間1-1 情報の専門家さん
「もう一度言うけど……神罰執行に……代償は存在しない……だから……原因があるとしたら……それは君自身の……何かだよ……」
経ってても仕方ないので、ソファに取り敢えず座った二人。
タナトスは、代償はないことを再度強く言ってから、ライトの手に触れる。
「ま、まあそうですよね。他に原因が思いつきませんし。でも僕のことなんて、どうやってしらべるんですか?流石のタナトス様も、簡単には出来ないでしょう?」
「うん……その通り……だから……そういうのは……専門家に……任せる……」
「専門家、ですか?」
少し照れるライトから手を離し、彼女は目の前の虚空へ手を伸ばす。
現れたのは、見たことのある半透明の四角い極薄い板。というかウィンドウである。
ライトには分からないが、ウィンドウに表示されているのは、所謂通話やメッセージのやり取りが出来るアプリのようなもの。
見た目や部屋に対して、使っているものが近未来的過ぎる。
「――メティス……今時間ある?……あるなら……私の部屋に……来てほしい……」
『分かったよ、今は時間があるから行くとしよう』
「ありがと……じゃ、待ってる……」
「今のは…」
「念話みたいなもの……さっき言った……専門家が来てくれるから……ちょっと待つよ……」
「はい、分かりました」
そして、待つこと五分ほど。
ドアがノックされた。
「タナトス、来たよ。ドアを開けてくれ」
「分かった……」
タナトスが軽く手を振ると、この部屋に唯一あるドアが独りでに開かれる。
「失礼しっ、おや?先客が居たのか、これは済まない」
「あ、いえ、お気になさらず」
ライトとそう変わらない身長、後ろで纏められ左肩へと流しされた金色の髪、青色の縁の眼鏡をかけ、白衣を着た美少女が入ってくる。
こちらを向いた青い瞳の奥には、紙とペンが見えた。
「それでタナトス、何か用かい?」
「この子のこと……調べてほしい……」
「ふ〜ん、分かった。良いよ、調べてあげよう、ボクも気になるしね」
彼女は、青い瞳でライトを見つめながら、近付いてくる。
目の前まで来た彼女は、ニコリと彼に微笑みかける。
「ボクは、"知恵神"のメティス。よろしくね、今代の『黒剛の王』ライト・ミドガルズくん」
「よ、よろしくお願いします」
メティスに対して、珍しく緊張した面持ちで言葉を返すライト。
クロノスの時とは大違いである。
その違いの理由は、やはり彼女の纏う雰囲気であろう。
変わらない身長の筈なのに、纏う圧倒的な年上感が感じたことのない緊張を、彼に与えるのだ。
「――にしても君、可愛いね」
「はえぁっ!?」
「…………」
彼女の伸ばした手が、彼の顎の下を撫でる。
ゾワッとした感覚が全身に走る。驚きは強いが決して不快ではなく、寧ろ気持ちが良い。
隣から、何故かジトッとした目を向けられている気がする。
メティスは、ライトの右隣に座る。手が同時に離される。
一方彼は、顔に集まっている熱を逃がすのに集中している。
「ふ〜む、これは少し困ったね」
「メティス……どうかした?……」
「ボクでも解析しきれない。何ていうか、所々にモヤが掛かっているとでも言えば良いのかな。邪魔されてる感じ」
「えっと、そのすみません」
突如、難しい顔をしだした彼女に、思わず謝罪してしまうライト。
すると、彼女は笑みを戻して、首を振る。
「別に、君が敢えてやっている訳ではないのだろう?なら、気にすることはない。仕方の無いことさ」
「でも、少し申し訳ないです。調べてもらってるのに」
「じゃあ、後で埋め合わせでもしてくれれば良いさ」
「分かりました」
何故か、ライトはメティスに気を許してしまっていた。
彼女から悪性を感じないのもあるが、他にも何かありそうだ。
「今の所分かったのは、ライトくんには確かに神性が馴染んで神に近付いてしまっていること。そして、それに関わってるのは、ライトくんに流れる、蛇の血のせいだね」
「蛇の血?」(あれ?メティス様に神化のこと話しましたっけ?タナトス様が先に教えてたんですかね?)
違和感を抱きながらも、それは口に出さず、それよりも気になることを聞く。
「私達、神々で……蛇と言ったら……それを指すのは……ただ一匹の王だけ……」
「ヨルのことですか?でも、僕には、ヨルの血なんて流れてませんよ?」
「そうだよね。君は黒魔だから。そもそも白魔は起源不明の種族だけど、蛇の血は流れてなかった。黒魔であるライトくんもその筈、でも、確かに流れてるんだよ」
「どういう、ことなんでしょう」
ヨルの血が自分に流れている、という謎の情報に彼は困惑する。
確かに身体を重ねたりなど、接触も多いし、好きだし愛しているが、それは可笑しいだろうと。
というか、白魔って起源不明なんだってことにも驚いた。
少し自分の中で思考を巡らすこと数秒、とあることがライトの中で引っかかった。
「もしかして、あの時の…」
「何か思い出したのかい?」
「教えて……私にも……」
ゴクリを生唾を飲み込んだ後で、彼はゆっくりと口を開き言葉を紡いだ。
「あの、ヨルの…『腕を食べた』ことがあるんです」
その瞬間、室内の温度が少し下がったように感じたのは、きっと間違いではないだろう。
◆投稿
次の投稿は12/5(火)です。
すみません、急用が入り、投稿を遅らせていただきます。
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