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間1-3 黒剛の王VS知恵の神 上



 色々と調査が終わったので、タナトスの部屋に戻ってきた一人と二柱。



「――メティス様!戦いましょう!」

「ボク、戦闘得意じゃないんだけどなぁ」



 ライトが、メティスに戦ってくれとお願いしている。


 何があったかと言えば、彼の特性が分かり、神化の原因も分かったので一息ついて、談笑していた。

 のだが、そこで彼はとあることに気付いてしまったのだ。

 神化進行のせいか、この空間で現力と少しのスキルが使えることに。



「それでも、お願いします!」

(得意ではないとはいえ、神ですから僕より弱いということは、絶対にない筈。知恵の神の戦い方、気になります)



 喜色満面に笑みでそう言うライトに、何だかしてばかりに思うが、呆れた様子のタナトスが近付いてくる。



「騙されちゃ駄目……メティスは知恵の神……そして……『魔法を創った神』でもある……」

「魔法を創った?」

「ミルフィリアの生命の育む文化を、更に発展させる為に、新たな要素が必要になった時があった。その時に、ボクが考案したのが、神々の奇跡を模倣する技術。つまりは魔法さ」

「謂わば……メティスは……最古の魔法使い……魔法の一点で言えば……メティスに並ぶ者は……存在しない……然も……知恵神よりも……魔法神って呼ばれる方が……多い……」

「でも、結局のところ、神の権能、神性や理の方が強力だから。そこまで強いわけじゃない。あと魔法神って呼ばないでくれ、ボクちょっと気にしてるんだから」



 そうして、軽く笑いながらもメティスは、ソファから立ち上がる。

 同時に、タナトスの部屋が一気に広がる。

 空間が無理矢理に捻じ曲げられている、ということが何故か今はよく理解できた。



「……でも、まあ。挑まれたなら、受けてあげるのが、年長者ってものだと思うよ」

「ということは?」

「戦おうか、ライトくん」

「っ!はいっ!」



 ゾクリと、身の毛がよだつような、強者の圧を感じた。

 彼の顔は、自然と笑みを浮かべてしまう。



「それじゃあ……構えて……」

「「――」」

「始め……」


《黒剛彩王-虚の理》


―――神級毒魔法・邪道:陥落融解の厄毒死竜メルトダウン・ヴェノムドラグニア


「魔王の魔法か、面白い」

(っ、直ぐに分かるとは、流石魔法神)



 ライトが現在使えるスキルは、黒剛彩王と虚の理に神罰執行、そして蛇王蛇法。この四つ以外は使用できない。

 というより、現在の状態は身体ではないので、バフが乗らないとでも言った方が正確だろう。

 なので、蛇王蛇法が使えるにしてもイグニティなどの武器は取り出せない。



―――上級炎魔法・古式:燃え盛る炎槍(グアス・ロンヒ)


「なっ!?」

「この程度じゃ、駄目だよ。弱すぎる」



 大抵の生物を即死させる毒の塊の竜が一瞬にして、彼女の放った炎の槍に焼滅させられた。

 彼はそれに驚きを隠さずに、いられない。

 魔法の規模では、圧倒的に彼が勝っていた筈だからだ。



―――天級水魔法・古式:唸り喰らう水龍(ルフラ・ドラコ)


「でっ!?」

「驚いてる暇はないだろう?」

「ですよね!丁度いい、アレを試す!」


―――再事翼蛇(リントヴルム)=天級水魔法・古式:唸り喰らう水龍(ルフラ・ドラコ)



 ライトが言葉を紡ぐと、迫る水龍と全く同じ水龍が放たれた。

 その現象に対して、メティスは一瞬眉を顰めるが直ぐに笑みを浮かべる。


 二匹の水龍がぶつかる。

 水龍は一瞬、均衡したかに思えたが、メティスの放った水龍がライトの水龍を食い破った。



―――超級重力魔法:圧壊重力爆弾(パスガルボム)・五連


「……」



 広く空間が歪み、五回の爆発音と共に水龍が爆ぜ失せる。

 それをした彼は、納得いかなそうな顔をしている。



「なんで、全く同じ魔法の筈なのに、相打ちにならなかったんだ?って思ってるだろう」

「流石、知恵の神だ。大当たりだよ」



 彼女の言葉に、彼は素直に答えた。

 彼が納得いかなかったのは、先程の魔法のぶつかり合いが相殺に終わらなかったからだ。

 再事翼蛇は、実際に目にした事象を完全に再現する術だ。

 だとしたら、メティスの水龍と再現した水龍の威力は同等の筈。

 なのに、勝ったのはメティスの方だった。

 これは、矛盾している。だから納得がいかなかった。


 そんなものは全てお見通しだ、とでも言っているかのような笑顔で、口を開く。



「それは当然のことさ。蛇の王の術で作り出されたのは、所詮"贋作"だ。同じ形、同じ規模、同じ威力であろうと、絶対に"本物"を勝ることはない。これは、そもそも術のルールみたいだよ。だから真似て攻撃するだけでは勝てない」

「成程ね」(つまり、再事翼蛇の強さの代わりの制限ってことか)



 その通りだった。

 再事翼蛇は、その汎用性の高さの代わりに、幾ら事実改変(クラッキング)しようとも再現元の本物には、絶対に勝てないという制限があったのだ。

 敢えて、それはヨルから伝えられてない事実。これもまた彼女なりの理由があるのだろう。



「まあ、簡単にいっちゃ面白くないし、別にいいか」

「これは、君…ノッてきてるね?」

「ああ、その通りだぜ。メティス様!」

(魔法勝負じゃ、押し負ける。こっちは有限の魔力に対して、あっちは無限、当然だ。なら、勝機があるのは、理の操作か八彩王法のみ)



 彼の顔には、笑みが戻っていた。

 単純な疑問解消が、気分を晴らさせ戦いの意識を高揚させたのだ。



(そして、魔法神というくらいだから、近接戦には弱いと踏んで――新技お披露目だな!」


―――八彩王法:我覆う理不尽の鱗装よ(Scandals)



 掌から溢れ出した黒き王気が、ライトの両腕を覆う。

 徐々に硬質的になり光沢を放つように凝固していく。

 出来上がったのは、棘のような鋭利で大きな鱗の籠手。

 指先は、竜の爪のような形状で、攻撃力マシマシである。



「行くぜ、メティス!」


―――虚の理:≪空間支配法則(SpaceRule)空間置換(Exchange)

―――上級杖術・変異:(かた)()戦刃(せんじん)黒薙(クロナギ)



 転移でメティスの背後に移動した彼が、黒鱗を纏う右腕に魔力を籠めて振るう。

 彼女は、反応してこちらを向くが、明らかに遅い。

 防御を取られるよりも速く、右腕が脇腹を抉る。

 黒い衝撃が走り、高速で彼女が吹き飛ぶ。



「良いねぇ、調子よっ――っ!」



 成功を喜ぼうとした瞬間、顔の真横を何かが通り過ぎた。



「おや?外してしまったか、これ勿体ない」



 その声は、嫌にハッキリ聞こえた。

 しっかりと目を向ければ、何の傷もないメティスがそこには立っていた。

 手には、無数のスカルペルが持たれている。



「勝負はまだまだこれからだよ?ライトくん」



 神相手に、気を抜きすぎていたようだ。

 黒鱗に包まれた腕を、彼は強く握る。



「ああ、そうでなくちゃな」



 王の笑みは、とく深く。

 戦いは継続される。



◆投稿

次の投稿は12/11(月)です。


◆作者の願い

『面白い』,『続きが気になる!』と思った読者の皆様へ。

後書き下の「ポイントを入れて作者を応援しましょう!」から、評価『★★★★★』をお願いします!

その他『ブックマーク』,『感想』に『いいね』等々して頂けると、大変励みになりますので!



□■□■□



◆技解説

魔法技録

上級炎魔法・古式:燃え盛る炎槍(グアス・ロンヒ) 触れた燃焼可能な物体を焼き尽くす槍を放つ 燃焼可能の範囲は術者の想像に左右される

天級水魔法・古式:唸り喰らう水龍(ルフラ・ドラコ) 高圧縮した水流で模った龍を放つ 接触した水分に属する物を全て吸収し肥大し続ける


スキル技録

上級杖術・変異:(かた)()戦刃(せんじん)黒薙(クロナギ) 杖に王気を籠め当たった瞬間に炸裂させ吹き飛ばす薙ぎ払い


王法技録

我覆う理不尽の鱗装よ(Scandals) 指定したものの表面に王気を凝縮物質化し鱗のような鎧を作り出す 身体能力上昇と攻撃力上昇 軽度の魔法を吸収する 追加で王気を流すことで強度上昇


蛇王蛇法技録・『秘匿事項』開示

再事翼蛇(リントヴルム) 再現元の本物には、絶対に打ち勝つことができない



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