間1-5 創造の神
投稿が遅れて申し訳ありません。
所謂流行病に掛かってしまい、体調を崩しておりました。
「うへぇ〜…つかれた……」
ライトは、ソファに横になりながら溶けている…ように見えるが休息を取っている。
その横で、タナトスはコーヒー片手に読書をしており、メティスはクッキーをパクついている。
「にしても、改めて正面から突破するとは思ってなかったよ」
「それは……私も思った……八割方……メティスが勝つと……思ってた……」
溶けている彼を見ながら、メティスが口を開く。
それは、彼が彼女との勝負に勝ったことについてだ。
彼女自身、手は全く抜いてなかったというのに、彼が勝ってみせたことに驚いている。
彼が負けると思っていたのは、タナトスも同じだったようである。
「酷いですよ…もう少しくらい…期待してくれても、良いじゃないですか」
「でもまあ……まだ生物だし……本当に……よく勝てたね……」
「魔法の規模では、確実に殺せた筈なんだけど、やっぱり虚属性は特異過ぎる」
「どういうことですかぁ?」
不満顔のライトに、タナトスは微妙な笑みを返す。
仕方ないのだ、生命体と神の間に存在する絶対の差は、通常覆らないのだから。
すると、眉を寄せたメティスが、溜息を吐く。
その反応に少しの疑問を抱いた彼は、どういうことか、と尋ねた。
「世界を構成する六属性。それらを正常に機能させる為の要素を、一つに押し込んだ。
時空の管理下である、世界を進行させる時間という法則、世界を保持させる空間という法則、世界を繋ぎ合わせる次元という法則。
物理の管理下である、世界の作用を決定させる変力という法則。
猛毒の管理下である、世界に状態を反映させる異常という法則。
音響の管理下である、世界の情報を伝播させる振動という法則。
記憶の管理下である、世界の情報を蓄積させる記録という法則。
現象・物体を創造・存在・改変させるだけ六属性とは一線を画す、法則を支配し操作する。それが虚属性。あまりにも影響力が強すぎるが故に、ボクはこの属性を魔法にするということを、匙を投げざるを得なかった。だから、古式魔法には虚属性が存在しないのさ。そもそも生命が扱うべきでないとも考えていた」
「でも、現に虚属性魔法は存在しますよね?」
「虚属性魔法、それと対になる無属性及び無属性魔法は、ボクが創ったものではない。『創造神』様が直に創ったんだ」
「『創造神』ですか」
意外な事実に驚きながらも、創造神という存在の情報を脳から引っ張り出す。
ヨルから、数柱の情報は聞かされている。
その中で最大の警戒をせよ、と言われたのは二柱。
始原の神にして万物の破壊者である『破壊神』と、始原の神にして万物の創造者である『創造神』。
二柱共に、神々を生みし、世界を創り出した、絶対者だと。
(世界の真の創造者ですか……確かヨル、戦って引き分けたとか言ってませんでしたっけ?バグり過ぎでは?)
「この感じ、誰か来るね?」
「私は……誰も……呼んでない……」
「別に呼んでなくても、来ることはあると思いますけど」
誰かが来ることを感じ取ったメティスの言葉を聞いて、来客者にみっともない姿を見られるわけにはいかないので、起き上がるライト。
ソファに身体を預け、身構えるでもなく自然体のまま、待つことにした。
「誰だろ……――不味いっ!」
タナトスがあった声を出す。それと同時に、部屋のドアが開かれる。
「―――ァッ」
ライトは、物理的に空気が重くなったかのように錯覚し、ソファから転げ落ちる。
(なんっだ、何がっ)
「ライトくんっ!?どうした、何がっ――ッ!なっ」
不自然に呼吸が乱れ、正常に息を吸えない。
全身を締め上げられているような、圧迫感が襲いかかり、視界が明暗する。
思考が全く纏まらない。
メティスが何やら彼に関してとは別で驚いているが、彼自身にはそれを気にしている暇すら無い。
「な、ななっ、貴方様が何故此処へっ、『創造神』様」
「むぅ……突然来ないで……」
「え?でも、私を呼ぶ声が聞こえたんだよね」
入ってきた者と元々の二柱は、会話をしているが、ライトには関係がない。
謎に発生し出した苦しみに耐えることで精一杯だからだ。
「ところでさ、そこの子は大丈夫なの?」
「ああ……しまった……」
「ちょっ、ライトくんっ!?大丈夫、どうしてこんな風に――」
「――メティスちゃん。私が何とかするから、離れてて」
「わ、分かりました」
苦しみの中でも、誰かの接近は分かるもので、彼は近づいてくる者を見上げた。
視線を上げ、白い何かが映ったと認識した瞬間、目に激痛が走り、視界が暗転して何も見えなくなる。
「あ、目の回路が焼き切れちゃった。仕方ないね、概念世代以上は次元が違いすぎて、普通の生命体の脳が処理しきれないから。寧ろ目だけでラッキー、って感じ?」
「っぐぁ……」
「キミ、イイ顔するね。とってもカワイイ、だから、助けてあげる」
そんな、勝手な言葉と共に、頭に何かが触れるのが分かった。
刹那、痛みと苦しみの全てが消え去り、視界も正常に戻る。
何が起こったかは、彼には分からなかった。
だが、それは正しく神の御業だった。
「ほら、立って」
「え?…あ、はい」
目を開け、掛けられた声に従い、手を取り、立ち上がる。
目の前に立つ、初めて見る相手に驚きながらも一歩下がり、全身を一度しっかり見る。
地面に広がるくらい長い白色の髪に、柚子のような濃い黄色の瞳。身を包むのは、白と桃色を主に所々に赤が入ったフリルかなり多めの、所謂甘ロリと言われるタイプのデザインのドレス。
後は、何故か室内なのに、白い傘を持っている。恐らく日傘だが、どっちにしろ室内では必要ない。
そんな風で、長身な彼女は、ライトを真っ直ぐ見下ろしている。
「やっぱり、綺麗な顔してるね。キミカワイイ、私気に入った」
「『リフィトース』……ライトは……私の……」
「え〜?でも別に神に生命を私有する権利とかないよ?」
「それはそっちも……」
「ちょ、タナトス!創造神様、にそんなっ」
「あはは、別に良いよ、そんなこと気にしなくて、気楽にいこ」
いつの間にか、真後ろに移動していたタナトスに、引き寄せられる。
しかし、そんなことよりもライトの思考は、目の前に相手に集中されていた。
(え?いや、待って、え?さっき、リフィトースって言った?てことは――……創造神、リフィトース?」
「そうそう、その通り!私こそが、世界を創造した片割れ!創造神リフィトースだよっ!」
「えっと…初めまして」
その存在の格に見合わず、距離感の近いリフィトースに戸惑いながらも、挨拶しておく。
(リフィトース……次元が違いすぎる)
ただ相対しているだけで、その存在感に気圧されてしまう程に彼女のという存在は凄まじい。
高々最高神と舐めていた彼は、自分を戒める。
「うん、よろしくね、ライトちゃん」
「リフィトース……駄目……」
「だから、別に良いじゃん!私もライトちゃん構いたい〜。タナトスちゃんだって、分かってるよね?」
「む〜……」
「ライトちゃんだって、私と仲良くしたいよね?ね?ねぇ?」
「えぇ〜と…はい」
明らかに圧を掛けられたライトは、それはもう首を縦に振ることしか出来ない。
いくらヨルに警戒しろと言われたからとは言え、それは敵対しろという訳ではないのだから、関わるのは問題ない。
そもそも、そんな機会無いと思っていたが。
「ありがとっ!いぇ〜い!ライトちゃん温かい!」
「ちょっ、リフィトース様っ」
タナトスから剥がされ、今度はリフィトースに抱きしめられるライト。
タナトスに比べて豊かな双丘が背中で潰れる感触に、同様してしまう。
「う〜ん?恥ずかしがってるの?カワイイなぁ。カワイイから、何かあげたいんだけど、私にも一応立場があるからね。何でもかんでもあげられないんだよぉ。全く、面倒だよね」
「えと、そうですね」
「ライトちゃんは分かってくれるか〜!私嬉しいなぁ」
子供のようにはしゃぐ彼女に、本当に最高神か?と疑念を抱くも、すぐに拭いさる。
「よし、それじゃあ、『真剣勝負でタナトスに一撃当てられたら』ライトちゃんに、私の加護をあげるよ!」
「……え?」
唐突なその提案は、絶望的な難易度だった。
◆投稿
次の投稿は12/25(月)です。クリスマス番外編の予定です。
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