雰囲気が流れている。
ミスティアナのことは、一般的には知らされていない。恐らく知っているのは、"優待者"の中でも更に少数だけだからこそ、今の雰囲気になっているのだ。
[さて、予定にあった全ての品の競売が終了しました]
オレグの声が響く。
[ですが、このまま今回のオークションは、終了致しません。予定外の、特別な品の競売を行わせて頂きます]
ザワついていた会場が静まり返った。
それと、同時に部隊の裏から恐らく魔道具であろう牢に入れられた、真っ白な少女――ミスティアナが連れて来られる。
ライトは、ミスティアナの姿を見た瞬間に会場の雰囲気が切り替わったことを直感的に理解した。
[こちらの少女は、『天羅の忌子』――]
オレグが、いつの日かトリスから聞いたミスティアナの説明を口にする。それと同時に、会場の熱が高まる。
ライトとしては、不愉快極まりない。それを紛らわす為にミスティアナをへと視線を向け続けた。
すると、
「「…………」」
ふと顔を上げた白と黒の視線が交わる。それを理解できたのは、恐らく双方のみであり、互いの視線に熱が籠っていたのは、当事者すら理解していなかっただろう。
[――説明は、以上となります。皆様、最後に残していた理由を理解できたでしょう]
熱は冷めているようで冷めておらず、妙に鋭い雰囲気が会場に流れ、参加者が皆、神経を研ぎ澄ませている。
[これより、競売を開始致します。最低落札価格は1億D、単位は1000万Dから。それでは、開始いたします]
賽は投げられた。
『46番・1億5000万D』
『107番・2億D』
『93番・2億3000万D』
『20番・2億6000万D』
『68番・3億D』
『46番・3億5000万D』
『12――』
途轍もない速度で価格が上がっていく。まだ、ライトは参加しない。
「ライト様は、参加されなくていいのです?」
「シュビラちゃん。ライト君は、奴隷に興味なんて――」
「――いえ、しますよ」
「え?ライト君参加するんですか?てっきりそっちには興味ない、武器好きかと思っていたのですが」
上がっていく価格を眺めながら、ライトは事も無げに言う。驚くフーリンからの視線を感じながらも、そちらへ見向きもしない。
「僕は今日、彼女を買うために此処に来てるんですから当然でしょう」
「どういうこと?」
「そのままです。僕は、彼女の存在をトリスさんから教えてもらってましてね。その時から彼女を買おうと決めていました」
「そうなのですっ!?会長からは、そんなの聞いてないのですよ!」
「まあ、それはトリスさんに聞いてみないと分かりませんよ」
『――46番・47億6000万D』
「47億ですか、そろそろ行きますかね」
会話の最中も耳を澄ましていたライトは、アナウンスを正確に聞き取った。
遂に、黒き王が動き出す。
「先ず、50億ですかね」
『186番・50億D』
『46番・51億D』
「成程……55億」
『186番・55億D』
『46番・57億D』
「長くなりそうですね」
「ライト様、最初に戻ってるのです……」
「今は良いんです。金をいくら使っても彼女を手に入れます、あのカス公爵が敵なんですから、最初の比じゃない程金が掛かるのは承知の上です」
シュビラからの注意をライトは跳ね除ける。既に理解していることだと。
「ドンドン行きます――60億」
『186番・60億D』
『46番・64億D』
「70億」
『186番・70億D』
『46番・75億D』
「80億」
『186番・80億D』
『46番・90億D』
「100億」
『186番・100億D』
『46番・120億D』
「150億」
『186番・150億D』
『46番・175億D』
「粘りますねぇ……200億」
『186番・200億D』
『…………46番・230億D』
即座に返されていた46番の価格が少し遅れた。ライトの顔に笑みが浮かぶ。
「此処ですかね――"300億"」
『186番・300億D』
『…………』
46番の価格が続いて呼ばれることはない。代わりに、会場に豚のような奇声が響いた。
恐らく、ゴミの声だろう。
[……――終了です。こちらの『天羅の忌子』は186番の方が、300億で落札となります]
「少し、僕自体の予算オーバーですが、消費は最小限という処ですかね。やはり、嫌がらせが効いたんでしょうね」
実はライト、46番がゴミだと気づいた瞬間から、奴が買おうとしている物の価格を吊り上げて、金を消費させるという行動をしていた。
非常に姑息だが、理に適っている行動である。
[では、これにて本当に今回のオークションは、終わりとなります。参加者の皆様に深き感謝を。支払いと引き渡しは本部にて行いますので、落札した方々はそちらへお願いします]
「ふぅ、やっと一息――何です?」
突如、轟音と共に、入り口の扉が吹き飛ばされた。
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次の投稿は10/5(水)です。
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◆蛇足
蛇の王「サラっとオークション終了したな」
語り部「実は、オークション後の方が重要の予定だし、オークションなんて親しみないことずっとやっててもあれだろ?」
蛇の王「いや、ほぼオークションしとらんだろ。まあいいか……そう言えば1章残り三話らしいぞ」
語り部「知ってる、作者が活動報告で言ってたからな」
蛇の王「正直に言えば、此処で言えば良いと思うのは我だけか?」
語り部「おい、言っちゃ駄目だ……」




